桜島から降り注ぐ火山灰を使った
鹿児島のローカルクラフト。
──「ONE KILN」のテーブルウェア──
今週、「5DW メンズショップイシカワ」で発売するのは、
毎日の食卓のご飯を賑やかに美味しく感じさせてくれる
鹿児島の陶器工房「ONE KILN」(ワンキルン)の
テーブルウェアです。
鈍く、どっしりとした、鉄のような陶器は、
自ら掘るという地元の土と、
鹿児島のシンボルである桜島の
“火山灰”の釉薬を掛け合わせた
「ONE KILN」ならではのローカルクラフト。
型でつくるプロダクトを基本としながらも、
焼き上がった表情や色合い、手触りは、
手仕事の仕込みが伝わる工芸品のよう。
城戸さんが、まだ実家の車庫で
小さくつくっていたという時代から
ものづくりをお願いしていたのが、
ほかならぬ石川顕さん。
人柄も、使い心地もよく知っている「ONE KILN」の器が
いかにかっこよくてハンサムなのかを、
城戸さんへのたっぷりの質問とともに、迫ります!
- 石川
- ジンくんがつくってくれるkikisa(*)を
セラミックにできないかなって思って
城戸くんのとこに持っていったの。
(*編集部注:
石川さんが、モデルのKIKIさんからヒントをもらい、
フィンランド北部ラップランドのサーメの人々に
古くから伝わる、白樺の瘤をくりぬいてつくるコップ
「Kuksa」(ククサ)をもとに、
鹿児島の「Akihiro Woodworks」の
アキヒロジンさんにつくってもらった木製マグが
「kikisa」(キキサ)です。)
- 城戸
- 僕もジンくんもアイデアはあるんですけど、
結局モジモジしちゃって進まなくて‥‥。
でも、石川さんが言葉にして提案してくれることで
動き出せるところがあるんですよね。
- 石川
- 実際に動き出すと、ジンくんと城戸くんで
侃々諤々(かんかんがくがく)、
話し合いをしていて面白かった。
セラミックkikisaは城戸くんにしか頼めない、というか、
城戸くんありきでアイデアが湧いたものですからね。
もう少ししたら5DWでも販売されますよ。
- 城戸
- 僕の陶芸というのは、
有田(有田焼)で修業したから、ろくろを回さずに、
型からつくることができる。
だから、石川さんのアイデアにも応えられるというのが
あると思うんですよね。
- 石川
- 有田に行ったきっかけはなんだったの?
- 城戸
- もともと東京のデザイン事務所で働いていたのですが、
そこが飲食店の設計もしていて、器もつくっていたんです。
働いているうちに、器への興味が湧いてきてしまって、
そこで有田焼の窯元を紹介してもらいました。
- 石川
- 有田に行ってなかったら何やってたかな?
- 城戸
- 東京でデザイナーをしていたかも(笑)。
まあ、でも、いまは
有田での修行時代の3年間にたくさん感じた疑問をもとに、
新しい試みを思い切り挑戦している感じですね。
「ONE KILN」を始めたときも、
身近にあるもので何ができるかな、って考えていて、
有田から鹿児島に帰ってきたら、
真っ先にやりたかったのが、
火山灰を使ったものづくりだったんです。
よくみんなには、火山灰は「桜島に取りに行くのか?」と
聞かれるのですが、降ってくる灰を使っています。
火山灰が降ってくると雪景色みたいになるのですが、
袋に集めて、濾して、使うんです。
降ってくる灰ってサラサラしているんですよ。
- 石川
- エコロジーな気持ちがあるの?
- 城戸
- 特にはなくて、やりたいだけですね。
僕の器を扱っているお店の方が
サステナブルって言ってくれるときもありますが(笑)。
きっかけはいつも、自分がやりたいってだけ。
- 石川
- この黒い器も火山灰が使われているもんね。
- 城戸
- 意外と火山灰だけだと、このキラキラした模様って
キレイには出ないんです。
火山灰といろいろな鉱物を調合して、
キレイに出る比率を見つけたんですよね。
この「ash」という釉薬がブランドの顔になりましたが、
火山灰は時期で発色が異なるので、いまだに難しいんです。
- 石川
- 大変だ。
たとえば、このマグカップの内側の色はどうやるの?
- 城戸
- 白い土をベースにして、顔料を使った釉薬を使って
色付けしています。
まず、内側に色の出る釉薬を塗ってから、
外側の火山灰の釉薬を塗るんです。
- 石川
- ほんとキレイな色だよね。
あとはやっぱり、この四角い器に料理を盛ると
圧倒的に美味しそうになる。
緑が映えるし、フォトジェニックなんだよ。
- 城戸
- 釉薬がマットだということも、
肉や野菜が美味しそうに見せてくれる要素ですよね。
これは有田修業時代の兄弟弟子で、
現在、地元の波佐見(*)で作陶している
「Pebble Ceramic Design Studio」の石原亮太くんと
一緒につくった形なんです。
波佐見の形に、火山灰の釉薬を塗っているので、
長崎と鹿児島のコラボレーションですね。
ちなみに、ドリッパーは男性人気が高いです。
使っていくと黒光りするので、
育てる楽しさもあるんです。
ジーンズを育てるのと同じ感覚ですよね。
(*編集部注:
長崎県波佐見町でつくられている
陶磁器が波佐見焼。佐賀県の有田焼がつくられる
有田町とは隣町。)
- 石川
- 汚れすらかっこよくなる。
育つのはいいよね。
- 城戸
- つくった器などをレストランなどに納めて、
数年後に訪れたりすると、それこそ真鍮のようになっていて、
「これ、自分がつくったものかな?」ってなるくらいです。
食洗機も大丈夫なので、日常使いもしやすいんですよね。
- 石川
- 食器は基本的に白が多いから、
黒いのは逆にかっこいいよね。
ちなみに、これからは何をつくりたいの?
- 城戸
- 面白い方たちが声をかけてくれる部分と、
自分のつくりたい型を表現したいという
両方の気持ちがありますね。
「城戸くんはなんでもやってくれる」ってなると
バランスを取るのが難しくなってしまうので、
内緒にしておいてください(笑)。
- 石川
- そうしましょう。
そうだ、またクッカーやる?
- 城戸
- ‥‥いいですね。
- 石川
- 間があるね(笑)。
火山灰でもクッカーはできるの?
- 城戸
- できますけど、火山灰だと文字がのせられないかも。
- 石川
- そっか、ちょっと考えようか。
今度、鹿児島行きたいなあ。
- 城戸
- ぜひぜひ。
2023-07-27-THU
(おわります)
[STAFF]
スタイリング・プロデュース:石川顕
写真:吉嗣裕馬、ONE KILN
文:小笠原民織
協力:北川幸江、
みよし屋
「ONE KILN」(ワンキルン)のテーブルウェア
5DW WEBショップにて販売中。