ジーンズを再発見したブランド WESTOVERALLS どういうジーンズだったら、 O脚のぼくでもかっこよく穿けるのか。 これはその研究の成果です。

《2019年春夏の〈O2〉はこんな感じです》

「最近穿きたいジーンズがないなあ」
そんなふうに感じていたかたに朗報です。
ジーンズマニアを納得させるディテールはありつつ、
穿いたときのシルエットがとことん追求された、
ひさびさに食指がうごくデニムブランドを見つけました。
さあ、ご登場いただきましょう。
デニムには自信あり、自分の体型にはコンプレックスあり。
「WESTOVERALLS(ウエストオーバーオールズ)」の
デザイナー、大貫達正さんです!

大貫 達正(おおぬき たっせい)

フリーランス デザイナー。
小学生のころからヴィンテージ古着に興味を持ち、
アメリカやイギリス、フランスの古着を中心に
販売からバイヤー、ショップディレクションまで
幅広く携わる。
現在はフリーランスとして「HELLY HANSEN」の
クリエイティブアドバイザーをつとめるほか、
「HELLY HANSEN R.M.C」「OLDMAN'S TAILOR」そして
「WESTOVERALLS」の企画ディレクションを手がける。

3歳から「ジーンズ」と言っていた。

――
昨年、ワッフルのロンTをつくっていただいたんですけど、
そのときに達正さん、
「デニムだったら得意なんだけどな」
っておっしゃってました。
大貫
なにせ、3歳から「ジーンズ」って言ってたそうですから。
――
ほんとに?
大貫
親にちっちゃいころからジーンズを穿かされてて、
たぶん「これは何ていうの?」って聞いて、
教えてもらったんだと思うんですよ。
「ジーンズ」っていうことばの響きが気に入ったみたいで、
幼稚園でもジーンズを自慢していたそうです。
――
幼稚園児が。
大貫
それぐらいジーンズっていうものに魅了されていました。
そのまま小学校に入ってもジーンズが好きで、
だんだんメーカーのことも知るようになって、
古着というものを知って影響を受け、
小学校5年生のときにお年玉を握りしめて、
古着のジーンズを49,800円で買いました。
――
高っ!
大貫
はい、めちゃくちゃ親に怒られました。
「あんた、お年玉どうしたの」と言われて、
「いや、ジーパン買って、なくなっちゃった」
「ジーパンが50,000円もするわけないでしょ!」
なんて言われて。
まあ、それぐらいデニムが好きで、
それでずっと来ちゃったというところです。

コンプレックスが生んだ、独自のシルエット。

――
そんな達正さんがデニムブランドをやることになったとき、
どんなジーンズをつくろうと思ったんですか。
大貫
ヴィンテージのジーンズがとにかく大好きなんですが、
満足できない要素もあって、それは「かたち」でした。
ぼくは小柄だし、すごいO脚なので、
それだとジーンズを穿いてもかっこよくないんです。
だから、どういうジーンズだったら
かっこよく穿けるかというのをずっと研究してきました。
ブランドをはじめるとき、せっかくやるんだったら、
その成果を最大限活かそうと考えました。
――
ヴィンテージ・デニムは、かたちがよくないんですか?
大貫
ヴィンテージ・デニムには、「赤耳」と呼ばれる
セルビッジ(生地の端)がついていますよね。
――
ええ、ヴィンテージの復刻とか
ヴィンテージライクなジーンズにも、
かならずといっていいほど使われています。
大貫
これはもともと、生地のほつれ止めのためにあるんですが、
現在ではジーンズのアイコン的要素になっています。
で、ここがポイントなんですが、生地の端は直線なので、
セルビッジ同士を縫い合わせたところのラインは
当然まっすぐにしかなりません。
――
ああ、直線と直線を縫い合わせるから。
大貫
セルビッジを使ったジーンズのほとんどは、
アウトシーム(外がわの縫い目)にセルビッジがくるので、
外がわのラインはまっすぐになっています。
インシーム(内股のほうの縫い目)のほうは
股からひざにかけて傾斜して、ひざから裾にかけて、
すとんと落ちるシルエットになっています。
――
つまり、こうなっているわけですね。
大貫
そうです。
人間の脚のかたちは基本的に真っすぐではなく、
内がわにやや湾曲しているので、
ジーンズの外側が真っすぐだと、
はいたときに外がわに突っぱねるような感じになるんです。
さらに、ひざ部分に角がついているので、
そこにひざがはまると生地が折れて、
よけいにO脚が目立ってしまうんですよ。
――
O脚が強調されてしまう?
大貫
そうなんです。
だから、ぼくはあえてセルビッジを使わず、
穿いたときにシルエットがきれいに出るようにしています。
体の断面写真を撮影するMRIのようなテクニックを使って、
体のどこが出ていて、どこが引っこんでいるかという
データをきちんと取って、
それに基づいてパターンを引いているんですよ。
――
なんと、そこまでするなんて。
そんなジーンズ、聞いたことありません。
大貫
それによって、ストレスなく体のラインに沿う
シルエットがうまれるんじゃないかという考えです。
――
なるほど。
大貫
ウエストはしっかり合わせて、
腰骨が当たるところや、おしりの下のラインがくるところは
ゆとりをもたせています。
とくに女性は、おしりや腰まわりが
パツンパツンになるのをいやがるので。
そして、ひざに角があるとO脚に見えてしまうので、
両サイドから締めつつ、ももあたりに角をつくって、
そこからすとんと落ちるシルエットにしています。
――
丈はふつうのジーンズより短かい?
大貫
はい、丈が穿く人の脚の長さに合っていないと、
せっかくのシルエットがくずれてしまうので、
かたちをキープするために、あえて短めに設定しています。

ヴィンテージライクな個性はウエストにあり。

――
ヴィンテージ・デニムの象徴であるセルビッジを捨てても、
穿いたときのシルエットをよくするというのは、
いままでなかった発想じゃないでしょうか。
大貫
そうですね、でも、ヴィンテージらしさを
ぜんぶ捨てているわけじゃないんです。
ヴィンテージのムードはありつつ、
シルエットを追求しているところがキモかなと思います。
――
どのあたりにヴィンテージのムードが
あらわれているんでしょう?
大貫
いちばんは、ウエストを切りっぱなしたような
デザインにしているところです。
一般的なジーンズのウエストには
生地の切り替えがあるんですが、それをなくしています。
――
見た目がすっきりしていますね。
ヴィンテージにこういうディテールがあるんですか?
大貫
実はデニムウエアは、1800年代には
オーバーオールしかなかったんです。
当時は胸当てのことを「ビブ」といって、
「ビブオーバーオール」と呼ばれていたものを、
労働者たちが着ていました。
でも、あるとき体が腫れてむくんでしまう伝染病が流行り、
ビブの部分が着脱の際に体に当たって痛かったようで、
ビブをばっさり切って穿いていたらしいんです。
腰から切っていたので「ウエストオーバーオール」という
名称で呼んでいたという説があって、
その印象にしているんです。
――
ブランド名はそのことに由来しているんですね。
大貫
もともと「WAIST」なのを「WEST」にしていて、
つづりはちがうんですけどね。
デニムの発祥が西洋と言われてるのでそれをかけています。
――
ウエストの裏がわにゴムバンドがつけられているのも
ユニークです。
大貫
これは50年代にあった、
ゴムが入ったマーベルトがヒントになっています。
伸縮性があるぶんフィット感もよくなりますし、
シャツをタックインしたときに
引っかかりができて裾が出にくくなったり、
ウエストにフィットしている部分の蒸れや
摩擦によるインディゴ染料の移染を防ぐなど、
実際に着るときにも利点があります。
――
ウエストを締めてくれるから、
シルエットにも一役買っているわけですね。

気づいたら手にとって、穿いてもらえる存在でいたい

――
そういうヴィンテージライクな要素が入っているとはいえ、
必ずといっていいほどついている革パッチがないですし、
バックポケットにはステッチも入っていませんし、
タブも控えめです。
個性をアピールするとしたら、
いちばんのしどころだと思うんですが、
なぜそうしないんでしょう?
大貫
ウエストの切り替えがないところで
じゅうぶんに個性があるので、
これ以上必要ないかなと思うのが1つです。
――
ああ、ひと目見ればわかると。
大貫
あとはやっぱり、
長く穿いてもらいたいという気持ちがあって、
そのためには、なるべく表面上は
クセがないほうがいいと思うんです。
流行に流されず、とりあえずこれは持っておこうと
思ってもらえたらうれしいので。
だから、べつに1番でなくていいんです。
2番手、3番手で、気づいたら手にとって、
穿いてもらえる存在でいたいです。
――
それはまさに〈O2〉のコンセプトと同じです。
大貫
あ、たしかに。
ジーンズっていまやだれもが穿くもので特別感もないけど、
でも、なんだかんだ言って、やっぱり穿くじゃないですか、
そのときに無意識にえらばれるものになっていけたら
いいなと思ってつくっています。
――
あのね、ほぼ日の乗組員が
お姉さんといっしょに買い物に行ったとき、
知らないあいだにお姉さんが
ウエストオーバーオールズのジーンズを試着して、
買っていたらしいんです。
大貫
わぁ、うれしいです。
まさに無意識にえらんでくださったんですね。
――
穿いたときに「いままでのジーンズとちがう」って、
きっと感じてもらえたんじゃないでしょうか。

たくさんの人に穿いてもらいたいから、バクチを打った

――
ヴィンテージへの造詣も深い達正さんですから、
いい生地を使って、仕立てもいいわけですよね。
でも値段が意外に安いじゃないですか。
大貫
この値段は、もう絶対なんです。
――
絶対なんだ。
大貫
はい、絶対です。
――
そこのところをちょっと教えてもらえますか。
まず、なんでそんな値段でやれてるんでしょう。
大貫
これはね、もうさいしょから、
こういう値段でこういうジーパンをつくりたいんだと、
工場さんと話をしたんです。
そうすると、すくなくとも何千本単位じゃないと、
できないよって話だったわけです。
――
その値段でやるには。
大貫
はい。
それに対してOKを出しただけです。
――
バクチを打った。
大貫
たとえ売れなくて在庫の山になったとしても、
その本数はつくってやろうと思って。
――
どうしてもその値段にしたかったのは、
たくさんの人に穿いてほしかったから?
大貫
そうです、もうほんとうにそうで。
たとえばブランドでいったらリーバイスとか、
ノースフェイスとかもそうですけど、
だれもが知ってて、それこそちっちゃい子から大人まで、
ファッション感度に関係なく買うわけじゃないですか。
そういうものであってほしい、
そういうブランドにできたらいいなと思っています。
――
巷での評判ぶりを見ると、達正さんのバクチ、
みごとに当たった気がします。
きょうはどうもありがとうございました!

(おわりです)

TOBICHI限定で販売いたします。

今回〈O2〉で紹介する
ウエストオーバーオールズのジーンズは、
まずはみなさんへの紹介がてら、
ほぼ日の催しものスペース「TOBICHI②」で
限定販売させていただくことになりました。
わたしたちがほんとうにいいと思っている、
おすすめのジーンズですので、
お越しになれるかたは、ぜひためしてみてください。

WESTOVERALLS 体験+即売会

2019 5/21 TUE → 5/26 SUN
TOBICHI②
東京都港区南青山4-28-26地図 >
03 6427 5800
OPEN 11:00 - 19:00

このイベントについてくわしく >

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