第2回今、ここでしか出せない色。
玉ねぎと刈安、野人参(鶯茶、薄香、芥子、若草、花山吹)
鶯茶(うぐいすちゃ)
薄香(うすこう)
芥子(からし)
染料:玉葱
「鶯茶」「薄香」「芥子」は、玉ねぎで染めました。
アトリエシムラで使っている玉ねぎって、
淡路産の立派なものを、
縁あって分けていただいてるんです、皮ばっかり。
収穫のシーズンが違うと色が違うんですよ。
冬越えのものと、春から夏のものとで、
品種も違うんですけれど、色がガラッと変わる。
今回は、春から夏のものを使いました。
冬越えの玉ねぎの色も、元気は元気なんですけども、
もう少し色が――こもりながら光るというか。
そっちはそっちでまた渋くていい色なんですけれども、
今回は、春から夏に収穫されたものを使いましたから、
外向きにぱぁっと弾けるように、
明るくなってくれました。
とってもいい色です。
基本的に玉ねぎって、万能というか、
染色をする者にとってはすごくありがたくて、
いろんな色を持ってくれていて、
媒染剤によって、
すごく色味が変わってくれるところが
魅力でもあるんですね。
植物の色って、逃げたがるんですよ。
それを、鉱物の力を借りて、
「ここに留まって」とお願いする。
それが、鉄や明礬(ミョウバン)、
石灰などを使ってする、媒染です。
玉ねぎに明礬を使うと、しっとりとした黄色みが出ます。
でも、ただただ黄色いんじゃなくて、
どこか大地のような。
そういう深いところが魅力的な色だなと、
僕はいつも思ってます。
色は、媒染剤と、植物との結びつきで生まれます。
どちらの力も欠かせない。
鉄には、植物の背後にある特性をフルに活かす、
そんな力があります。
今回の「鶯茶(うぐいすちゃ)」の場合は、
ただ媒染剤の鉄の力を借りるというより、
鉄の力を借りたあとに、
玉ねぎの力ももう1回借りよう‥‥
そういう染め方をしてるんです。
自然に出てきてくれるものを、
さらに出るように染めをしてます。
これを何色っていうかが、むずかしいですよね。
種類としては灰色の何かという感じ。
ちょっと灰色っぽくないんですけど。
これをカーキって言っても、
灰色って言ってもおかしくないですよね。
そして、室内と、自然光の下では、
また全然違う雰囲気になるんです。
見たときの環境で決まるところが大きい。
どうしても、僕ら子どものときから、
絵の具や色鉛筆のように「この色は、○色」って
決められていたもので過ごしてきたので、
その考え方に、はめたがっちゃうんですよね。
絵の具の中にその色がないので、
昔の日本の人はそういう違いにすべて名前をつけて、
すごい量の色の名前になっちゃうんですけど。
草木で染めた色の確定と言いますか、
これがどういう色かっていうのは、
それを持った人、見た人しか決められない。
だから、ワークショップに来た方には、
「染めた色が何色か決められなかったら、
自分でつけたらいいんですよ」と言ってます。
名前をつけるって、やっぱりその「もの」を
大事にするっていうことなんですよね。
若草(わかくさ)
染料:藍、刈安、烏野豌豆
草木の染液から直接、
緑色を染めることはできません。
緑色の草木から、緑色が染まらないって、
不思議に思えませんか?
この「若草」の深い緑は、刈安と藍をかけたものです。
刈安は、ススキによく似た秋の植物で、
黄色の染料ですね。
刈安には、特別な媒染剤をつかうんです。
椿灰汁(つばきあく)というもので、
透明感のある液なんですけれど、
刈安に使うと、すっごく光るんですよ。
刈安の黄色は、月の光のような、
内向きに光るような色です。
ちょっと青みがかかってると言いますかね。
それと藍をかけたものなので、沈むような緑だと思います。
そして沈むような緑に呼応するように入っている
新緑の明るい緑色は烏野豌豆(カラスノエンドウ)です。
春先に刈って、水の中に入れて炊き出したものです。
花山吹(縞)
花山吹(縞格子)
染料:野人参、夜叉五倍子
「花山吹」に使った黄色は、野人参(ノニンジン)です。
葉っぱがニンジンの葉っぱに似てるんですよ。
野人参の黄色は鮮やかです。
この野人参は、工房近くのお庭から。
いつもお邪魔して、草を採らせてもらってるんですよ。
そこでたまたま見つけました。
やたら元気に生えてたんで、ちょっと思いつきで
染めてみたらこうなったんですよね。
思った以上に、元気ハツラツだったっていう。
これも出会いなんですね。
だから、ほかのところの野人参で
こういう色が出ますか? と聞かれたら
ちょっとわからないです。
そういうところがあるんですよね、植物染料って。
販売時期
2017年10月13日(金)午前11時より、
「ほぼ日ストア」(ネットショップ)で販売開始。
売り切れ次第販売を終了します。
販売方法と出荷時期
数量限定販売です。
お申し込みから
1~3営業日以内に出荷いたします。
「第2回 生活のたのしみ展」に
atelier shimuraが出展します。
2017年11月15日(水)から19日(日)、
ストールの試着や機織り体験ができます。
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STAFF
モデル:KIKI / 撮影(モデル):菅原一剛 / 写真(取材):神ノ川智早 /
スタイリング:轟木節子 / ヘアメイク:草場妙子