みなさんがよく知っている、
鉄骨でできたタワーといえば
東京タワーや通天閣、
名古屋テレビ塔、さっぽろTV塔、
海外ではエッフェル塔などではないでしょうか。
これらのタワーの共通点のひとつは、
大きく見れば「4本足」で立っていることです。
接地部の平面をみると、全体の輪郭は四角形で、
その4つの頂点から鉄骨の足が伸びていき、
上部でひとつになって、
細くなりながら頂部まで伸びていくかたちです。
一方、東京スカイツリーは3本足で立っていて
足元は三角形の平面をしています。
その理由はというと‥‥、
東京スカイツリーの建つ墨田区押上は
浅草、向島など伝統ある下町に囲まれ、
東武線、地下鉄、水上バスなどが行き交う
交通の要所にあります。
なかでも建設地は、
隅田川、荒川、南側の鉄道路線・幹線道路という
3本の「都市の軸」に囲まれた地勢の
中央に位置しています。
面白いことに、それら「都市の軸」に直交する
主な「通り」の焦点に、
東京スカイツリーが位置しているのです。
そこで、ツリーに向かって伸びている「通り」から
訪れる人に対して、
ツリーが正面を向いてお迎えする格好となるように、
3つの面が「通り」に向き合うかたち、
つまり、三角形にしたのですね。
このことは、タワーが街と人に向き合い、
交流を促すようなかたち、
と、いえるかもしれません。
また、墨田区の紋章も
三角形をモチーフにしたもので、
墨田区に建つタワーとして
似つかわしいともいえそうです。
▲墨田区の紋章
でも、ほかのタワーが4本足なのに、
1本少なくて大丈夫なの?
って、思われるかもしれませんね。
まず、3本足とはいっても、
これが不安定なかたちというわけではありません。
3本足は凸凹したところでも
足を踏ん張らせてきちんと立つ、
という特徴を持っています。
例えば、鼎(かなえ)という
中国の古代器物がそうです。
▲鼎(かなえ)
これは、なべ型の胴体に足が3本ついた器で、
博物館などでお見かけしたことが
あるのではないでしょうか。
ちなみに「鼎」という字は「3」を表す意味もあって、
「鼎談(ていだん:3人での会談)」の字に
使われています。
もっと身近なものだと、
カメラの三脚を思い浮かべていただければ、
わかりやすいと思います。
もちろん、4本足やそれよりも多い足でも
安定するのですが、
最小の数で安定するのが3本足なのです。
検討の結果、最小の3本足にしたことは
周辺地域への見た目の圧迫感を抑えることにも
つながっています。
3本足にしたことって単純なようですが、
なにもオバQの頭からイメージしたけわけではなく、
街との関係、人との関係、安定性やデザインなどなど、
いろいろなことを考えて設計したものなのです。
逆にいえば、
いろんなことを考えながら進めるのが設計でして、
設計するものにとっては、
難しくも、面白いところなんです。 |