- ──
- 今日は「俳優の言葉」っていう‥‥。
- 池松
- はい。ぼく、読んだことありますよ。
本木(雅弘)さんのやつとか。
- ──
- 本当ですか。ありがとうございます。
- 池松
- おもしろいよって誰かに言うために、
携帯に保存してたんです。
- ──
- 第1回の本木さんのあとは、
山﨑努さん、村上淳さん、國村隼さん、
窪塚洋介さん‥‥と来て、今日。
- 池松
- はい。
- ──
- 自分の好きな俳優さんのところにだけ、
行くことにしているんです。
- 池松
- あ、そういう人選なんですか。
- ──
- はい、どの人も大好きなんですが、
池松さんは、
中でも雰囲気が独特だと思ってて。
よく言われることだと思いますが。
- 池松
- そんなことないです。
- ──
- でも、言われませんか、人から。
- 池松
- 言われるんですけど、
自分ではふつうだと思ってます。
- ──
- ふつう。
- 池松
- はい。
- ──
- 最初は野球少年だったところから。
- 池松
- ええ。
- ──
- たしか、ご両親に野球のなにかを
買ってあげると言われて、
オーディションに行ったとかって。
- 池松
- 野球カードですね。
- ──
- おお、野球カード!
真剣にやってたんですよね、野球。
- 池松
- はい、真剣でした。
新庄(剛志)さんが近所の出身で、
どうしても、
地元に野球のチームがほしいと言って
つくったチームにいたんです。
- ──
- へえ‥‥強かったんですか。
- 池松
- 小学校では、だいたい九州1位でした。
- ──
- うわ、そりゃ本気ですね。
しかも九州、野球の強い地域ですよね。
- 池松
- 野球のうまい小学生が、
九州中から集まってくるチームでした。
- ──
- 守備位置は‥‥。
- 池松
- センターです。
- ──
- 新庄さんと同じ。足、速そうですね。
- 池松
- 速かったです、当時は。
打順は、6番か7番で。
- ──
- いま、新庄さんって、
インドネシアとかにお住まいですよね。
- 池松
- みたいですね(笑)。
- ──
- で‥‥そうやって
野球カードを買ってもらえるからって
オーディションに参加して、
そこから、
映画の世界へ入っていくわけですよね。
- 池松
- ええ。
- ──
- こうして話していても、
まさしく「映画俳優」という雰囲気が、
全身から漂うんですが。
- 池松
- いえいえ。
- ──
- いつからこうなったんですか?
- 池松
- いや、最初に出た映画が、
日本映画じゃなかったんですよ、ぼく。
- ──
- はい、ハリウッドですよね。
- 池松
- 当時は、まだ小学6年生でしたし、
演ずるとは何かも、
俳優とは何たるかみたいなことも
当然、わかってなかったです。
12歳の子どもでしかなかったし、
トム・クルーズさえも知らなかった。
- ──
- あ、そうなんですか。
ミッション・インポッシブル。
- 池松
- 知らなかったです。
ぼくのなかでは、
トム・クルーズって5人くらいいて、
毎回、別人に話しかけては、
「ちがうよ」「ごめん」みたいな。
- ──
- そうなんですか(笑)。
- 池松
- 野球の試合を休んでまで、
映画の撮影になんか行きたくないと、
思ってたんです、ずっと。
- ──
- それはきっと、本音なんでしょうね。
- 池松
- ただ、やはり‥‥いまにして思えば、
映画というものに、どこかで
惹きつけられていたんだと思います。
だって、何しろ、楽しそうなんです。
いろんな国の人が集まって、
みんな、いきいきとはたらいていて。
- ──
- へえ‥‥。
- 池松
- 食堂のおじさんから、
全員、うれしそうに仕事をしていて。
- ──
- すばらしいじゃないですか。
- 池松
- ぼくが野球好きってことを知った
トム・クルーズが、
やわやわのバットをくれたりとか。
- ──
- それが『ラストサムライ』の現場。
- 池松
- 自分たちのうえに「作品」があって、
そのもとに、
いろんな国の人たちが集まって、
各々が、各々の力を出し合っていて。
- ──
- ええ。
- 池松
- こういう場所があるんだってことを、
あのとき、
知ってしまったんだなあと思います。
<つづきます>
2019-10-01-TUE