中川 | いまうちにいるショコラという子も、 Twitterで情報を見たことがきっかけで もらってきた猫です。 あのときは、北海道の江差保健所まで 引き取りに行きました。 江差、空港から遠かった 保健所には、Twitterで情報出てた子だけじゃなく ほかの猫も保護されていて、 「いまからこの子たちも 処分になりますけど、どうしますか」 って言われたんです。 |
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糸井 | 保健所の人も、わかってるんだ。 |
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中川 | 「そんな‥‥もらいますよ」 ということになって。 |
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友森 | 置いて帰れないですもんね。 |
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糸井 | 処分する場所にいる人たちも、ほとんどが 動物を好きだから、 その仕事をしているわけですよね。 |
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中川 | 「この子もいまから処分なんですけど、 どうですか?」 と私に言ってくれたってことは、 そのひと言で、状況を知らせることが できるからですよね。 つまり、その保健所の人が 「なんとかしたい」という気持ちが あったからですよね。 |
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糸井 | そうだね。 |
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友森 | 連れて行ってほしいから、言ったのよ。 |
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中川 | そんな情報すら出てない子は 1時間、違ってたら 処分しちゃってたんだそうです。 |
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糸井 | いまは自分で情報を見て そういうことができるかもしれないけど、 子どものときは、動物の保護はできないですよね。 どうしてたんですか? |
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中川 | 子どもの頃はネットもないし、 よくわからないので、 近所に捨てられてる子を拾ったり、 「猫もらってくれませんか」 という貼り紙を見たりしてました。 病院にもそういうお知らせがあったし。 |
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糸井 | そういう貼り紙を、 気をつけて見てたんですか? |
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中川 | はい。 捨て猫がいたら、もらいに行きました。 母にも特に言わず、 勝手にもらってきちゃって。 |
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糸井 | お母さんはなんて? |
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中川 | 「あ、わかった。ふぅん」「今日からこの子もね」 という感じです。 猫は常に20匹くらいいたので、 どんどん増えてきて。 |
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友森 | すごいです。 |
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中川 | 里親さんに出そう、ということも その頃から変わらず継続してやってきました。 |
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糸井 | 里親探しはどうやってたの? |
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中川 | 近所の人に呼びかけてもらいました。 町内には、だいたいひとりくらい 「猫おばさん」がいるんですよ。 いま住んでるところにも猫おばさんがいて、 協力してもらっています。 子どもの頃は、猫をたくさん飼ってるということが 学校でも知られてたんで、 友だちから「飼える?」と声をかけられたりしました。 いつも「巡りあったら」「縁があったら」という 感じです。 |
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糸井 | そうか。 猫の交番みたいになってたんだね。 |
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友森 | 「猫を拾ったら、中川さんちに」ってね。 |
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中川 | アルバム「9lives」の表紙になってる、 マミタスもそうでした。 高校のとき、私には ほとんど友達がいなかったんですけど、 卒業してから 「そう言えば、猫飼ってるんでしょう」 みたいな感じで友人から連絡が来て‥‥。 |
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糸井 | 友達いなかったけど、 高校卒業してから、連絡が来て(笑)。 |
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中川 | そうです(笑)。 それで、千葉の柏まで行って 5匹もらってきて 近所の公園で里親譲渡会をやりました。 変な人にもらわれてもいやだから、 ちゃんと自分たちで譲渡会をやりました。 でも、マミタスは子猫のとき けっこう不細工だったせいで 譲渡会で残ってしまいました。 何回もやったんですけど、 マミタスだけは残ったまま。 「もう、うちで一緒に暮らす運命だね」 ということになって、かわいくなるように、 「中川魔法の天使クリィミーマミたん」 という名前にしたら、 ものすごい美女に成長されて、 私を毎日起こしてくれて、 絵の具やら写真やら プレゼントくわえてきてくれたり、 女子同志の運命スパイラルというか、 それまでの猫との出会いも それぞれのエピソードがあるけど、 マミタスはとりわけすごく。 |
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糸井 | プレゼントをくわえてくるんだ。 |
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中川 | 悩んでるときに、 いつも何かをしてくれるんです。 ブルース・リーの缶バッジを くわえてきてくれたりとか。 |
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友森 | (笑) | |
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中川 | 猫の絵をこんつめて描いてるときも、 マミタスが靴下をくわえて持って来てくれて、 片方だけ置いて去ってって、 意味が深すぎてわからなかったけど。 |
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友森 | (笑) |
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中川 | 履いたら、肩こり治りました。 |
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友森 | えぇ! |
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糸井 | 意味深いねぇ(笑)。 |
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友森 | 「まぁ、靴下でも履きなさい」 という意味だったのかな。 |
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糸井 | 「お前、冷えとるんじゃないか」と(笑)。 マミタス、おかしいね。 |
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中川 | 相談すると、必ずゴロゴロ言いながら のしかかってきてくれて、 どんなときも、助けてくれて。 マミタスとゲームしながら、 「こんなことがあったらいいね」 なんて言ってると、ほんとうに、 忘れてた頃に、それが繋がったりする。 なんだかすごく不思議なパワーを 持ってるなぁと思います。 |
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糸井 | (中川さんの新しいアルバム「9lives」を見て) マミタスは、水晶玉みたいな猫だね。 |
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中川 | マミタスのおかげで、 猫族全体への感謝とリスペクトも、 改めて考え直すようになりました。 |
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糸井 | うん、わかる。 |
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中川 | マミタスだって、ほんの1日でも違ったら、 出会っていない。 いま飼ってる黒猫のルナもそうでした。 こんな性格の私がたまたま CDデビューすることになって、 不忍池で撮影をしていたとき、 池のほとりにひとりのおじいさんが 座っていたのですが、 おじいさんは、黒猫の赤ちゃんと楽しんでて、 「あ、あのおじいさん、猫飼ってるんだ」 と思ってたら、その猫が私を見つけて 一目散に走ってきました。 |
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友森 | へぇ。猫が見つけたんですね。 |
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中川 | そう。振袖着てたんですけど、 駆けのぼってきました。 「もう、あんたが拾ってくれないと、 俺、だめだからね!」 みたいな顔してくる。 そして、離れなくなっちゃったんです。 おじいさんに訊いたら「野良です」だって。 そのままいるとカラスに やられちゃったりするから、猫も必死です。 |
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糸井 | うん、うん。 |
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中川 | それで、そんなこと言ったことないんですけど、 マネージャーさんにタクシー代をお渡しして 「お願いだから、うちに連れてってください」 |
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友森 | うん(笑)。 すごいなぁ。 |
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中川 | 仕事中に猫を拾うなんて はじめてだったんですけど、そのときも 撮影が1時間違ったら、1日でも違ったら、 という不思議な気持ちになりました。 | |
(つづきます) | ||
写真:小川拓洋 |