日本は「地震大国」と呼ばれるほど、
世界的に見ても地震の多い国です。
そのため、海外メディアからの取材では必ず
「日本でこんなに高いタワーを建てて大丈夫なの?」
という質問が出ます(笑)。
東京スカイツリーは電波塔ですから、
万一の災害時にも放送を途絶えさせないことが必須で
展望台において船酔い現象を軽減する必要もあり、
揺れをどう抑えるかがいちばん大きな問題でした。
地震による倒壊から建物を守る方法は、
大きく3つあります。
建物を頑丈にする「耐震構造」。
建物と地盤を切り離して
地震力が建物に伝わらないようにする「免震構造」。
特殊な装置や構造上の工夫により
地震による揺れを小さくする「制振構造」。
並び順に、地震に耐える構造、地震から免れる構造、
振動を制する構造、という意味の名前です。
それぞれ特長があるのですが、
東京スカイツリーでは制振構造を用いています。
ビルなどに使われている制振構造の多くは
「制振ダンパー」と呼ばれる装置によって
地震のエネルギーを吸収し、
建物本体への影響を小さくするというものです。
しかし、東京スカイツリーでは
「質量付加機構」という技術を応用しています。
この「質量付加機構」とは、
構造物本体の揺れとはタイミングがずれて揺れる
「おもり」を構造物に組み合わせることで、
構造物全体の揺れを小さくするという原理です。
「おもり」=質量、組み合わせる=付加、
で、「質量付加機構」と呼ばれています。
揺れが起きたときに生じる現象は
単純化していえば次のようになります。
構造物本体も「おもり」も
「左から右、右から左」へと往復して揺れます。
ですが、構造物本体と「おもり」の揺れるタイミングを
ずらしている
(「おもり」のタイミングを遅くしている)ために、
例えば、構造物本体が「右から左」へ
揺れようとしているときに、
「おもり」はまだ「左から右へ」へ
揺れようとしている、
という状況が生まれます。
その際にふたつの揺れる向きが逆となり、
全体の揺れを小さくするというシステムなんです。
東京スカイツリーにおいては、
「構造物本体」にあたるのが外周の鉄骨塔体、
「おもり」にあたるのが中央の非常階段の入った
円筒部分です。
この円筒部は直径8m、地下から高さ375mまであり、
厚さは、高さ100mまでが40cm、
高さ100~375mまでが60cmの
鉄筋コンクリート造の「柱」で、
周囲の鉄骨造部分とは構造的に切り離されています。
周囲の架構との間は、
ぐるりと約1m程度の隙間になっていて、
高さ125m以下は固定域として
鋼材により塔体とつないでおり、
高さ125~375m までは可動域として
隙間にオイルダンパーを設けています。
オイルダンパーは、要はクッションのような役割で、
揺れたときにこの「おもり」が
塔体にぶつからないように制御するものです。
副次的には、このダンパーによって
地震エネルギーを吸収することができます。
「おもり」を固定域と可動域に分けているのは、
地震は一定の揺れ(定常波)ではないことから、
多くの摸擬地震動波形による
シミュレーション解析を行なって、
もっとも効果がある可動域を決定したものです。
こうした制振システムによって
地震時の揺れを最大50%低減することができます。
この東京スカイツリーの制振システムは、
世界初のオリジナルなもので、
「心柱(しんばしら)制振」と名付けました! |