ソニア パーク×糸井重里   ご近所のソニアさんと ものづくりの話。
 
 
 
2.ふたりの共通点。
ソニア このまえ、知り合いのカメラマンに
「ソニアと糸井さんって、ちょっと似てるね」
って言われたんです。
糸井 へぇー。
ソニア その人が言うには、
糸井さんはこれまでにいた
広告の世界をいさぎよく捨てて出て行って
「ほぼ日」をスタートされて、
私もスタイリストとしての仕事だけにしがみつかずに
今はショップ経営という別のことに取り組んでいて、
そういうところが共通してるって言われたんです。
自分たちが今までつくり上げたものを、
全部捨てたわけではないけど、
それはそれとして
「さぁ次に行こう」みたいなことができるって。
糸井 あぁ、たしかにその通りですね。
経験って蓄積していくものだから、
肩書きや仕事の内容が変わっても、
使えるものだと思うんです。
ぼくも、広告をやっていたときに考えたことって
仕事が変わっても忘れていないんです。
ソニア 広告の仕事は
ご自分で意識してやめられたんですか?
糸井 そうです。
職業としてやることはやめましたね。
ソニア それは、どうしてですか?
糸井 すごく簡単に言うと、
最後の判断を、
人がしなきゃいけないから。
ソニア 別の人が?
糸井 そう。つまりAさんから仕事を頼まれた場合、
Aさんにギャランティーをもらった時点で、
2案あっても、
最終的にどっちがいいかっていうのは
Aさんが決めるんです。
ソニア はい。
糸井 せっかく考えて
自分がいちばんいいと思っている案があっても
Aさんがノーと言ったら
選ばれないじゃないですか。
ソニア あぁ、そうですね。
糸井 そんなことを続けるよりは
自分がアタリだと思うもので失敗した方が
おもしろいと思うんです。
そういうわけで、
スポンサーとかクライアントがいる仕事をやるのは、
もうやめようと思ったんです。
「自分がクライアントになればいい」
というやめ方をしたんですね。
ソニア へぇー。
それは、「もうやらないっ」って
宣言したんですか。
それとも、少しずつ断っていったんですか?
糸井 少しずつ断ったのかもしれない。
「ほぼ日」をはじめて
2、3年経ったころだから‥‥
12年くらい経つのかな。
ソニア それで何か、変わりましたか?
糸井 もう、圧倒的に健康になりましたよ。
ソニア へぇー!
糸井 何ていうのかな。
背は伸びるし、
体は丈夫になるし、
走るのも速くなるし。
ソニア すごい(笑)。
いいことだらけですね。
糸井 いいとこだらけです。
「ますますいい男になったね」なんて言われるし。
ソニア ‥‥(笑)。
糸井 冗談はともかく、
ぼくは、広告の世界でも
どんどん行き詰まって
きゅうくつになっていく人を見てたけど、
いま自分はそうじゃないっていうことだけは言える。
頼まれ仕事をしなくなると、ものすごく楽です。
もちろん、責任はともなうけど。
ソニア 私も一緒で、
昔はすごく頼まれることが多かったんです。
仕事がくるかどうかの
電話を待つのもいやでした。
それに、スタイリストとして
撮影の仕事をしていると、
「少し先はどこで何の仕事をしてるか分からない」
っていう状況が続くし、
すごく不規則だから、これを続けていたら
体がボロボロになるなって思いましたね。
そしてだんだんと、
人に言われてやることよりも
自分で何かやってみたいなっていう
気持ちになっていきました。
だから、自分が好きではじめたお店だけは
誰のせいにもできないです。
自分で全部責任を取るしかないなと。
糸井 すごくわかります。
ぼくらって全然違うように見えるけど、
案外同じかもね。
ソニア 生まれたときに離された双子かも(笑)。
でも、ちょっと、年が違いますね。

(つづきます)

2012-11-07-WED

 

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スタイリング:林道雄 写真:三部正博