『あたらしい家中華』酒徒さんに、大好きな中華料理について聞く。 『あたらしい家中華』酒徒さんに、大好きな中華料理について聞く。
2023年秋に刊行されて以来、売れ続けている
1冊の中華料理本をご存知でしょうか。
SNSやブログでおいしい情報を発信し続ける
中華料理愛好家、酒徒(しゅと)さんの
『あたらしい家中華』。
中国の人たちが普段から食べている、
非常にシンプルな78品を紹介している本です。
鶏ガラやオイスターソースなどは使わず、
意外とあっさり、簡単、ヘルシー。
「家で本当に作りたい中華はこれかも!」
という気持ちになります。

そんな酒徒さんがなんと、
顔出し無しであれば、という条件で
「ほぼ日の學校」に登場してくださいました。
酒徒さんが語る料理の話、愛情がこもっていて、
なんだか本当にいいんです。
あなたもぜひ、あたらしい家中華の
とびらをひらいてみてください。
イラスト:ミツコ
1. とびきり簡単な3品のレシピ。
──
お越しくださってありがとうございます。
今日まず先に、いくつかお料理を
作ってくださるということで。
酒徒
はい。本の中でもとびきり簡単な
3つをご紹介したいと思います。



「肉末蒸蛋(ロウモーツェンダン)」
豚ひき肉の中華茶碗蒸し。



「小葱拌豆腐(シャオツォンバンドウフ)」
小ねぎの中華冷ややっこ。



「拍黄瓜(パイホワングア)」
きゅうりの冷菜。



この3つを同時につくっていきます。



材料もきわめてシンプルで、こちらです。

卵2個、豚ひき肉50グラム、
豆腐1丁(水きりしておく)、
きゅうり2本、にんにくひとかけ、
小ねぎ(万能ねぎ)2~3本。
調味料は塩、しょうゆ、酢、ごま油、紹興酒。
──
楽しみです!
よろしくお願いいたします。
肉末蒸蛋(豚ひき肉の中華茶碗蒸し)[蒸すまで]
写真
酒徒
まずは、中華茶碗蒸しです。
最初に蒸し器に水を沸かしておきます。



そしてお湯が沸く間に、
豚ひき肉と卵の準備をしていきます。



具となる豚ひき肉に下味をつけていきます。
50グラムのひき肉に、
塩ひとつまみ、しょうゆ小さじ2分の1、
紹興酒小さじ1を加えて混ぜ、しばらくおいておきます。
まあ、分量はあまりこまかく気にしなくて大丈夫です。
写真
次に卵を2個、ボウルにときます。
ある程度といたら、卵1つに対して
100mlの水を加えます。
今日は2個なんで、200ミリ。
そしたらまた混ぜます。
あまり泡立たないように、でもしっかり。
写真
あらかた混ぜたら、この卵液の中に
さっきの豚ひき肉を入れます。
肉がバラけるように、中で崩す感じで、
またちょっと混ぜてあげてください。
卵の泡はやるうちに消えていきますが、
「別に消えなくてもいい」ぐらいの気持ちでどうぞ。



で、お湯も沸いたので、蒸していきます。
ちゃんとボコボコ沸騰して、
しっかり湯気が立ってから入れてください。



蒸し時間は調理器具によって変わるんですが、
ざっくり弱中火で20分ほどが目安です。
火が強いと、スが立ったりするんですけど、
それはそれと思って、おおらかな気持ちで
つくっていただければと思います。
写真
蒸してる間に、小ねぎを切っておきます。
細めの青ねぎを、ざっくり小口切り。
これは茶碗蒸しの最後に散らすのと、
あとで冷ややっこにも使います。



中華包丁って敬遠されがちですけど、
切ったねぎをスクレーパー(へら)みたいに
刃のところにのせて運べますし、
小ねぎをたくさん切るときも
ねぎが転がってこないので、便利だなって思ってます。



あとは蒸しあがるのを待ちましょう。
拍黄瓜(きゅうりの冷菜)
写真
酒徒
次は、きゅうりの前菜です。
きゅうり2本の皮をまだらに剥いていきます。
適当で大丈夫。
剥かなくてもいいんですが、色味の差が出たほうが
盛ったときにさわやかな感じになるんで。
写真
上下のヘタを切ったら、包丁で叩く。
この「拍黄瓜(パイホワングア)」の
「拍(パイ)」って、
「(平たいもので)叩く」って意味なんですね。
きゅうりを叩いてつぶして、
味を染みやすくする料理なんです。



家だったら、中華包丁で派手に
バーンっていくんですけど、けっこう散って、
よくあとで怒られるんです(笑)。
だからみなさん、きれいにつくりたいなら
ビニール袋に入れた状態で叩いてください。
飛ばなくて便利です。
つぶれてるけどグチャグチャには
ならないぐらいを目指してください。
写真
中華包丁はこういうときも、
軽い力であっというまに砕けて便利です。
最初はご家庭の包丁でいいと思うんですけど、
いざ中華を日常的につくるようになると、
大きさ、重さを活かした使い方が
いろいろできるので、買うのもおすすめです。
僕はもう、中華包丁以外だと
慣れないくらいになってます。



叩いたきゅうりはひと口大、
だいたい4センチぐらいの幅に切ります。
あまり崩れてないものがあったら、
手で適当に食べやすい大きさに崩してください。



次ニンニクも叩きます。1~2かけぐらい。
これもまたビニール袋に入れて
バンバンバンとやると、
みじん切りにするときの手間が省けます。
別にこの細かさもルールはないので、
飽きたときがやめどきです(笑)。



で、にんにくときゅうりをボウルに入れて、
味をつけていきます。



米酢小さじ1、ごま油小さじ2、
そしてひとつまみの塩。
味はほんとに好みの世界なんで、
食べてみて量を調整してください。
あとはこれをしっかり和えて、
味をなじませてあげてください。
写真
ただ、長い時間おくとベシャッとしてくるので、
作ってすぐ食べるのがおすすめです。
きゅうりのシャキッとした食感が楽しめます。
盛るときには、皮目を上にしてあげると、
おいしそうに見えるかな。



こんな感じでまずは
「拍黄瓜」のできあがりでーす。
これがお通しですかね。
小葱拌豆腐(小ねぎの中華冷ややっこ)
写真
酒徒
続いて「小葱拌豆腐(シャオツォンバンドウフ)」、
中華冷ややっこ、いきまーす。
写真
実はさっきからザルを使って
水切りしておいた豆腐を、皿に盛ります。



この豆腐全面に、ひとつまみの塩を
まぶすようにしていきます。
僕としては、わりと強めに塩をふるイメージですね。
だけど塩はほんと好みの世界で、
豆腐が大きければふたつまみにしていただければいいし、
ひとつまみでいい方もいるし。
そこらへんも、味見したあと全然調整がきくので、
お好きにお願いしますというところです。



中国だとこれ、ねぎとかを全部載せてから
塩を振る方も多いんですけど、
先に塩を振ったほうが量がわかりやすいんで、
僕は塩を先にしています。



そこにさっき切ったねぎを、
たっぷり載せてあげてください。



最後にごま油です。
これはちょっと多めのほうがいいので、
思いきって大さじ1ぐらい。
写真
ということで2品目、
「小葱拌豆腐」できあがりでーす。



これは食べる前に
絶対に守らなければいけないルールがあって、
これはこの豆腐を、
「みるかたもなくなるまでつぶしてから食べる」
ということなんです。
日本の常識からすると、
「えっ、マジで?」って思うぐらい
グシャグシャに。
写真
日本の冷ややっことは違って、
グシャグシャに崩して食べたほうが、
ごま油と塩が全体に回って、
豆腐のつるりとした舌ざわりと
なじんでおいしくなる。



今レンゲでやってますけど、
べつに普通のスプーンでもかまいません。



まあ、なかなかこういう料理を
ほかの方とシェアするのは
抵抗があるかもしれないので、
一人で食べるか、仲のいい方とどうぞ(笑)。
肉末蒸蛋(豚ひき肉の中華茶碗蒸し)[仕上げ]
写真
酒徒
(すこし経って)
じゃ、時間がきましたーということで、
蒸し器の中の様子を見ていきます。
ちょっと今日は火が強かったんで、
若干泡立った感じが出てますが、
中国の茶碗蒸しはそういうことを
気にしないところによさがあるので、
火が通ってるかどうかを確認していきます。



ちょっとプニャンと弾くような感じで
つややかに固まっていて、
串をさしてみて、透明の汁が出てくれば、
基本大丈夫。もうできています。
写真
ということで、火を止めて、
熱さに気をつけて器に移します。



できあがったものに
しょうゆを小さじ1/2~1ぐらいかけます。
この量もお好みです。
で、ごま油も同じく小さじ1/2~1ぐらい。
最後にねぎを散らします。
ということで、できあがりになります。
(拍手)
写真
ちなみにこの皿は全部、
中国に住んでたときに買い集めたものですね。
やっぱり何枚か犠牲になってますけど、
意外と生き残ってます。
写真
▲完成! 左から「肉末蒸蛋」「小葱拌豆腐」「拍黄瓜」
(つづきます)
2024-11-05-TUE
手軽 あっさり 毎日食べたい

あたらしい家中華

酒徒 著
写真
鳥がらスープ、 オイスターソース、
豆板醤…すべていりません!
中国の家庭で愛されている
本場の家庭料理78品。
日本で「中華料理」と聞くと、
「こってりしてる」「味が濃い」
「調味料が多い」「油っぽい」
「胃がもたれる」などのイメージが
先行しますが、中国の食卓に並ぶ
家庭料理はすべてが逆。
あっさりして、やさしい味で、
調味料も少なく、油も少ないから、
毎日食べても身体が楽。
そんな日本にまだ知られていない
「本当の家中華」をご紹介します。



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