名脇役をめざすブランド tsuki.s 気がついたら、 「これ、すごく着てたな」っていう、 そんな感じになれたら。

《2019年春夏の〈O2〉はこんな感じです》

「tsuki.s(ツキドットエス)」は、
もともとニットのエキスパートだった
デザイナー末永津喜子さんが、
2011年に立ち上げたブランドです。
つくっているのは、じょうぶで使いやすくて飽きない、
まさに新定番なアイテムばかり。
きっとみなさんに気に入っていただけると思います。
この春〈O2〉であつかわせていただくアイテムについて、
末永さんにご紹介いただきました。

末永 津喜子(すえなが つきこ)

糸会社にて編物講師,ニットテキストのデザインを経て、
大手アパレルのニットデザイナーとなる。
2011年に自身のブランド tsuki.s を立ち上げ
現在にいたる。

いろんな役ができる「脇役」がいい

――
ツキドットエスとの出会いからお話しますと、
ぼくがよく行くセレクトショップにいつも置いてあって、
ときどきカットソーを買わせていただいてたんです。
目がしっかりつまっていて、洗濯してもくたびれないし、
型くずれもしないので、これはいいなぁと思っていました。
末永
ありがとうございます。
――
拝見していると、ベーシックなアイテムが多いですよね。
末永
はい、シンプルで着やすいことを心がけています。
立ち位置としては、主役にならないで、
コーディネートの一部であってほしい。
ほかのアイテムと合わせやすくて、
でも気がついたら「これ、今年すごく着てたな」っていう、
そんな感じになればいいと思っています。
――
ああ、なるほど。
末永
だから、脇役でいいと思う。
「いつもいい演技するよね、あの人」くらいの感じで。
――
それで息も長くて。
末永
そうそう。
「けっこう、いろんな役できるんだね」って。
やっぱり、着ていただけないと意味がないですから。
――
いま、すごく、実際つくられてるものと
合っている表現だなと思いました。
末永
でもそのためには、ただ演技してるわけではなく、
ベースには地味な何かがあるんですよね。
そんなに素晴らしいものじゃなくてもいいけれど、
体にやさしい、ストレスがない素材を、
見つけたり、使ったりするようには努力しています。
素材がしっくりこなかったら、あまり着ないですから。
いつでも脇役に入り込めるように準備しておく感じです。
――
日ごろから。
末永
そう、日ごろから。
――
つまり、名脇役をめざすブランドですね。
それって、すごくめずらしい気がします。
では、具体的なアイテムを紹介していきましょうか。

tsuki.s

レディス ビッグTシャツ

¥8,640(税込)

レディス ビッグTシャツ
――
これとおなじ生地のカットソーをぼくも持っていて、
冒頭で言ったように、洗ってもぜんぜんへこたれない、
風合いも変わらないっていう印象があります。
末永
洗いたて、気持ちいいですよね。
これはずっとやっている生地で、
ごく上質の綿コーマ糸を、度詰め(どづめ)にしています。
――
コーマ糸というのは、
ケバをとったり繊維の方向をそろえたりした糸でしたっけ。
末永
そうです。
とてもなめらかでソフトな糸を、
あえて、うんと目を詰めて編んでいます。
――
そういう糸を使っているから、
しっかりハリはあるけど、タッチがやわらかいんですね。
末永
はい、いい糸を使わないと、こうはならないです。
――
デザインについて聞きたいのですが、
レディスはけっこう丈が短い?
末永
そうですね、短くてワイドシルエットです。
あとは、袖巾を広めにしたり、首のくりを横長にしたり、
裾にスリットを入れたり。
メンズライクなTシャツを、
女性向けにチューニングしています。
――
袖が広いの、かわいいですね。
末永
やっぱり女性は腕を細く見せたいので。
――
ああ、そういう効果が。
末永
はい、あります。

tsuki.s

メンズポケットTシャツ

¥8,640(税込)

メンズポケットTシャツ
――
メンズはポケットつきです。
末永
ポケットはね、前の職場にいた先輩が言ってたんです。
「男性用のポケットはね、
タバコのケースが入るぐらいの大きさでいいの。
そのためのポケットなのよ」
って、理由があるんだかないんだか(笑)
――
あの、これ、タバコ‥‥。
末永
入らないですね(笑)。
――
入らないでよすね、これ。
末永
パスモ(PASMO)くらい?
――
パスモしか入らない(笑)
でも、この大きさ、かわいいですけどね。
末永
かわいいですよね。
わたしはもともと、トラディッショナルなものとか、
フレンチカジュアルとかが大好きなんです。
だからやっぱり、そのへんのテイストは入れときたい。
――
ちいさくても、ポケットはつけておきたい。
うん、いいと思います。

tsuki.s

ボーダー七分袖Tシャツ

¥11,880(税込)

ボーダー七分袖Tシャツ
――
つぎは七分袖のボーダーです。
末永
すごく細い糸を使っていて、
うすく、やわらかく仕上げています。
着ごこちも、やさしくて気持ちいいんですよ。
――
見るからに気持ちよさそう。
ボーダーの幅は、均等なんですね。
末永
いろいろやってきて、
これくらいがベストな幅だと思っています。
――
ここに行き着いたと。
末永
パリのリセエンヌじゃないですけれど、
ああいうちょっとかわいらしい感じ。
映画でいえばフランソワ・トリュフォーの
『突然炎のごとく』とか。
――
男女3人組がストライプを着てましたね。
じゃあ、ちょっとフレンチ風味が入っている?
末永
フレンチ風味、入ってます。
実際、フレンチストライプと名づけています。
――
おお、そうでしたか。
そういうかわいらしいボーダーの幅だけど、
このアイテムは、おとなが着られる感じですよね。
末永
素材がよくないと、そうならないですね。
――
あっ、そうか、なるほど。
襟もとの切り替えが両端で重なっているのも、
かわいいです。
首もとの写真:P2040313
末永
結局ボートネックってまっすぐなので、
こういうふうに端で被せてるんです。
そうしないと、カーブが急激すぎて波打っちゃう。
まあ、でも、こういう対処自体が
デザインとしてかわいいからやってるんですけど。
――
シンプルに見えて、いろいろポイントがあるなぁ。

tsuki.s

ボーダーフレンチTシャツ

¥10,800(税込)

ボーダーフレンチTシャツ
――
さきほど紹介したボーダーの、フレンチスリーブ版です。
末永
長らくやっているかたちで、ずっと人気があります。
夏、どんな格好がいちばん涼しいんだろうと考えると、
わたしたちとしては、これにパンツはけば
それでいいんじゃない? と思ってます。
腕はけっこう出るけれど、
意外とそんなにボーンって感じにはならない。
――
そうか、肩幅は広いですものね。
末永
そう、着たら袖が落ちてきます。
それがすごく華奢に見えるんですね。
女の人がいちばんきれいに見える感じです。
――
身幅は七分袖ボーダーより広いんですか。
末永
もうちょっとゆったりしています。
もう1つ、大事なこととして、
脇から下着とかが見えないようにしています。
――
なるほど、女性ならではの配慮ですね。
末永
身をもって体験したことを生かしていますから(笑)

tsuki.s

フレアワンピース

¥27,000(税込)

フレアワンピース
――
このワンピースは「ほぼ日」内でも好評で、
写真を見ただけで「買う!」って言った人もいます。
末永
うれしいですね。
これは、ちっちゃい人が着てもかわいい。
ぱっと見は大きそうに見えるんですけど、
着るとそんなにボリュームは出なくて、
落ち感がすごくきれいなんです。
そこそこ重さがあるぶん、きれいにドレープが出ます。
――
ハリがあるけど、しなやかな感じで、魅力ある素材ですね。
末永
なんかもう、布帛みたいですよね。
実際にはジャージなんですけど。
――
あっ、布帛じゃないんですか。
サテンとか、そんな感じに見えます。
末永
ね、ツヤもあるから、そう見えますよね。
――
すごく上品だけれども、ふだんから着られそう。
末永
そう、ちゃんとしてるというのか。
わたし、ちゃんとしてるのは好きですね。
きちっとしてる感じ。
――
それって、ツキドットエスのアイテムに
共通する特徴かもしれないです。
末永
夏はこれ1枚を着て、スニーカーか、
ちょっとオシャレしたいときにはミュールでもはいて、
つぎに紹介するカーディガンを持っていただければもう。
――
ああ、いいですね。
良家のお嬢さま風になる(笑)

tsuki.s

ニットカーディガン

¥31,320(税込)

ニットカーディガン
末永
ちょっとクレープというか、レースみたいな感じの
涼しげなカーディガンです。
――
エアコン対策もふくめて、
夏のはおりものとして、ちょうどよさそう。
末永
はい、かるくてかさばらないので、
持ち歩いていれば、なにかと役立ちます。
――
このアイテムならではのことって、何かありますか?
末永
これは工場にたのんで、部分的に手仕事のような
技法をつかって編んでもらっています。
それでこういう一体化したポケットとか、
袖口のスリットとかを、つくれるんです。
ポケットの寄りカット
袖口のスリットの寄りカット
――
そういう方法じゃないと編めないんですね。
末永
そうなんです。
あとはこのうすくて、はかなげな貝ボタン。
ピカピカさせたくて、いちばん光るのにしました。
――
あえて光らせることで、
アクセントになっているわけですね。

tsuki.s

スリーブレストップ

¥10,800(税込)

スリーブレストップ
末永
これはもう、夏の最終章、という感じ。
――
最終章???
末永
マックス暑いときに着る。
――
ああ、そういうことか。
末永
生地にシャリ感があるので、
体にくっつかなくて、とにかく涼しいんです。
出張とか行くと、もうほんとにこればっかりですね。
――
へえ、それほどに。
末永
夜ホテルの部屋でお洗濯しててハンガーにかけておくと、
朝には乾いてるので、すごく重宝します。
――
かたちは、どんな感じでしょう。
末永
あんまり胸もとや肩を出しすぎずに、
1枚でも着られるようにしています。
――
あまり張り切りすぎてない感じ。
末永
ええ、上品な感じにしています。

tsuki.s

タックパンツ

¥28,080(税込)

タックパンツ
――
さいごはパンツになります。
末永
後ろにゴムを入れてある、
ワンサイズでラクに穿けるパンツです。
ほんとは前もゴムを入れれば、ゴムだけですむんですけど、
やっぱりボタンがついていて、
パンツの顔になってるほうがいいかなと思って。
――
「ちゃんとしてる感」がほしい。
末永
そうですね。
素材もストレッチするので、
その点でもまったくストレスなく穿けると思います。
――
旅行とかにすごくよさそうな気が。
末永
機内オッケーみたいなパンツですよね。
しかも、それほどらくちんなのに、
見ためはシュッとしてるっていう。
――
これ、なんか名作な気がします。

出ていく商品に「さよなら」を言う

――
末永さんとお話していると、1つ1つの商品に
愛着を持っていらっしゃる感じがします。
末永
前にいた職場の先輩にもよく言われました。
「ツキちゃんは商品が出ていくときに、さよならを言うね」
って。
――
どういう意味合いなんでしょう。
末永
「かわいがってもらうんだよ」
っていう気持ちがあらわれるんでしょう。
嫁に出すじゃないけれど、
だれか知らない人の引き出しに入るわけですから。
――
そうか、さよならを言うっていうの、いいですね。
やっぱり、つくったものへの愛着が、
とてもあるかただと思いました。
きょうはありがとうございました!

(おわりです)

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