みなさんがよく知っている、
鉄骨でできたタワーといえば
東京タワーや通天閣、
名古屋テレビ塔、さっぽろTV塔、
海外ではエッフェル塔などではないでしょうか。
これらのタワーの共通点のひとつは、
大きく見れば「4本足」で立っていることです。
接地部の平面をみると、全体の輪郭は四角形で、
その4つの頂点から鉄骨の足が伸びていき、
上部でひとつになって、
細くなりながら頂部まで伸びていくかたちです。
一方、東京スカイツリーは3本足で立っていて
足元は三角形の平面をしています。
その理由はというと‥‥、
東京スカイツリーの建つ墨田区押上は
浅草、向島など伝統ある下町に囲まれ、
東武線、地下鉄、水上バスなどが行き交う
交通の要所にあります。
なかでも建設地は、
隅田川、荒川、南側の鉄道路線・幹線道路という
3本の「都市の軸」に囲まれた地勢の
中央に位置しています。
![](images/vol12_ph01.jpg)
面白いことに、それら「都市の軸」に直交する
主な「通り」の焦点に、
東京スカイツリーが位置しているのです。
そこで、ツリーに向かって伸びている「通り」から
訪れる人に対して、
ツリーが正面を向いてお迎えする格好となるように、
3つの面が「通り」に向き合うかたち、
つまり、三角形にしたのですね。
このことは、タワーが街と人に向き合い、
交流を促すようなかたち、
と、いえるかもしれません。
また、墨田区の紋章も
三角形をモチーフにしたもので、
墨田区に建つタワーとして
似つかわしいともいえそうです。
![](images/vol12_ph02.jpg)
▲墨田区の紋章
でも、ほかのタワーが4本足なのに、
1本少なくて大丈夫なの?
って、思われるかもしれませんね。
まず、3本足とはいっても、
これが不安定なかたちというわけではありません。
3本足は凸凹したところでも
足を踏ん張らせてきちんと立つ、
という特徴を持っています。
例えば、鼎(かなえ)という
中国の古代器物がそうです。
![](images/vol12_ph03.jpg)
▲鼎(かなえ)
これは、なべ型の胴体に足が3本ついた器で、
博物館などでお見かけしたことが
あるのではないでしょうか。
ちなみに「鼎」という字は「3」を表す意味もあって、
「鼎談(ていだん:3人での会談)」の字に
使われています。
もっと身近なものだと、
カメラの三脚を思い浮かべていただければ、
わかりやすいと思います。
もちろん、4本足やそれよりも多い足でも
安定するのですが、
最小の数で安定するのが3本足なのです。
検討の結果、最小の3本足にしたことは
周辺地域への見た目の圧迫感を抑えることにも
つながっています。
3本足にしたことって単純なようですが、
なにもオバQの頭からイメージしたけわけではなく、
街との関係、人との関係、安定性やデザインなどなど、
いろいろなことを考えて設計したものなのです。
逆にいえば、
いろんなことを考えながら進めるのが設計でして、
設計するものにとっては、
難しくも、面白いところなんです。 |