乗組員やえの疑問

世界の高い建物で古いものとは?

スカイツリーおじさんの解説

古今東西、高くて象徴性を兼ね備えた
巨大建造物といえば、
ピラミッドを思い浮かべる人が
多いのではないでしょうか。
なかでも、クフ王のピラミッドとして知られる
「ギザの大ピラミッド」
(紀元前 2440年~2420年に完成)は
世界の七不思議にもあげられている最大のものです。
高さは146.6m、勾配は51度。底辺は各辺230mで、
長さ・高さの比は黄金比になっています。

ピラミッドはいまなお謎の多い建造物ですが、
少し後の古代エジプトで
「オベリスク」という
石柱状=タワー状(?)の記念碑
(日時計でもあります)が
建てられていることから、
ピラミッドも、
本当はもっと高いタワー状にしたかったのでは?
と、想像を広げてみることもできそうです。

このピラミッドの高さは、
その後、数千年と抜かれることはありませんでした。
これを抜いた建造物は、ドイツの「ケルン大聖堂」。
高さ157mの、石造の聖堂で、
1248年に建設が始まり、
最初の建設計画を変更することなく、
約600年後の1880年に完成しました。
ピラミッド、聖堂と、
宗教的建造物が高さを誇っていたわけです。

日本の歴史でみると、
山岳信仰としての山、
城郭など「高い」ものはありますが、
タワーとしては、やはり、
「法隆寺 五重塔」がよく知られています。
世界で最も古い、木でつくられた塔なのに、
地震国・日本にありながらも
倒壊していないことが驚きです。
塔の胴体部分が下方で広がらない
スレンダーなシルエット、
周囲の木組みから独立した
「心柱(しんばしら)」という柱が
中心部にあることなど、
今回、東京スカイツリーの設計をするうえで
さまざまなヒントを得たタワーのひとつです。

さて、もう少し近年のタワーで見ていくと、
一番有名なのはフランスの「エッフェル塔」ですね。
1889年の完成で、高さは324mです。
なんと、工事期間はたった2年!
設計者はギュスターヴ・エッフェルさん。
エッフェルさんは、エッフェル塔を手がける前に、
「独立100年祭」の記念に
フランスがアメリカにプレゼントした
「自由の女神」像の鉄骨を設計して、
一躍有名になりました。
もともと鉄道高架橋を手がけており、
その技術が自由の女神や
エッフェル塔に生かされています。

ところで、エッフェル塔が
なぜこんなに有名かといえば……、
ズバリ、鉄でできているから!

エッフェル塔は、
そもそもはパリ万博のモニュメントとして
計画されたもので、
その計画案を決めるコンペが行われています。
そしてこのコンペは、
「石と鉄の戦い」と言われているそうです。
対抗案は石造の塔で
やや現実性に乏しかったともいわれますが
何よりも、
産業革命後の「近代」な、
1889年の万博でつくられるタワーは、
「金属産業の独創的傑作」が求められたために、
鉄でできたタワーである
エッフェル案が圧倒的に勝利したのです。

つまり、「時代を象徴する」タワーであったため
こんなにも有名になっているというわけです。
ちなみに、それゆえか、
いまでは観光名所として有名ですが、
建設時は、奇抜すぎるデザインとして
論争を呼んだそうです。

その他、個性的なタワーを紹介すると、
前回も紹介したロシアの「オスタンキノタワー」は、
建設工事で使われたクレーンや作業台が
そのまま塔体に残されていて、
完成後も工事中のような不思議なタワー。
これらは完成後のメンテナンスで
使われているのでしょうが、
質実剛健な印象を受けます。
(見た目は、これはこれで
 なかなかカッコイイですよ)

高さ388mの観光用タワー「マカオタワー」では、
高さ233mの展望台からのバンジージャンプ、
展望台外周部を、
命綱をつけて1周するスカイウォーク、
頂上まで外部梯子で登る、マストクライム
など、アトラクションが盛りだくさん。

アメリカ・ラスベガスの
「ストラトスフィア・タワー」は、
ホテル兼カジノに併設されたタワーで、高さは350m
頂上部に、絶叫マシンや空中ブランコがついていて、
テーマパークの街、ラスベガスならでは。

以上、ざっとですが、
それぞれのお国柄さえうかがえそうですね。
タワーに限らず、建築には、
それぞれの時代性や考え方が現れるものです。
ゆえに建築は「文化」といえるのですが、
難しく捉えずとも、単純にオモロイものなので、
みなさんも興味をもってもらえるとうれしいです。

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