みなさん、夏、どんなスタイルで寝てますか?
Tシャツにスウェット?
タンクトップにショーツ?
もしかしたら、はだか?
浴衣や甚兵衛さん、なんて人もいるかもしれません。
どの室温を気持ちいいと感じるか、汗かきかどうか、
体調や感じ方はひとそれぞれ。
空調をつけて寝る人もいれば、つけたら眠れない人もいるし、
そもそも住環境だってみんなちがう。
同じ部屋に寝る家族でも、
「眠りやすい夏のパジャマ」って、
なかなか正解を見つけにくいんだと思います。
でも‥‥やっぱりほしい、快適な夏のパジャマ。
ほどよく通気性があって、さらりとしていて、
汗冷えしにくくって、きゅうくつじゃない、
そんなパジャマが。
そこで、2018年の冬、
一緒にパジャマを作ってくれたNOWHAW(ノウハウ)に
もういちど、相談してみました。
あんなに快適な冬のパジャマがつくれるチームなら、
夏にきもちいいパジャマも、
いっしょに考えてくれるんじゃないかな、って。
結論から言うと、できました。
リラックスして夏の夜がすごせるパジャマが!
素材は、オリジナル生地のトリプルガーゼ、
コットン100%の素材です。
リゾートバケーションをイメージして、
休日に着たら楽しくなるようなデザインの
“island”(アイランド)、
静かでシンプルなデザイン
ワンピースタイプの“shhh sleeper”(シースリーパー)、
そして冬、とても好評だった
前・うしろ・おもて・うら
どの面で着てもOKなパジャマ“any”(エニィ)
の3つが登場です。
この予告編では、NOWHAWの十河さん、
そして生地づくりをしてくださった、
桑村繊維の井上さんと横田さんといっしょに、
今回のパジャマができるまでのこと、
ふりかえってみたいと思います。
ちょっと専門的な話もまじりますが、
プロフェッショナルの凄さが
お伝えできたらと思います。
- 左:十河幸太郎(とがわこうたろう)さん
- 右:十河美紀(とがわみき/チューソン)さん
寝ること・寛ぐことが好きな夫婦が営むパジャマメーカー。
パジャマによる
「新しく思いがけない驚きのある休日と世界」
を過ごす為のノウハウ
Know-how for passing
“New Odd Wonder Holiday And World” by pajamas
暮らしに潤いと、精神的・感覚的豊かさを与える
“インテリア(空間)” , “ファッション(スタイル)” , “アート(表現)”
の要素を “寝心地最優先”という信念のもと、
“パジャマ”に落とし込む取り組みです。
“インテリア(空間)”としての“パジャマ”
“ファッション(スタイル)”としての“パジャマ”
“アート(表現)としてのパジャマ”
- 左:井上浩孝(いのうえひろたか)さん
- 右:横田百恵(よこたももえ)さん
- ──
- 去年NOWHAWのみなさんと
冬のパジャマをつくらせていただいて、
そのとき、すでに、
「夏に気持ちいい素材のパジャマもつくりたい」
という話はしていたんですよね。
- 十河
- そうですね。
前回、寒い季節に向けた、気持ちよく暖かいパジャマを
「ほぼ日ハラマキ」のチームと一緒につくり、
今度は、暑い季節に涼しく心地よく着られるパジャマをつくろうと、
素材をどうしようって相談したとこから始まったんですよね。
いくつか生地をお見せしたなかで、
ほぼ日さんが、ふんわりとした柔らかさが特徴の
ガーゼ生地がいいなっていうことで気に入っていただいて。
- ──
- 一目ぼれでした。
ガーゼなら汗も吸ってくれそうだし、
なによりやさしい肌ざわりが魅力的でした。
- 十河
- そのガーゼ生地っていうのは、
甘撚りの糸を低密度な平織りにした、
通気性や吸湿性に富んだ生地でした。
さらに、生地の厚みだとか風合いに関して、
お互いに意見を出し合う中で、
「だったら、私たちの理想のガーゼ生地をつくろう」
っていうことになって。
ガーゼ生地って、薄くて低密度なので、
一重のシングルガーゼだと肌が透けてしまいますし、
毎日着る日用品としては耐久性も弱いので使えません。
そこで、2重のダブル、
もしくは3重のトリプルにする必要がありました。
- ──
- 生地は3重にすることによって、
肉厚感とやわらかさがでるんですよね。
- 十河
- 同じ厚みでも1枚の厚いガーゼ生地より、
薄いガーゼ生地3枚のほうが、
通気性もよくなるんです。
その中で、せっかく生地を重ねるんだから、
表・裏でデザインが違う生地にしようっていうような
お話になったんですよね。
- ──
- はい。そうすれば、前回も好評だった、
表と裏でちがう表情の布になる! って思いました。
前回は一重の布でしたが、
あや織りというデニム生地のような織り方をしていたので、
表地がネイビー、裏が杢のグレーの色だったんです。
- 十河
- その前回の生地の見え方をふまえて、
今回は、片面が涼しげな水色のストライプで
もう片面がライトグレーのもの、
もうひとつは、片面が鮮やかなオレンジ色のストライプで
もう片面が黄色のもの、
この2種類の生地にしようって決めて。
- 十河
- そうしてデザインが決まったところで、
僕たちNOWHAWが活動初期から
パジャマのための生地づくりでお世話になってる
桑村繊維の井上さん、横田さんにご相談しました。
前回の綿100%の両面起毛やナチュラルストレッチ加工という、
天然素材なんだけど少しストレッチがきくっていう生地も
井上さんのところで一緒につくらせていただいたんです。
- ──
- 前回のナチュラルストレッチ加工もびっくりしました。
- 十河
- そうなんです。
今回も、糸の色は横田さんにすぐに相談して。
糸を染めた見本がたくさんあるんですけど、
それを見せていただきながら、
パソコンでシミュレーションしていただいたり‥‥
横田さんとふたりで、「こういう感じじゃないか」っていうので、
なんども調整しましたね。
- 横田
- そうですね。色だしがかなり苦労しました。
- ──
- 最初は、蛍光色のストライプにしたかったんです。
でも蛍光色はどうしてもむつかしいということで、
できる範囲で鮮やかな色を目指しました。
でもその鮮やかさもなかなか出なくて‥‥
何度もご無理を言って試していただきましたね。
- 井上
- 蛍光色はどうしてもパジャマには向いてないんですよね。
色が落ちやすいんです。
パジャマでは洗濯回数がかなり多いものなので、
洗うほどに、だんだん色が薄くなります。
また、強い薬剤を使うので、生地の耐久性が悪くなります。
- 十河
- パジャマとして体感的ににいいものにしたかったので、
色落ちしづらく、耐久性のある先染めの糸でだせる色で
一番イメージに近いものを目指しました。
- ──
- あともうひとつ、
大変だったとお聞きしたことがあるのですが、
前回発売したパジャマで、any(エニィ)という、
前・後ろ・表・裏どの面でも着れるというモデルがありまして。
それを今回もやりたい! と思ったときに、
生地で表と裏が違う表情だと、
その良さが出るじゃないですか。
それで今回も無地の面とストライプの面で表現したのですが‥‥。
- 十河
- トリプルガーゼでそれを実現するのに、
けっこう苦労があったんです。
- 井上
- そうですね。
3枚のガーゼを1枚の生地として扱うために、
「とめ」というのが必要になるのですが‥‥
その「とめ」っていうのは、
ボンドでくっつけるわけではなく、糸でとめるので。
その糸が、どうしても目立つんですね。
たとえば今回のグレーの生地に白の糸でも、
どうしても点点々と出ちゃうっていうのを、
どう防ごうかって考えてて。
無地の面の糸色とまんなかの布、
ストライプの面の糸色とまんなかの布を
それぞれとめることによって、
表面的にはすごく自然な仕上がりにすることができました。
- ──
- なんと、こまやかな!
- 井上
- そして、これはお客さんからは
ぜんぜん見えないところなんですけど‥‥
じつはまんなかのガーゼも
うすくストライプをひいているんです。
- ──
- え?!
どうしてここにストライプを?
- 井上
- まんなかに無地のガーゼをはさむよりも、
たとえば、グレーの布のときは
ブルーストライプと同じ位置に
グレーのストライプをもってくることで
グレー側に反対側のストライプが透けにくいんです。
- ──
- これはすごいです!!
- 十河
- もちろんうすい生地なので
100%透けないっていうことはないんですけど、
その透ける影響をなるべく抑えようと、
いろいろアイディアを出してくださって。
おかげで、本当にいいものができましたよね。
- 井上
- 初めはもう、すっごい、どうしよう、どうしよう。
どうしたらできるんだろう、って思ってました。
- ──
- 桑村繊維さんでも初めてのことですか?
- 井上
- そう、やったことがないことだったんですよね。
おもて側で使う糸色を裏にも使うっていうのが、
基本的な両面リバーシブルの生地の接着方法なんです。
- 十河
- 今回の色と柄のちがう生地のくみあわせは、
新しいチャレンジだったんですよね。
そんななか、井上さんが突然
「ひらめいた!」と、言ってくださって。
僕が井上さんにすごく信頼をおけるのは、
僕らも「こんなことやってみたいんですけど」っていう話で、
井上さんにご相談しにいくわけです。
「どうやるかな」「どうやったらできるかな」って、
前例がないようなケースも多々ある中、
井上さんが今までの経験だとかを組み合わせながら、
なるべく理想に近いものを作ろうとしてくださる。
- ──
- 頼もしいですね。
- 十河
- 横田さんにしても井上さんにしても、
寝ることは日常の中にあるわけですよね。
その寝るときに身に着けるものって、どんな素材がいいのか、
お二人とも普段から意識していただいて。
これは寝心地が悪くなりそうだよねっていうものは、
お二人のところでもストップをかけていただけるので、
着る人みんなが寝心地のいいものを作ろうっていう思いで、
一緒にものづくりができてるなっていう実感はありますね。
(つづきます)