乗組員やえの疑問

東京タワーも日建設計さんが設計したとか。
鉄塔の設計でだいじなことってなんですか? その1

スカイツリーおじさんの解説

東京タワーは、日建設計と、
内藤多仲(ないとう たちゅう)博士が
いっしょに設計しました。
内藤多仲(1886-1970年)さんは、
日本の「耐震構造の父」と評される方です。
当時、設計にたずさわった人間は
すでに社内に残っていませんが、
この東京タワーがどういう意味をもつものだったのかを
この機会に考えてみましょう。

唐突ですけれども、
「現代建築」って何かお分かりになりますか?
この言葉の意味を分かっていただくことが、
東京タワーを理解するうえで、
とてもたいせつなんです。

私が学生のころの話になりますが、
建築の授業には「設計演習」といって
模擬的な設計を行う授業がありました。
あるテーマ(課題)が出されて、
週に1回の授業で進捗チェックを受け、
それを2、3度くりかえして
(=2、3週間スタディを重ね)、
最後に、自分の設計を表した、
最終提出物となる模型と図面を提出し、
それが講評される、というプロセスの授業です。

授業の時間内だけでは、
模型制作や図面づくりの作業はとても足らないので、
それらは当然、宿題として「お持ち帰り」となり、
しかも、バイトや、時として寝食もままならないほどの
作業量となることから
多くの学生の間では、
「カダイ」の通称でタイヘン恐れられる授業です。

その「カダイ」の、途中の進捗チェックの際に、
先生からよくこんな言葉が出ました。

「もっと現代建築としてこの問題をとらえてみれば~」
「現代建築として考えてみれば~」などなど。

このとき私はよくわかりませんでした。

ゲンダイケンチク? 現代建築ってなに? 
どうゆうこと?
現代社会を舞台に書かれた小説は
現代小説っていうけど、
現代につくったもの=ゲンダイケンチクでしょ?
いま設計したものはみんなゲンダイじゃん?
違うなら
「現代につくったもの」の100年後は
なんて言うの??
何がどうちがうの??

疑問渦巻くあまり、先生にたずねてみました。
先生は、あまりに基本的な質問に
少々面食らいながらも
こう答えてくれました。

「現代建築とは、
 現代の思想、現代の技術を用いて
 つくられたものだよ!」

なるほど! 単に「現代につくられたもの」ではなくて、
「現代=それをつくった当時」の思想と技術が
込められたもの、だったのですね!(スッキリ)

もちろん、これは私が先生から教わった定義であって
もっと違う定義があるかもしれません。
ですが、「建築」と和訳される前の
「アーキテクチャー(Architecture)」という英語は、
原理を表す「アルケー(arkhē)」と、
技術を表す「テクネー(techné)」という
ギリシャ時代における2つの言葉が
合わさったものですから
そのふたつに現代性を込めることという、この定義は
本来的なものだろうなと思います。
何より、遠い昔のやり取りを鮮明に思い出せるほど、
私にとっては心に残る「教え」だったわけです。

このように、個人的なエピソードを引き合いに
みなさんに知ってほしかったのは、
「現代建築とは、
 現代の思想、現代の技術を使ってつくられたもの」
という点です。
“現代”の思想、“現代”の技術が、
時代を経ると共に変化すること=“現代”でなくなること
は当たり前ですから
「いつつくったのか」という史実的内容や
時代様式ではなく、
「どうつくったのか」という姿勢を問うたものが
現代建築であると、
少なくともここでの話ではとらえてください。

おっと、長くなりましたが、
次回、東京タワーの意味についてお話します。

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2010-03-30-TUE