- ――
- 春から夏への移り変わりの時期って
すごく暑い日があったり、
急な雨に降られたりが多いように感じて、
そのためのレインコートや傘は持っているんですが、
足元が意外とおろそかになっていないかなって。
- 立石
- レインコートと防水靴を身に着けていても
パンツに雨水が染みてきてしまいますよね。
- ――
- そうなんです。
ゲリラ豪雨に遭った日なんかは、
裾がびしょびしょになったりして。
そこで、
雨用のパンツをつくろうと思い立って
登山用のゴアテックス素材のパンツなど
防水性に優れているものをいろいろ試したんですが、
一日中穿いていると蒸れたり、
肌触りもゴワゴワして気になったりして、
帯に短し、たすきに長しというか…。
せっかくなら、
晴天でも穿きたいものになるといいなと思っていたときに
サウザンドマイルのワンピースに出合って。
さらっとした肌触りで真夏でも快適でいられるし、
雨をはじくし、「見つけた!」って。
- 久保田
- ワンピースからだったのですね。
うれしいです。
- ――
- 「ほぼ日」ではサウザンドマイルは
はじめまして、となりますので
どんなブランドなのか、お聞かせいただけますか?
- 久保田
- 1993年にアメリカとメキシコの国境近くにある
サンディエゴという都市で生まれたブランドです。
創業者のクリス・フーバーさんはもともとライフセーバーで、
「人生は旅である」という考えを持った方だったんです。
旅とはいっても、旅行やキャンプだけでなく、
友人と集まって散歩したりバーベキューしたりすることも
広義で旅であるととらえていて。
- ――
- 日常のちょっとした移動も旅であると。
- 久保田
- そうです。
テントを張ってキャンプせずとも
河原でバーベキューするだけでもアウトドアだと思うんです。
ブランド名は「1000マイルを旅する」という意味ですが、
人生を歩んでいくうえで
伴走できるような服づくりを目ざしています。
ガチガチな登山用というよりは、
その人の生活になじむような服。
- ――
- 本格的な機能服は日常では
ちょっと持て余してしまう感じもありますものね。
- 久保田
- はい。
なので、コンビニも行けるし、バーベキューも楽しめるし、
なんだったらキャンプも乗り切れるような
服を求めていました。
- ――
- バーベキューやキャンプでは煙のにおいがつきそうだし、
よそいきを着るわけにもいかないし、
本気のアウトドア服だと気負いすぎるし…。
- 久保田
- まさにそうです。
そんなときにちょうどいい素材が世の中になくて、
自分たちでイチからつくろうと思ったんです。
- ――
- それでできあがったのがこの生地なんですね。
- 久保田
- ナイロンにポリウレタンが入った素材に、
撥水加工をほどこしています。
ナイロンの軽さ、速乾性、
ポリウレタンの伸縮性、
水をはじく撥水性が特徴です。
肌触りもゴワゴワせず、さらさらですし、
UVカットもついています。
- ――
- いいことづくめですね。
言葉だけ聞くとよくある機能系なのかなって思うのですが、
化学繊維でよくある
ギラギラツヤツヤしたものが抑えられていて、
和紙のようなマットな表情がありますね。
- 久保田
- ナイロン自体こういう質感なんですが、
きれいに見えて、
ふだん使いしやすいものとして、うってつけです。
しかも、イージーケアというのが
ご好評いただいている要因かと。
- ――
- たしかに、
機能系のウェアってどうやって洗うかいつも悩みます。
- 久保田
- これは洗濯機で洗っていただいて大丈夫ですよ。
ただ、洗えば洗うほど撥水効果は
どうしてもうすれてきてしまいます。
15回洗ったらかなりうすれてしまいますが、
一般的に出まわっている撥水の製品と同等です。
完全防水ではないので、そこは留意いただけたら。
- 立石
- 毎回洗わなくてもいいと思うんですよね。
撥水加工がついていることで
泥がついてもサッと拭けば落ちますし、
汚れがつきにくいメリットもあります。
- ――
- それはうれしいですね!
雨の日にうっかり水たまりにはまって
泥はねがついちゃった、って焦ることもなさそう。
- 立石
- 私なんか子供とサッカーやるときに着るし、
泥がついてもまったく気にしてません(笑)
- ――
- 濡れてもすぐ乾くし、軽いし、小さくたためるし、
旅行に持っていきたくなりました。
たたんでおいたものを広げると
最初はシワがついているんですが、
しばらく置いておけば自然にシワが消えていましたし。
- 久保田
- ポリウレタンが伸縮性のある繊維で
戻ろうとする弾性があるので、
時間がたつとシワがうすくなるのかもしれないですね。
- ――
- 着ていて、あれ?と気づいたのが、
衣ずれの音があまりしないこと。
こういう服って、歩くたびにシャカシャカと
耳につくこともあるんですが、
これは比較的静かだなぁって。
- 久保田
- 素材がやわらかいので
音があまり立たないかもしれないですね。
摩擦にも強いので、すれて毛羽立ったりもしません。
- ――
- たくさんいいところがありますね。
化学繊維のよさを最大限引き出しているというか。
- 久保田
- 撥水性や軽さ、値段など、
この部分が突出して優れています、
というわけではないんですが、
日常生活で何がいちばん使いやすいかを考え抜いて、
最適なバランスに落とし込んだ生地になります。
- ――
- オリンピックで金メダルをとるような選手ではないけど、
なんでもスポーツをこなせちゃう
運動神経が優れている人みたいな。
- 久保田
- そうですね(笑)
- ――
- 一番手ではないし控えめだけど実力がある、
まさに〈O2〉にぴったりの生地です。
その生地を使って、グランマ ママ ドーターの宇和川さんに
パンツをデザインしていただきました。
- 立石
- ツータックのトラウザータイプで上品ですよね。
クラシックなかたちで機能素材というのは
ほかにないように思います。
- ――
- 晴れの日も雨の日もうれしいこのパンツ、
ぜひみなさんにはいてみていただきたいと思っています。
- 宇和川
- 素材が軽いので、ゆったりしたシルエットにしても
かっこいい感じになるんじゃないかと思って
前に2タックを入れてワイドなかたちにしました。
結果、スタイリッシュでモード系のようにも見える
パンツになりましたね。
- ワイドパンツは裾にむかって
ぼわんと広がっていくんですけど、
裾にダーツを入れることで
バルーンシルエットというほど極端でもなく、
いい具合にまあるいふくらみをもたせることができました。
生地そのもののやわらかさと相まって、
いい感じのシルエットに仕上がったかなと思います。
- ウエストには背面だけゴムを入れています。
雨の中を歩いてきて
そのまま仕事できるようなパンツということを考えると、
全面ゴムだとちょっとルーズかなぁと。
前だけでもシャキッとしているだけでかっこよく見えるので、
ゴムは後ろ側だけに入れました。
- 裾の丈感にもこだわっています。
裾直しをしなくてもいい長さだけど、
フルレングスっぽくも見せられる絶妙な丈に。
- 足首が見えすぎることもないので、
アンクル丈くらいの雨用ブーツを履いていれば
雨や泥はねをガードできますし、
逆にちょっと丈をのばしたいなっていうときは、
ゴムでウエストの位置を調整するだけ。
これひとつ持っておくときっと重宝します。
わたしもほしいです!
セレクトショップの店長、バイヤーを皮切りに、
海外ブランド向け素材の企画・プロデュース、
アパレルブランド製品の企画・生産などの業務を経て、
2010年、
自身のブランド GRANDMA MAMA DAUGHTER を設立。
祖母から母へ、娘へと受け継がれていく
洋服作りをコンセプトに、
ユーザー目線を反映したゆきとどいた製品づくりで
人気を博している。
〈O2〉× F/ACSION の新色も登場します。
「ずっと雨を考えてきた」そう語る、
株式会社前垣さんがファッションをベースに作ったブランド
「F/ACSION(ファクション)」の2つのレインコート。
今年も〈O2〉の別注色で、つくっていただきました。
光の加減で表情が変わる絶妙なチャコール。
晴れた日もスプリングコートとして
楽しむことができてしまうような一枚。
大きめサイズを羽織ってみても、
すっと馴染んでサマになるのもうれしいコートです。
明るめのオリーブでつくりました。
ハリのある生地も手伝って、
軽やかな春のジャケットのような佇まいです。
デザインのポイントにもなっているフードは
雨風のなかで頼もしいだけでなく、
ファスナーで襟にしまうこともできる優れもの。
どちらのデザインも、
「街着」としてふさわしいように
高い耐水性はもちろん、透湿性も大切に考えられていて、
耐水性が30,000mm、透湿性は40,000g/㎡/24hr 。
これは、本格的なアウトドア製品、
たとえば登山用のウェアにも
備わっているような数値です。
たしかな技術で防水を徹底しながらも、
晴れた日に羽織ってもまるで違和感のない
不思議なレインコートです。