糸井 |
ずいぶんまえのことですが、
『インターネット的』という本のなかで
僕の考える
「インターネット的であることの特徴」を
みっつ、書いたんです。
ひとつは「フラット」。
つまり、年齢や地位、価値感などが
「平らになる」ということですね。
それから「リンク」。
見えない人と、つながりあうこと。
そして、もうひとつは「シェア」。
「売り買い」ではなく、
「タダで持ってっていいよ」という考えかた。
お金を介さないで、
価値のやりとりができるようになったこと。
このみっつの要素を、
僕の考える「インターネット的」という言葉で
表現したんです。 |
山中 |
ええ、ええ。 |
糸井 |
本質は、この部分にあるんじゃないか。
つまり「インターネット」が
「すばらしい何か」であるというよりも、
「インターネット」とは、
このみっつの要素を中心としながら、
人と人とがコミュニケーションをとるための
新しいツールに
なっていくんじゃないかと思ったんです。 |
滑川 |
なるほど。 |
糸井 |
当時、「インターネット」って
ツール以上のなにかであるというふうに
幻想的に語られていましたけど、
だんだんメッキが剥げてきたというか‥‥
ようするに、「道具じゃないか」と。
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山中 |
ええ、そのとおりですね。 |
糸井 |
むしろ、その道具の
向こう側とこっち側にいる
「人」のほうが大事なんだ、ということが
わかってきた。
でもそのあと、
なんとも説明しきれないことが
起こってきたんです。 |
山中 |
それは、たとえば‥‥。 |
糸井 |
いちばん大きかったのは
やっぱり「グーグル」ですね。
登場したときの
「すごい検索エンジンが出たぞ!」という、
あの紹介のされかた。
そして、その後の大躍進とか
本性をあらわしていくプロセスを眺めていたら、
これはどうも、いままでと違うぞ、と。
つまり、たんに「詳しい検索エンジン」、
というだけではないと思ったんです。 |
滑川 |
まさに、そのとおりですよね。
検索における
コペルニクス的転換でした。 |
糸井 |
そして、もうひとつは
「ツリー構造」という考えに対する
いごこちのわるさ、といいますか。 |
山中 |
ツリー構造、ですか。 |
糸井 |
その昔、いま任天堂の社長をやっている
岩田聡さんに、
コンピューターのことを
教えてもらうという日があったんですよ。
そのときのレクチャーは、
おおざっぱに言うと「チャートの作りかた」でした。
たとえば「人間」のなかには
大きく分けて「男」と「女」がいる、と。
で、「男」のなかには
こういう人や、こういう人もいて‥‥と
「大分類」から「小分類」へ分けていく。 |
山中 |
おおもとのところから細分化していって
系統樹みたいに分類していく、という方法ですよね。 |
糸井 |
もちろん、
この「ツリー構造」の考えは、役に立ったんです。
たとえば「ゲームをつくる」とき。
アメリカには、ニューヨークがあって、ロスがある。
ロスには、こんな街がある。
その街には、こんな店があって‥‥というふうに、
「ツリー構造」で考えていくと、
抜け落ちているものを探すときや
どの階層に矛盾が起こったのかを
発見するときなんかに、とても便利だったんです。
つまり、「整合性」をつけて考えるときですね。
‥‥でも、なんだかしらないけど
僕には嫌だったんですよね、その「整合性」が。 |
山中 |
嫌だった? |
糸井 |
というのも、自分自身、
階層がどこでどうそろっているかを
無視するところに
おもしろいアイディアって出てくるんじゃないかと
思っているからなんです。
で、そのことを岩田さんに言ったら
「あ、それは、コンピュータのほうが、
追いついてないんですよ」って。
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滑川 |
うん、うん。
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糸井 |
「ツリー構造」で考えるという
当時のコンピューターの方法論と、
「ツリー構造」の外側にはみ出している
自分自身の考えかた。
そのあいだの違和感を説明しきれないままに
時間が過ぎていったんですけど‥‥
グーグルのなかには、
「ツリー構造じゃないもの」を感じたんですね。 |
滑川 |
たしかにあれは「ツリー」じゃない。 |
糸井 |
最初は、説明できなかったんです。
でも「これこれ、これなんだよ!」って。
僕が言いたかったのは、
きっとこのことなんだと思っていたら、
滑川さんの 『ソーシャル・ウェブ入門』に
行きあたったというわけです。 |
滑川 |
なるほど、なるほど。 |
糸井 |
「ツリーの外側」的な思考法と、
「グーグル」の登場。
滑川さんの『ソーシャル・ウェブ入門』で、
そのふたつの問題意識が、つながった。
そこで、ぜひお会いしてみたいと思って、
こうして本日、
日経ビジネスオンラインの山中副編集長とともに
お招きしているわけなんです。
‥‥と、前口上が長くなりましたが。 |
滑川
山中 |
|
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<続きます> |