糸井 |
グーグルやブログが登場したあとの
「新しいウェブの時代」には、
あらゆる人が
「世界の中心」に立ってしまうという、
可能性がありますよね。 |
滑川 |
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糸井 |
これってつまり、
あらゆる人、あらゆるものごとに、
「伝ることができる」可能性と
「見られてしまう」可能性との両方が
あるということですよね。
これもまた、
「ソーシャル化」したことの結果です。 |
滑川 |
ネットでの「炎上」なんて現象は
後者の典型でしょう。
いままで、近所のカラオケスナックで
「だいたいさぁ」なんてわめいていたことを
不用意にアップしちゃったりすると‥‥
もうそこが「世界の中心」となってしまう
可能性があるんですね。 |
山中 |
滑川さんのお言葉を借りれば
「世界の中心で
クダを巻いたオヤジ」になっちゃう、と。 |
糸井 |
そういう時代に、
「伝えることができる」ほうの可能性は、どうか。
僕は、「どう伝えるか」ということが
もういちど問われてくるんだと思うんです。
ひとつ言えるのは‥‥
いままでの広告は「終わった」ということ。 |
滑川 |
ほほう。 |
糸井 |
もはや、
「視聴率20%のテレビ番組でガンガン提供する」
なんてマス広告的な方法論が、
通用しなくなっていますよね。 |
山中 |
で、いま、ひとつの大きな広告モデルに
なってるのが、またしてもグーグル。 |
滑川 |
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山中 |
でもグーグル的モデルって、
じつは構造的に
「テレビ」とすごく似てると思うんです。
グーグル自体は「タダ」なんですけど、
じつは、あらゆる商品に広告費が乗っている。
‥‥この「ボールペン1本」にさえ。
きわめて巧妙に設計された
「直接間接税」という
広告の仕組みですよ、これは。
そしていま、その仕組みを
もっともあまねく使っているのが
グーグルなんですよね。
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糸井 |
みごとなほどにね。 |
山中 |
うん、じつにみごとです。
で、その「グーグル的世界」が広がり、
いろんな情報があふれかえる一方で、
「直接税」、つまり
お金を払ってでも情報がほしいという
ムーブメントが、
揺り返しのように、出てくるんでしょうか? |
滑川 |
うーん‥‥グーグルは広告でも、
ある意味で、独占しちゃってますからね。
たとえば、やっぱりテレビで
コマーシャルうたなきゃダメだよとか、
キャンペーン張るなら
全国紙で一面とらなきゃとか、
今までのマス広告モデルを相対化した、
という意味では、
すごくインパクトがあったと思います。
‥‥最近、日経さんから出た
『ウィキノミクス』という本が大ヒットしまして、
たいへんおめでとうございます、なんですけど(笑)。 |
山中 |
私がつくったわけじゃありませんが、
ありがとうございます(笑)。 |
滑川 |
とてもおもしろいと思うんですが、
これからは、
「オープンソースをシェアする明るい未来」
みたいなことが書いてありますよね。 |
山中 |
新しいウェブのおかげで
ぼくらの未来は「ラン、ラン、ラン!」だと。 |
滑川 |
でも、たとえば 「ロングテール」にしても
ニッチな商品が売れるようになったと
言われてますけれど、
じつは、それよりも 「ショートヘッド」のほうが、
ケタちがいに、上がっちゃうんです。 |
山中 |
うん、うん。 |
滑川 |
つまり、「死に筋」の本が売れて
出版社や著者が潤うよりも、
それを束ねている「アマゾン」のほうが
ぜんぜん儲かってしまうわけですね。
これからの時代は
「2.0」で、ロングテールで、
より民主的な経済構造が‥‥なんて
うたわれていますけれども、本当はぜんぜんちがう。
ますます「集中寡占」が進んでいくんですよ。 |
山中 |
うん、うん。 |
滑川 |
とくにグーグルなんかの場合、
もう、あの巨体をひっくり返すことは
ちょっとむずかしいわけじゃないですか。
キャッシュと人材が
グーグルに集中していく流れってのは、
どうやったって
あと10年ぐらいは、続くと思うんです。
たしかに、従来型の「マス広告」が
相対化されたのは事実なんだけれども、
こんどは、グーグルの「独裁広告」と
しばらく付き合っていかなきゃいけない。
その先って、はたしてどうなのか。
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糸井 |
グーグル的広告モデル、という話としては
きっともう、
滑川さんのおっしゃるとおりでしょう。
だけど、現実の街を歩いているときって
またちょっと、ちがうと思うんです。
つまり、近所のレストランの繁盛だとか、
芝居小屋のお客の出入りだとか‥‥
そんなようすを見ていると、
「グーグルの独裁」という話と、
実感として、うまくつながってこない。 |
滑川 |
ふん、ふん。 |
糸井 |
このあいだの土曜日の夜、
『パイレーツ・オブ・カリビアン』を観にいったら、
みごとに、いっぱいなんですよね。
はやい話が「愉快なだけ」の映画を観るために(笑)、
真夜中の映画館に
たくさんのお客さんが集まっている。
その現実のありようを、
グーグルでは、捉えきれないんじゃないか。
つまり、どこまでいってもグーグルって、
情報を伝えたり、管理したりする以上のことは
できないと思うんですよね。 |
滑川 |
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糸井 |
だって、ライブやロックフェスには、
お客さんがいっぱいいるじゃないですか。
レコードでは得られない満足があるから、
たくさんの人が集まるわけです。
そこにはやっぱり「可能性」があると思う。
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<続きます> |