番外篇 Q6 コンフェデレーションズカップの予想をお願いします。
ほぼ日
最後の質問にまいります。
サッカーのコンフェデレーションズカップが
行われたことは、みうらさんのお耳に
届いていると思いますが。
みうら
知ってますよ、
コンフェデレーションでしょ、ええ。
ほぼ日
どこの国が優勝するでしょうか。
(この収録は決勝前に行いました)
みうら
あ、それは
国対抗の話ですか?
ほぼ日
え?
みうら
あのねぇ、ぼくはよく、
意味なく地下鉄の南北線に乗るんですよ。
南北線はすいている、という理由で、
乗ることがあるんです。
ほぼ日
はあ、はい。
みうら
総武線もすいています。
日曜日とかはね、千葉行きは混んでますが、
三鷹行きはけっこうすいています。
そういうことも、ぼくにはわかってきました。
南北線もすいていることがわかったので
瞑想をするときに、
近ごろは南北線に乗ります。
ほぼ日
瞑想を。
みうら
でも、たぶんサッカーという行事のせいだと
思うんですが、
その南北線が、
やたら混むときがあるんですよ。
乗ってくるのは、おなじユニフォームを
着た人たちです。
当然自分にはユニフォームはないですから、
一車両全員がサッカーで、
ぼくだけサッカー以外なんですよ。
ぼくだけ、役がない。
ほぼ日
‥‥‥‥。
みうら
車両全体の気持ちになれない疎外感が
ものすごくあるんですが、
そういうことの、
全世界版の話をしてるんでしょ?
ほぼ日
‥‥まあ、はい、そうです。
みうら
ああ、また、あの季節がやってきているんですね。
飲み屋さんでもテレビをつけますから、
その季節にはみんなが一丸となって、
サッカーの話になります。
隣の席のOLも、ヒゲを生やした社長さんまで、
全員がおんなじ話題をする日々です。
ぼくとしては、国宝阿修羅展の話も
したいわけですよ。
おなじ飲み屋でおなじお金を払ってるのに、
ずーーーーっとサッカーの話をされて、
阿修羅の「あ」の字も出ない状態です。
格差社会とか、よく言われますけど、
そんな疎外感を味わってる人の気持ちに
なったことがあるのか、と言いたいです。
それは貧富の差ではない、
気持ちの差です。
世界レベルでいじめを受けている状態です。
ほぼ日
疎外感が、ですか。
みうら
いやいや、そういうことが大きくなると、
戦争とかになってくるんですよ。
国をあげてやることは
体(てい)のいい戦争なんです。
ほんとうにサッカーが好きなら、
「日本、日本」と言わずに
「サッカー」と言えばいいんです。
国ではなく、「サッカー、サッカー」と、
サッカーを応援してくださいよ。



あのボールが好きだったら、
「出た、サッカーボール!」とか、
「ゴールキーパー、ゴールキーパー」とか、
ファンであるならサッカー用語で
応援すべきだと
いつも大きく嘆いています。

ほぼ日
先ほどから、用語が
「サッカー」と「ゴールキーパー」しか
出てないようなんですが‥‥
みうら
あ、あれなら知ってますよ、
「なんとかオフ」。
ほぼ日
‥‥オフ?
みうら
言っておきますが、
ぼくは美大で3年間、
サッカーの授業をとっていたんです。
あのころのサッカーは
まったく人気がありませんでした。
どちらかといえばバレーボールや、
バスケットが人気でした。
ぼくは授業の抽選に遅刻してしまい、
サッカーの授業を受けることになりました。
そんな、同じような
しょうがないサッカー愚連隊が集まって
朝いちばんの授業を、全員が二日酔いで
毎週受けるはめになってしまいました。
サッカーでゴールを決めるときに、
「なんとかオフ!」って言うでしょ?
ほぼ日
オフ‥‥
オフサイド?
みうら
オフサイドだ、オフサイド。
ぼくは、3年間、
オフサイドの意味がわからず
なんでもかんでも蹴り込んでいました。
そのたびに「オフサイド!」と言われて、
納得いかねぇ試合だなと思ってました。
ほぼ日
はははは。
みうら
結局、オフサイドの意味はわからずじまいで
卒業することになりました。
大人になって、なにがオフサイドなのか、
いろんな人に飲み屋で説明してもらったけど、
さっぱり意味がわかりませんでした。
ちゃんと流行らせるためには、
ビギナーでも
「ああー、それはオフサイドだね」
と言えるぐらいの
短めの説明をしてほしいです。
ほぼ日
敵の向こうにいるゴール前の味方に
パスしちゃいけない、
ということですよね。
みうら
そんなのねぇ、ふつうは
サッカーやって夢中なんだから、
気にならないですよ。
夢中になって蹴り込んでるときに、
そんなことが気になってるなんて、
気持ちが小さすぎます。
ボールが来たら打つとかね、
そういうわかりやすいことが、
本来のスポーツなんじゃないのかな、
と、ぼくは問いたいんです。
ほぼ日
みうらさんが嘆いてらっしゃることを
うすうす感じていたので、調べたところ、
ワールドカップ以外に、
オリンピック、コンフェデレーションズカップ、
チャンピオンズリーグ、
クラブワールドカップ、
アジアチャンピオンズリーグなどがあり、
ほぼ毎年以上の頻度で
カップやピックやシップがあります。
みうら
やりすぎですよ。
四国だってね、八十八箇所でいいんですよ。
そこに「花の寺巡礼」とか、
いろんなものが足されてきて、四国は
巡礼のチャンピオンズリーグ
いっぱいの状態になっています。
メインがあるわけだから、
もういいでしょう。
いけんじゃねぇか、
いけんじゃねぇか、

これで人が集まるんじゃねぇか、
そう思いすぎですよ。

ほぼ日
おっしゃるとおりですね。
あまりにも頻繁ですから、
みうらさんがさびしい思いをされるのも
無理はありません。
みうら
ひとりぼっちな気持ちは、
涙が出そうになるくらい、さびしいものです。
ぼくのような、こういう仕事をしてる人は、
学校になじめなかったり、
そんな体験をしてきた人が多いと思うんです。
このページを見てる人だって、
なんだかもうひとつしっくりこないから、
「ほぼ日」を見たりしてるわけじゃないですか。
そういうみなさんは
よくわかってくれると思うんですが、
そんな人がね、あるとき、
徒党に入ったと考えてみてください。
その怖さといったら、ないんですよ。
きっと鬼の首をとったように
調子に乗ることでしょう。
それは、自分が虐げられてきた
気持ちが裏向く瞬間です。
でも、そこは忘れちゃいけない。
ほんとうの意味で、ひとりぼっちの気持ちを
忘れてはいけないとぼくは思うんです。
どんなに全世界の人が
サッカーに興じた
としても、
ひと握りは、
必ず興じてないということを忘れちゃいけない。
興じるのもいいけど、興じてない人の気持ちを
わかっていただきたいなとつくづく思います。
ほぼ日
いつも大切なことを教えていただいて
ありがとうございます。
「みうらじゅんに訊け! この島国篇」も
書籍化され、『郷土LOVE』となりましたし、
これでひと区切りですが、またいつか
「みうらじゅんに訊け!」シリーズを、
みなさまが「忘れたかな?」という頃に
やらせていただきたいと思っております。
またお会いしましょう。

では、今日の内容を動画でごらんくださいませ。
2009-07-07-TUE

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