「気軽に飲めて、からだにもよくて、
しかもおいしいジュースを作りたい」
そんな思いから、ほぼ日食品チームの
メンバーを中心に発足した「畑deしぼり」チームは、
春、夏、秋、冬と約1年かけて、
つくば市のベルファームさんの畑を訪れました。
初夏には糸井と「鍬入れ式」も行ったんですよ。
ベルファームさんとの出会いから、
ほぼ日オリジナルジュースができるまでを
ぎゅっとしぼった全3回でお届けします。

第1回 ベルファームさんの畑へ。2021-01-20-WED
第2回 初夏の鍬入れ式。2021-01-21-THU
第3回 収穫のとき。2021-01-22-FRI

第1回
ベルファームさんの畑へ。

茨城県つくば市、筑波山をのぞむ
広大な畑の真ん中に、
「にんじん」「もも」「メロン」の旗がたなびく
一角があります。
このジューススタンドで飲める
しぼりたての野菜やフルーツジュースがおいしい、と
地元の人はもちろん、
遠くからも訪れる人が絶えません。
このジューススタンドを併設しているのが
ベルファームさんの本社です。

ベルファームさんの本社前には、
広大な畑が広がっています。

ある日、食品チームの一人が
このベルファームさんのジュースを知り、
飲んでみたところ、ものすごくおいしい。
糸井重里もすっかりファンになり、
にんじんジュースやメロンジュースなどを
取り寄せ、自宅で飲みはじめました。

どうやったらこんなジュースを作れるんだろう。
その理由を探りたい。
そしてベルファームさんの力をお借りして、
ほぼ日のオリジナルジュースを作れないだろうか。
そんなきっかけで担当のかたと
お会いすることになりました。

▲ベルファームさんのジューススタンド。

話はどんどん進み、
はじめてチーム全員で
ベルファームさんを訪れたのは
2020年2月のことでした。

▲2月、畑に向かうほぼ日乗組員。

▲ここがベルファームさんの畑です。

▲迎えてくださったのは、農場長の鈴木英樹さん。

最初に案内していただいたのは、
ベルファームさんが30年前から作り続けている
「青汁」の原料となるケールの畑です。

緑の草原のなかに
ケールが生えている光景はとても美しく、
いわゆる「畑」という感じがしません。

これはマメ科のヘアリーベッチという植物を
生い茂らせることで、
ほかの雑草を生えにくくしているとのこと。

「まあ、雑草を抜く手間を惜しんだ、
というほうが正しいですけども‥‥。
季節によって育て方を変えているので、
これはこの時期だけの風景です」と農場長。

その言葉通り、その後も訪れるたびに、
畑の風景は変化していました。
ベルファームさんが取り組んでいるのは、
化学肥料や化学合成農薬を一切使わない農法です。
土には自家発酵堆肥を用いています。
そのことの貴重さ、
そして自然のものだけで育てる大変さを、
私たちはベルファームさんに通いながら
少しずつ学んでいくことになります。

また、この日は「ゆうべに」という品種の
にんじんの収穫日で、
その様子も見せていただきました。

▲まさに収穫のまっただなか。

ここで育てているジュース用のにんじんは、
収穫できる状態からさらに土の中で
1~2か月熟成させた上で収穫するそうです。
そうすることで実も大きく、あまみの強い
にんじんができるとのこと。

▲大きさにびっくり!

▲しかも、ものすごくおいしい‥‥!

収穫したにんじんは、
すぐに工場へと運ばれます。
工場は本社の真横に建設されていて、
畑とは目と鼻の先の距離です。
にんじんに限らず、ケールやビーツなど
収穫された野菜は、
なんと最短2時間でジュースに加工できるそうです。

みんなで工場見学もさせていただきました。

▲案内してくださったのは、工場長、営業部長の永島孝一さんです。

まずはにんじんを皮むき機でむき、
少しでも傷や穴があったり
痛んでいる部分をカットします。

▲包丁でしっかりと取り除きます。

▲ひとつひとつ、人の目で検品をします。

水道水で洗い、
さらに電解水につけて殺菌します。

▲「洗う」だけで何工程も。念入りに洗います。

ジュースを搾る機械は
企業秘密とのことで撮影を控えましたが、
ベルファームの社長が開発した、
独自技術の「低速すり搾り製法」を採用しています。

▲このとき出てくる搾りかすは、自家製堆肥の原料になります。

搾ったジュースを加熱してパック詰めし、
急速冷凍すれば、ジュースの完成です。

「よかったらどうぞ」と、
搾りたてのにんじんジュースを
飲ませていただきました。

▲「うわぁ‥‥あまくてフルーツみたいです」

工場長の永島さんがおっしゃいます。

「うちは完全無添加なので、原料が全てなんです。
品質が悪いものをどんなに搾っても、
いろんな調味料を足せるわけじゃないし、
何もできません。
そういう意味では、農場と連携して、
いい原料をいいタイミングで収穫して持ってくること。
これがもっとも大事なことです」

その後も、何度もベルファームさんを訪れました。
それは主に、「ほぼ日」用に作っていただく
野菜の品種について話し合うためでした。

ベルファームさんのジュースは、
文句なくおいしく、
すでに完成されています。

じゃあ、「ほぼ日」だけのオリジナルジュースは
どんなものがいいんだろう。
飲みやすくて、飽きがこなくて、
からだのためにも毎日飲みたくなるジュースって‥‥。
話し合いはいくども行われました。

そして最終的に、
他品種と一切ブレンドしていない、
「ほぼ日」だけのオリジナルのジュースを作ろう。
「からだによくて、おいしいもの」をテーマに、
最初は、にんじんとケールからはじめよう。
そんなふうに方向性が決まりました。

にんじんは、
「京くれない」と「ひとみ五寸」の2種類を
それぞれ育てていただくことにしました。

「京くれない」は真っ赤な見た目が特徴の
濃厚なあまさが特徴のにんじん。
ベルファームさんで作るのもはじめてとのこと。

「ひとみ五寸」は、
フルーティでまろやかなにんじん。
ほとんど市場に出回っていない、
希少価値の高いにんじんです。

にんじんの品種は早い段階で決定しましたが、
難航したのは青汁です。
「より飲みやすい、
オリジナルの青汁は作れないか」
その答えはなかなか出ませんでした。

そんなある日、工場長の永島さんが、
「これは、いつかうちで
作りたかった品種だったのですが‥‥」
とおっしゃいながら、
めずらしい品種のケールを提案してくださいました。

エグ味・苦味が少なく、あまみの強い品種、
それが「ハニーケール」でした。
ジュースに適したものを目指して開発された品種、
とのこと。
飲みやすい青汁、それは私たちが
最も目指していた特徴です。
最初のラインナップに
それを使わせていただくことになりました。

▲広大な農場のなかに「ほぼ日の畑」も作っていただけることになりました。

このころは、新型コロナがこれほどまでに
流行するとは予想もしていませんでした。
吹き抜ける風が気持ちのいいこの場所で、
「お客さまをほぼ日の畑に招待して
収穫体験をしていただきたいね」
「みんなでバーベキューも楽しそう」
そんなイメージを全員でふくらませていました。
いまの状況が落ち着いたら、
いつか実現させたいことのひとつです。

(つづきます)

2021-01-20-WED