「ほぼ日ハラマキ」から生まれた
シルクのアイテム「faffwa(ファッフワ)」で
使用している絹には、いいことがいっぱいです。
身につけても洋服にひびかないほど薄いのに、
冬はじんわりあったかく、夏は蒸れずに快適。
保湿効果で素肌を守ってくれるし、
チクチク感もなければ、静電気も起きにくい。
しかも「faffwa」のアイテムであれば、
家庭用の洗濯機のおしゃれ着モードで
洗えてしまうぐらい手入れも楽ちんです。
うれしいことがいっぱい詰まったシルク糸、
「KOHARU」を開発した長谷川商店さんに
シルクの基本を教えていただきました。長谷川商店と「KOHARU」について >
- ほぼ日
- 「ほぼ日ハラマキ」は2001年に
登場してからはじめて、
シルクのアイテムが登場します。
私たちと一年をかけて作ってくださった
長谷川商店さんに、シルクの魅力について
改めてうかがいたくて愛知県にやってきました。
まずは、長谷川商店さんのお仕事について
簡単に教えていただけますか。
- 長谷川専務
- 長谷川商店は糸の商社からスタートした会社で、
海外からシルクの糸の輸入をして、
尾州や京都の機屋さんに、
生地糸の原糸の販売をしていたのがはじまりです。
その糸に付加価値をつけるために、
撚糸をした糸であるとか、染色をした糸の販売を、
シルクに特化してやってきました。
そしてここ10年ぐらい前から少しずつ、
撚糸や、ニットを社内でできるよう機械を入れて、
糸から最終製品まで一貫の工場でやっています。
- ほぼ日
- ほぼ日ハラマキからデビューする
「faffwa(ファッフワ)」の
シリーズで使わせていただいた
「KOHARU」という名前がついた糸は、
どんなシルクなのでしょうか。
- 長谷川専務
- 「KOHARU」に使われているのは、
短い繊維の「絹紡糸(けんぼうし)」を
加工した糸で、非常に細い繊維です。
シルクは光沢ばかりが注目されがちですけど、
ふっくらと温かいのも特徴なんですよね。
表面を毛羽立たせる加工をしたら、
さわった風合いがものすごくよくなったんです。
- ほぼ日
- ほんとうに初歩的なことから
教えていただきたいのですが、
「絹紡糸」というのは?
- 長谷川社長
- シルクが、蚕の繭(まゆ)から
できているのはご存知ですよね。
蚕が吐き出した繭は1本の細い糸でつながっていて、
1200mから1500mぐらいの長い糸を
サナギに巻きつけているんです。
その糸をめくっていって生糸を取るのですが、
蚕の表面の「キビソ」と
サナギに近い「ビス」の部分は
もともと捨てられていた部分なんです。
- ほぼ日
- ビニール紐みたいに、
1本の紐がグルグルに
巻かれているようなイメージですね。
- 長谷川社長
- そうです、そうです。
製糸工場で製糸されるときに、
絹織物に使われる生糸として製糸に使えない、
副産物にあたる「キビソ」「ビス」の部分が
絹紡糸の原料になるわけです。
- 長谷川専務
- 絹紡糸になる前の短繊維の綿を、
よかったらさわってみてください。
- ほぼ日
- あっ、すごいツヤツヤ!
しかも、すごくやわらかい!
- 長谷川専務
- 我々はこのやわらかさを知っていたので、
これをみなさんの手元に届けられないかって
ずっと試行錯誤してやってきました。
- ほぼ日
- ずっとさわっていたいぐらい、
気持ちいいです。
- 長谷川社長
- 中国に製糸工場がたくさんあるのですが、
我々はひとつの工場を決めて、
技術を教えながら、ずーっと付き合ってきました。
生糸の場合には検査場で格付けがあって、
我々は一番高級なランクの、
6Aランクの糸しか使っていません。
- ほぼ日
- ここで一度、復習させてください。
繭があって、そこから生糸をとりだして、
余った副産物が絹紡糸になっていく。
- 榛田
- そういうことです。
生糸の長い繊維をとっていき、
糸の最初と最後の綿の部分を紡績して
作っているのが絹紡糸です。
さらに言えば、絹紡糸で使わなかった
毛羽の部分を使った「紬糸(ちゅうし)」
という糸も作っています。
- ほぼ日
- 長谷川商店さんで開発された
「KOHARU」の糸についてもいいですか。
NOWHAWさんから教えていただいた
ストールブランケットをはじめて見たとき、
シルクでできているとは思わなかったんです。
「KOHARU」は、絹100%なんですよね?
- 長谷川社長
- もちろん。絹紡糸100%です。
ですから、シルクが持っている特性は
ちゃんとあるんですよ。
- 榛田
- シルクの特性といえば、
「素肌にやさしい保湿成分」
「汗や加齢臭などの消臭効果」
「夏は涼しくて冬は暖かい保温効果」
「紫外線を防ぐUVカット」
「静電気が起きにくい吸湿性の高さ」
などが挙げられますね。
- ほぼ日
- わっ、いいことばかりですね。
生糸と絹紡糸の特性の違いはどこでしょう。
- 長谷川社長
- 絹紡糸を撚糸して、
糸になったものを毛羽を出すような
加工をしたものが「KOHARU」になります。
ですので、シルクならではの光沢が
「KOHARU」では目立ちませんね。
- 長谷川専務
- 絹製品というものは本来、
光沢を重視して作られるんですよ。
上から押さえつけたときに光を放つような
仕上げをしているのですが、
「KOHARU」の場合はまったく違っていて、
表面を毛羽立たせて柔らかくしているんです。
それと、シルクではあるんだけど
ウールと同じ扱いができないかって考えました。
洗って縮絨(しゅくじゅう)して、柔らかくします。
シルクでやってこなかった方法を試したら、
思いのほか、ふわーっとふくらんだんです。
ふくらみすぎて、最初失敗したかと思ったぐらい。
- 長谷川社長
- 毛羽立たせたことで
シルクに比べて光沢はなくなるけれど、
従来のシルク製品にない風合いです。
ウールとかカシミアみたいだって
思われるかもしれませんが、
シルクはカシミヤの繊度の半分ですから、
さらになめらかなさわり心地のはずです。
- ほぼ日
- 繊維の太さが違うんですね。
- 杉山
- シルクは本当に繊維が細くて、
1本の糸はあまりに細すぎるので、
6本分の糸を付着させて
1本の糸に紡いでいます。
- 長谷川専務
- カシミヤ繊維は12-13μと言われていて、
シルク繊維も測ってみたら7μでした。
通常、シルクの太さはデニールで表現されるので、
自分たちでもわかっていなかったのですが、
カシミヤ繊維の半分ぐらいだったんです。
それだけシルクがきめ細かいということですね。
- ほぼ日
- いわゆるシルク商品といえば、
普段づかいするにはデリケートな
イメージもあるのですが、
「faffwa」のシリーズでは、
どう扱ったらよいでしょうか。
- 八橋
- きれいな光沢のあるシルク製品ですと、
摩擦で繊維が切れて毛羽立ってしまうことがあるので、
ドライクリーニングをお願いしています。
ところが「KOHARU」の場合は、
糸の段階で毛羽立たせているので、
擦れる心配もありません。
基本的には手洗いを推奨していますが、
個人的な感覚としてはネットに入れて、
シルクが使える中性洗剤を使った
おしゃれ着洗いで風合いは持続できると思います。
素肌に触れていただきたい一方で、
その都度ドライクリーニングとなると
かなりの手間になってしまいますしね。
- ほぼ日
- 干すときに気をつけることはありますか。
- 八橋
- 日陰で、平干しがベストです。
ニット製品なので、吊り干しにすると
重みで伸びてしまうことがありますから。
- ほぼ日
- これまでの「ほぼ日ハラマキ」でも、
巻いてるうちに伸びてくることがあるのですが、
洗うと元の大きさに縮んでくれます。
「KOHARU」の場合、伸び縮みはありますか。
- 長谷川社長
- それはいっしょですね。
着用すると、形状記憶みたいに
大きくなるかと思います。
でも、洗えば戻るのでご安心ください。
- ほぼ日
- 身につけているうちに、
毛玉ができてくるのかなと思いますが、
毛玉の処理はハサミで切ればいいですか。
- 長谷川社長
- 基本的にはカシミヤと扱いは似ています。
シルクはカシミヤの半分の繊度なんで、
毛玉も起きやすい糸だとは言えるでしょうね。
毛玉ができたらハサミで切ってください。
最低限の手当でもいいので、
ぜひ長く使っていただきたいですね。
- ほぼ日
- 一般的にイメージされるシルクよりも、
だいぶ扱いやすいものなんですね。
「faffwa」のシリーズで
はじめてシルク製品を身につけるかたも
いらっしゃると思います。
どこをいちばんアピールしたいですか。
- 八橋
- やはり、さわった瞬間の肌ざわりですよね。
ぜひ目を閉じて、さわっていただきたい。
今までにない感覚になると思います。
シルクならチクチクすることもありませんし、
デリケートな肌の方にもおすすめです。
- 杉山
- 身につけたときの幸福感を
ぜひ感じていただきたいですね。
お手元に届いたときに
触れていただくのがたのしみです。
- 長谷川社長
- 絹紡糸ひとつとっても、
メインほぼ日の番手が120番双糸という
エクストラな糸しか使っていません。
ぜいたくな質感を確かめてほしいですね。
- ほぼ日
- 丁寧に教えていただき、
ありがとうございました!
さわった瞬間の驚きを
ぜひ味わっていただきたいですね。
(おわり)