乗組員やえの疑問

鉄骨の溶接について教えて?

スカイツリーおじさんの解説

ついに高さが529mになりました。
にょきにょきと成長していったタワーですが、
鉄骨の柱は、現場溶接によって接合されています。

ただし、さまざまな方向から鋼管が集まってくる
仕口部分は形状が複雑なので
現場ではなく、
工場で加工作業をしてもらっています。

仕口部は工場で溶接されて現場に運ばれ、
柱材、斜材、水平材などと現場で溶接して連結。
今回のスカイツリーの場合は、
個々の部材も非常に大きくなるため
鋼管をいくつにも分割して現場に運んでいます。
一本の部材が長いと、重すぎて
トレーラーで運べなかったり、
現場到着後クレーンで持ち上げられない
といったことがあるので、
短いピースに分割しているのです。
そのため、
現場での溶接量がとても多くなっています。

この溶接量の多さ、
さらに高所での作業となることに対応する意味でも、
鋼管は、低い予熱温度での溶接を可能にするなど、
溶接施工性を向上させた鋼管にしました。

現場での溶接作業は、
鋼管を金具で固定して動かないようにして行います。
また、溶接は、溶接中に風を受けると、
空気中の窒素や酸素が溶接金属中に紛れ込み、
溶接箇所にブロー・ホールと呼ばれる気泡が発生して
溶接品質を低下してしまう恐れがあります。
そこで、作業箇所の周りを囲って
その中で溶接作業をするということをしていました。
一時期、巨大な鳥の巣のような囲いが
タワーの周囲に見られたのはこれだったのですね。
ちなみに、前々回もお話した、
直径2.3m、厚さ10cmもある
いちばん太い鉄骨の溶接には
溶接作業者4人1チームで、約3日かかりました。

溶接というものはなかなか技がいるものでして、
長く溶接をしている方は、
例えば、遊園地や駅舎、あるいは自転車などの
溶接部を見ただけで、
その良し悪しや技量レベルがわかるんだそうです。
普段から、ついつい溶接部に目がいき、
あまりよくない溶接だと、
自分がやり直したくなってムズムズするのだとか。
同じように、構造設計者も
ついつい、いろんなものの仕口部分に目がいって
その納まり方が気になるのだそうです(笑)。

スカイツリーの現場で溶接を担当されている方は、
選抜試験をクリアした熟練の技能者ばかり。
溶接作業は一箇所ずつの手作業で、
溶接した部分は必ず
超音波でひとつずつ検査してもらうことにしていて
溶接が不完全で欠陥のある部分は
取り除いて、もう一度やり直しとなります。
これを全部やっていく現場での作業は大変なもので、
それをこの高さまで無事につくってきたのは
ものすごい偉業であり、感服するばかりです。

コンピュータやさまざまな先端技術とともに
こうした職人さんの技が息づいている現代建築。
それが、東京スカイツリーなんです。

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2010-12-07-TUE