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ほぼ日 |
最後の質問にまいります。
サッカーのコンフェデレーションズカップが
行われたことは、みうらさんのお耳に
届いていると思いますが。 |
みうら |
知ってますよ、
コンフェデレーションでしょ、ええ。 |
ほぼ日 |
どこの国が優勝するでしょうか。
(この収録は決勝前に行いました) |
みうら |
あ、それは
国対抗の話ですか? |
ほぼ日 |
え? |
みうら |
あのねぇ、ぼくはよく、
意味なく地下鉄の南北線に乗るんですよ。
南北線はすいている、という理由で、
乗ることがあるんです。 |
ほぼ日 |
はあ、はい。 |
みうら |
総武線もすいています。
日曜日とかはね、千葉行きは混んでますが、
三鷹行きはけっこうすいています。
そういうことも、ぼくにはわかってきました。
南北線もすいていることがわかったので
瞑想をするときに、
近ごろは南北線に乗ります。 |
ほぼ日 |
瞑想を。 |
みうら |
でも、たぶんサッカーという行事のせいだと
思うんですが、
その南北線が、
やたら混むときがあるんですよ。
乗ってくるのは、おなじユニフォームを
着た人たちです。
当然自分にはユニフォームはないですから、
一車両全員がサッカーで、
ぼくだけサッカー以外なんですよ。
ぼくだけ、役がない。
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ほぼ日 |
‥‥‥‥。 |
みうら |
車両全体の気持ちになれない疎外感が
ものすごくあるんですが、
そういうことの、
全世界版の話をしてるんでしょ? |
ほぼ日 |
‥‥まあ、はい、そうです。 |
みうら |
ああ、また、あの季節がやってきているんですね。
飲み屋さんでもテレビをつけますから、
その季節にはみんなが一丸となって、
サッカーの話になります。
隣の席のOLも、ヒゲを生やした社長さんまで、
全員がおんなじ話題をする日々です。
ぼくとしては、国宝阿修羅展の話も
したいわけですよ。
おなじ飲み屋でおなじお金を払ってるのに、
ずーーーーっとサッカーの話をされて、
阿修羅の「あ」の字も出ない状態です。
格差社会とか、よく言われますけど、
そんな疎外感を味わってる人の気持ちに
なったことがあるのか、と言いたいです。
それは貧富の差ではない、
気持ちの差です。
世界レベルでいじめを受けている状態です。 |
ほぼ日 |
疎外感が、ですか。 |
みうら |
いやいや、そういうことが大きくなると、
戦争とかになってくるんですよ。
国をあげてやることは
体(てい)のいい戦争なんです。
ほんとうにサッカーが好きなら、
「日本、日本」と言わずに
「サッカー」と言えばいいんです。
国ではなく、「サッカー、サッカー」と、
サッカーを応援してくださいよ。
あのボールが好きだったら、
「出た、サッカーボール!」とか、
「ゴールキーパー、ゴールキーパー」とか、
ファンであるなら サッカー用語で
応援すべきだと
いつも大きく嘆いています。
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ほぼ日 |
先ほどから、用語が
「サッカー」と「ゴールキーパー」しか
出てないようなんですが‥‥ |
みうら |
あ、あれなら知ってますよ、
「なんとかオフ」。 |
ほぼ日 |
‥‥オフ? |
みうら |
言っておきますが、
ぼくは美大で3年間、
サッカーの授業をとっていたんです。
あのころのサッカーは
まったく人気がありませんでした。
どちらかといえばバレーボールや、
バスケットが人気でした。
ぼくは授業の抽選に遅刻してしまい、
サッカーの授業を受けることになりました。
そんな、同じような
しょうがないサッカー愚連隊が集まって
朝いちばんの授業を、全員が二日酔いで
毎週受けるはめになってしまいました。
サッカーでゴールを決めるときに、
「なんとかオフ!」って言うでしょ? |
ほぼ日 |
オフ‥‥
オフサイド? |
みうら |
オフサイドだ、オフサイド。
ぼくは、3年間、
オフサイドの意味がわからず
なんでもかんでも蹴り込んでいました。
そのたびに「オフサイド!」と言われて、
納得いかねぇ試合だなと思ってました。 |
ほぼ日 |
はははは。 |
みうら |
結局、オフサイドの意味はわからずじまいで
卒業することになりました。
大人になって、なにがオフサイドなのか、
いろんな人に飲み屋で説明してもらったけど、
さっぱり意味がわかりませんでした。
ちゃんと流行らせるためには、
ビギナーでも
「ああー、それはオフサイドだね」
と言えるぐらいの
短めの説明をしてほしいです。 |
ほぼ日 |
敵の向こうにいるゴール前の味方に
パスしちゃいけない、
ということですよね。 |
みうら |
そんなのねぇ、ふつうは
サッカーやって夢中なんだから、
気にならないですよ。
夢中になって蹴り込んでるときに、
そんなことが気になってるなんて、
気持ちが小さすぎます。
ボールが来たら打つとかね、
そういうわかりやすいことが、
本来のスポーツなんじゃないのかな、
と、ぼくは問いたいんです。 |
ほぼ日 |
みうらさんが嘆いてらっしゃることを
うすうす感じていたので、調べたところ、
ワールドカップ以外に、
オリンピック、コンフェデレーションズカップ、
チャンピオンズリーグ、
クラブワールドカップ、
アジアチャンピオンズリーグなどがあり、
ほぼ毎年以上の頻度で
カップやピックやシップがあります。 |
みうら |
やりすぎですよ。
四国だってね、八十八箇所でいいんですよ。
そこに「花の寺巡礼」とか、
いろんなものが足されてきて、四国は
巡礼のチャンピオンズリーグで
いっぱいの状態になっています。
メインがあるわけだから、
もういいでしょう。
いけんじゃねぇか、
いけんじゃねぇか、
これで人が集まるんじゃねぇか、
そう思いすぎですよ。
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ほぼ日 |
おっしゃるとおりですね。
あまりにも頻繁ですから、
みうらさんがさびしい思いをされるのも
無理はありません。 |
みうら |
ひとりぼっちな気持ちは、
涙が出そうになるくらい、さびしいものです。
ぼくのような、こういう仕事をしてる人は、
学校になじめなかったり、
そんな体験をしてきた人が多いと思うんです。
このページを見てる人だって、
なんだかもうひとつしっくりこないから、
「ほぼ日」を見たりしてるわけじゃないですか。
そういうみなさんは
よくわかってくれると思うんですが、
そんな人がね、あるとき、
徒党に入ったと考えてみてください。
その怖さといったら、ないんですよ。
きっと鬼の首をとったように
調子に乗ることでしょう。
それは、自分が虐げられてきた
気持ちが裏向く瞬間です。
でも、そこは忘れちゃいけない。
ほんとうの意味で、ひとりぼっちの気持ちを
忘れてはいけないとぼくは思うんです。
どんなに全世界の人が
サッカーに興じたとしても、
ひと握りは、
必ず興じてないということを忘れちゃいけない。
興じるのもいいけど、興じてない人の気持ちを
わかっていただきたいなとつくづく思います。 |
ほぼ日 |
いつも大切なことを教えていただいて
ありがとうございます。
「みうらじゅんに訊け! この島国篇」も
書籍化され、 『郷土LOVE』となりましたし、
これでひと区切りですが、またいつか
「みうらじゅんに訊け!」シリーズを、
みなさまが「忘れたかな?」という頃に
やらせていただきたいと思っております。
またお会いしましょう。
では、今日の内容を動画でごらんくださいませ。 |
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2009-07-07-TUE |