第3回うつろう色は、生きている色。
藍(広重)
広重
染料:藍、白樫、玉ねぎ
日本には、たとえば1000年前の布が、
確かに残っていて、見ることができます。
今、染めをやってる僕は、
「そこまでこの色残せるかな」って、思うんですよ。
昔の人がやってたことが、今できていないのかも、と。
100年もつかどうか、それも「どうだろう?」って思うくらいで。
もちろん、全部が真っ白になるってことは、
たぶん、ありえないんですけれど。
今、昔の色の再現をしているところは多いです。
たとえば奈良時代の布(きれ)から染料を抽出します。
でも、今見られる1000年前の布は、
すでに古びているわけで、
染めた当時のものではないですよね。
色がうつろう、変わっていくということですけれど、
その“限りがある”ところが大事な気がします。
消えること、変わることに意味があるというか。
藍の色はもつ、つまりあせにくい、
というイメージがあると思いますけれど、
それも保存方法によります。
実は、藍っていうのは――、
常に自分の藍を飛ばしてるんです。
光とか、水とか摩擦とかで、こぼれ落ちていく。
飛ばしがちな体質なんです。
「藍は藍でくるめ」と言います。
藍で染めた反物であったり、布というものは、
藍の風呂敷でくるむと、色があんまり変化しません。
藍同士が飛ばし合ってるから、もちが長いんです。
藍の風呂敷に藍のものが入ってるっていうのは
当然のことなのです。
昔の人の知恵ですよね。
それだけ、藍という染料が貴重だった。
そして高価でもあった。
その貴重で高価なものを、
なんとか少ない素材から、たくさんの染料を抽出しよう、
きれいに染められるようにと薬品が開発されて、
できたのが、化学染料、だと思います。
貴重な染料であるからこそ開発されたんですね。
少ない染料で何とか使えるものにしたいっていう、
願いがこもったのが、薬品。
動機はやっぱり“善”から始まってる。
もっと手軽にもっと濃く‥‥。
それは藍に限ったことではなくて、
紫根(しこん)という、すごく貴重な、
紫を出してくれる染料があるんですけど、
僕らが一生懸命、手で揉んだり足で踏んだり、
昔ながらのやり方をでやってるものと、
化学的に抽出して染めたものには、
色の差は、確かにあります。
“うつろわない”んですよね。
化学系でやると、色がうつろわない、
生きてる感じがしないんです。
自分のところでやってるからこそですけど、
うちの色は、逃げやすいけれども、
そのぶん、顔というか表情もあって、
やっぱりそのほうが僕は好きだなと思うから、
僕個人としては、化学に手を出そうとは思わないですね。
やり方として、化学がいけないとは思ってないんですけども、
何かしらやっぱり、自分が素直に喜べない。
限りのあるもの、壊れやすいもの、
それを大事にしなくちゃ、と思える瞬間は、
“うつろい”が、“限り”が、あるかどうか、
そういうところにある気がしていて。
永遠じゃない、ということ。
一方で、僕らは命をもらってるということがあります。
植物を、殺して、生かしてる。
だからそのぶん、自分の命を削れるかっていうのが、
とても大事。
命を削れるものと出会ってるかどうか……かな
と思いますね。
そこにある、命のやり取りということが、
アトリエシムラのテーマとしてあるんです。
やり取りをしてるかどうか、
そこまで真剣になれてるかどうかっていうのは、
やっぱり、命削らないとわからない部分ってあると思うんですよね。
販売時期
2017年10月13日(金)午前11時より、
「ほぼ日ストア」(ネットショップ)で販売開始。
売り切れ次第販売を終了します。
販売方法と出荷時期
数量限定販売です。
お申し込みから
1~3営業日以内に出荷いたします。
「第2回 生活のたのしみ展」に
atelier shimuraが出展します。
2017年11月15日(水)から19日(日)、
ストールの試着や機織り体験ができます。
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STAFF
モデル:KIKI / 撮影(モデル):菅原一剛 / 写真(取材):神ノ川智早 /
スタイリング:轟木節子 / ヘアメイク:草場妙子