乗組員やえの疑問

東京タワーも日建設計さんが設計したとか。
鉄塔の設計でだいじなことってなんですか? その2

スカイツリーおじさんの解説

さて、前回からの続きになりますが、
東京タワーも、
設計当時の思想と技術が込められた
「現代建築」でした。
高さ333mという、
当時の自立式鉄塔として世界一高い
タワーへの挑戦だったわけですから。

当時はコンピュータがないため、
「計算尺(けいさんじゃく)」という
対数の原理を利用した
アナログ式の計算用具を用いた
手計算で構造計算をしたそうです。
それでも、後に、コンピュータで解析したところ、
その計算が合理的なものであったことが分かっており、
現代の技術者を驚かせています。

また、現役の設計者が、
東京タワーを実際に見に行ってこういいました。
「美しい。
 なんて細くエレガントにつくったんだろう! 
 ……感動した」って。

「いつつくったのか」という史実や
時代と共にある建築様式は、
当然変化していきます。
しかし、
「どうつくったのか」という当時の姿勢は
現存する建築が今に伝えているのではないでしょうか。

「ほぼ日」あてにこんなメールが届いていました。
「一昨年79歳で他界した父が若い頃、
 東京タワーが高くなって行くのを
 通勤途中によくみていたよ、
 と話していたのを思い出します。」

建築は街となり、街は風景となり、
風景は日々の生活を取り囲む環境となります。
人はそこに生きる環境からさまざまな影響を受け、
ときに順応し、ときに克服し、
そして記憶に刻んで生きています。
建築や街は自ずとそこに生きる人の内面に
影響を与えるものだと思っています。

当時、333mという世界一高いテレビ塔が
伸びていく姿を
目にした多くの人が、
その姿に勇気づけられたと聞きます。
終戦から十数年後の話、
きっと高度成長時代の象徴であったことでしょう。
今では映画『ALWAYS 三丁目の夕日』に
端的に現されているように
「昭和」を誇る存在でもあります。

さて現代、
東京タワー設計の時代に比べ、技術は進化しました。
地震が発生する仕組みについての研究は進み、
コンピュータにより複雑な構造解析や設計ができ、
詳細なシミュレーションも行えるようになり、
鉄などの材料も、より適したものが開発されています。
職人さんによる日本のものづくりの技も
より磨かれてきました。
東京タワーがあり、
その後の技術の進歩があるからこそ、
東京スカイツリーの設計が
可能になっています。

東京スカイツリーは、
五重塔などの伝統的建築、現代テクノロジー、
日本のものづくりの職人技など、
過去から現代にわたる、
「日本」の知恵・技術・技を集結させて、
日本から世界へ発していこうとしています。
そこに込められた、設計者の姿勢は、
当時もいまも変わらぬ、深い想いが込められています。

そうそう、
パンクロックの雄・THE CLASHのボーカル、
ジョー・ストラマーはこういってましたね。

“ PUNK IS ATTITUDE, NOT STYLE ”
(パンクはスタイルじゃない、姿勢だ!)

う~ん、音楽と建築のちがいはありますが、
「ものづくり」のあり方として、
個人的に、すっごく共感!!!

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2010-04-06-TUE