野の花や気象など自然をモチーフにした
オブジェやアクセサリーをつくっている
中村なづきさんのブランド
Nakamura NazukiとCaccoがコラボ。
Kanocoさんが考えた架空の植物を
中村さんが、ひとつひとつかたちにしました。
名前は「想花(そうか)」です。
できあがったのは、左右で大きさがちがう、
凛とした雰囲気の
silver925のイヤリングとピアス。
中村なづきさんの、
アクセサリー作家としての
デビュー秘話や、制作のこと、
そして、「想花(そうか)」が
できるまでのことなどを、
ご自宅兼、アトリエでお話をうかがいました。
Cacco
Kanoco × Hobonichi
たくさんの工程と手仕事が、
花たちを作りだす。
- ――
- こういうアクセサリーって、
実際、どうやってつくるんですか?
- 中村
- アクセサリーの作り方っていろいろあるんですけれど、
これは「ロストワックス技法」という方法です。
まず、ワックス(ロウ)でかたちを作ります。
過程としては、原型より前の、いちばん最初ですね。
はさみでとか糸鋸で切ってから、
スパチュラで形を作ったり、
熱を加えたりしながら細工していくんです。
- ――
- これがスタートなんですね。
- 中村
- この原型を石膏で固めて、
中のワックスを溶かして空洞にします。
ワックスをなくす(ロスト)、
だからロストワックスなんです。
石膏の型に今度は銀を流し込んで、
原型を作ります。
それをもとに、今度はゴムで型を作る。
- で、またこれの繰り返しなんですけど、
ゴム型に溶かしたワックスを流し込んで型をとって、
同じように石膏で固めて、金属を流してっていうので、
量産ができるようになります。
鋳造っていう金属を流し込む作業は、
どうしても規模が大きくなるから、
それは、工場に、職人さんにお願いしています。
ざっくりとした流れはそんな感じなんですけれど、
その過程で、全体のかたちを整えたり、
細かいところを修正したり、っていう作業もあります。
それで最後、上がってきたものにヤスリをかけたり、
いろんな道具や薬品なんかも使って仕上げるんです。
- ――
- うわぁ。
最初から最後まで、細かい手仕事がたくさん。
- 中村
- そうですね。
工場から届いたものは、ざらざらしてたり、
表面に膜みたいなものがあったりするので、
そういうところを削ったり、磨いたり。
例えば、火にかけて希硫酸に入れると、真っ白になって、
その後に、重曹でちょっと上を磨くんですね。
そのときに磨きすぎるとツヤが出過ぎるし、
マットすぎても雰囲気があんまり出ないので、
そのへんは、加減して仕上げています。
- この、球体の部分なんかは凹凸があるので、
てっぺんにはツヤが出て、奥の方はマットっぽく、
っていうふうなニュアンスが出るんですよね。
これはシルバーのおもしろいところなんです。
- ――
- それをひとつひとつやっていくわけですね。
もう、ほぼ1点ものじゃないですか。
- 中村
- 型は一緒ですけど、多少は個体差が出ますね。
一応、1個1個、私が手を加えていますから。
- ――
- 最後の最後まで人の手が加わって出来上がる。
型から外して「はいどうぞ」じゃないんですよね。
- 中村
- そうなんですよね。
- ――
- ピアスとイヤリング、それぞれのパーツも手作業で。
1つ1つつけてくださったっていうことですよね。
- 中村
- はい、バーナーを使ってロウ付けしています。
そのあと重曹で、1個1個磨くような仕上げを。
重層ってアルカリ性だから、
手がもうカッサカサになるんですよね。
だからハンドクリームを
いっぱい塗りながらやりました(笑)
- ――
- うわー!
ありがとうございます!
このゴムの型も、ずいぶん細かいですね。
- 中村
- 花びらが重なってるところなんかは、
型をはずすのがすごく大変だったりします。
こういうのを作りたい、って工場に相談すると、
なづきさんがまた、めんどくさいこと言い始めた、
って言われます(笑)。
- ――
- ああー。また来たぞ、ってね。
- 中村
- ものによっては、
ゴム型を作るのも大変なんですけど、
ゴム型からワックスを出すのも大変だったりで、
これまでいろんなところで断られたんです。
でも、今お願いしてるところが、
「やってやる」みたいなチャレンジをしてくださって。
あちらも、ワックスをもっと取りやすくするために、
お金いらないから、もう1回ゴム切らせてくれない?
なんて言っていただけたりもするんです。
- ――
- 職人魂に火をつけたんですね(笑)。
- 中村
- 毎回新しいものを作るたびに、
嫌な顔はしないけど、結構大変なんですよね、
なづきさん、また、やりましたね、
みたいに言われます(笑)。
- 私も、細かい原型を作るときは、
うわー、ってなったり、あー失敗した、
はい、やり直しみたいなことは何回もあります。
出来上がった時は、勝負に勝った!みたいな感じですね。
いつのまにか、
植物がモチーフになっていった。
- ――
- なづきさんの作るものって、
植物がモチーフという印象がりますが…
- 中村
- よく聞かれるんですけど、あんまり理由がなくて。
気がついたら、っていう感じなんですよね。
思い出してみると、学校で、
いちばん最初の技法の自由課題のときに、
私、アジサイを作ったんですね。
その次にはハスノミをやってたり。
いつのまにか、植物のアクセサリーを作ってる人、
みたいな感じになっちゃったところもあります。
なんとなく気をつけてることは、
植物とちがうものを作ろうとするときでも、
軸みたいなところからブレるのは怖いなと思って。
じゃあ何が軸だって言われると
ちょっと曖昧ではあるんですけれど。
「なづきさんっぽいよね」って言われるような
そういうシーンに収まるように、
ずれないように、って心がけてはいます。
- ――
- 植物がモチーフのものの中に、
ススキとか、ナズナとかがありますよね。
これ、ちょっとめずらしい。
- 中村
- そうですね。
10金のシリーズで、Weedsってしたんですけど、
雑草、野草っていう意味です。
だからモチーフも、ヤブラン、ワレモコウ、オオバコとか。
これも、あんまり深くは考えてないんですけれど、
でも名前のゴロというか、響きはなんとなく気にしますね。
- 私自身が、アクセサリーをつけるのが好きなんです。
だからまず、こんなものを自分がつけたい、
こういうデザインで作りたい、が先にあって、
そのあとにモチーフになる植物を選ぶ、っていう
そういう順序のときもあります。
今、作りたいモチーフの名前だけ、
ノートに書き留めているんですけれど、
作りたいものがたくさんあるんですよ。
現実的には、新作に取りかかるには
なかなか時間がとれないんですけれど、
1年に1回くらい、1個か2個くらいは、
新しいモチーフを作っていきたいなと思って。
- ――
- これからの作品も、
私たちもすごく楽しみです。
ありがとうございました!
(おわります)
中村なづきさん展示会のお知らせ。
「 Nakamura Nazuki accessory fair」
Climate(気象現象)シリーズのほか、
鉱物シリーズ、そして新作の髪留めが展示されます。
ぜひ、この機会にご覧くださいませ。 2023年12月7日(木)~12月27日(水)
「CLASKA Gallery & shop "DO"」
渋谷ヒカリエShinQs店
東京都渋谷区渋谷2-21-1 4F
11:00~21:00
鉱物シリーズ、そして新作の髪留めが展示されます。
ぜひ、この機会にご覧くださいませ。 2023年12月7日(木)~12月27日(水)
「CLASKA Gallery & shop "DO"」
渋谷ヒカリエShinQs店
東京都渋谷区渋谷2-21-1 4F
11:00~21:00