こどものいす すわるのいす たいけんかい。 @TOBICHI② 2018.3.28(Wed)~4.1(Sun)

シンプルで、天然木の木目がうつくしい、
ちいさないす。
木工作家の田中英一さんがつくる、
こどもたちのためのいすです。
こどものものだからといって、
いたずらにこどもっぽくすることはせず、
こどもが毎日しっかりと使えるように
つくられています。

サイズはもちろんこども向け。
つかまり立ちができるようになる
8か月くらいから、
小学校に入るころまでのこどもたちに
座ってもらえる大きさです。
ローテーブルや座卓にちょうどよい高さで、
つかまったり、よじのぼったり、
そしてお絵描きや食事をするときには
姿勢よく座ることができます。

かたちは2種類。
スタッキングができる「ほいくのいす」と、
前後の脚がつながっていて
安定感がある「すわるのいす」があります。

幼稚園や保育園向けに
つくられていたこのいすを、
ご家庭で使っていただけるように
初めてご紹介したのが、
2017年11月の「生活のたのしみ展」でした。
今回、3月28日午前11時から、
ほぼ日ストアで数量限定で販売を開始します。
そして、TOBICHI2では、
いすができるまでのようすを見たり、
実際にすわることもできる
「たいけんかい」を開催。
座って、あそんで、
よさを実感してもらえたらと思っています。
もちろん展示販売もいたします。
ぜひ、おでかけくださいね。

第2回かならず壊れるということ。

「こどものいす」は、
壊れるように作ってあります。
保育園の先生たちには、
「ちゃんと壊れますよ」って説明をするんです。
乱暴に扱ったり、長いこと使っているうちに
壊れるように作っていますよ、と。

でないと、こどもたちって
「絶対に壊れないもの」に対しては、
どんどん使い方が荒くなっていくんです。
でも、物が壊れることがわかれば、
壊れるからこそ「物を大切にしよう」
っていう気持ちが育まれるわけです。

ちゃんと毎日使って、それでも壊れる。
そして、修理をすれば、また使える。
そういうことができる椅子のほうが
理想的だと思ってます。

ただ実際には、これまで作った椅子8000脚くらいの中で、
壊れましたっていうものは、今のところ、数十脚です。
もとどおりにならないくらい壊れたのは、
3脚だけです。
だからよほどじゃないと壊れないくらい、
じょうぶには、できてるんです。

曲線がうつくしい「すわるのいす」。
スタッキングできる「ほいくのいす」。

椅子の構造は、ほぞ組みといって、
木だけで組む方法が基本です。
金物のビスを使っているのは、
座面の下から留めるところだけです。
ほぞ組みをものすごくタイトに調整しているのと、
ボンドで接着することで、じょうぶにできているんです。

壊れ方によっては、部品を一部新しくしたり、
そういうメンテナンスをします。
でも「これ、もうどうにもならないね」
っていうものは、積み木にしたりしています。
木ですからそういった生かし方もある。
そこは工夫次第かなって思います。
やみくもに捨てる必要はないし、
アイデアと技術さえあれば、どうとでもなる。

気をつけるのは、すき間ですね。
こどもって、ちょっとのすき間が大好きで、
そこにご飯を詰めたりするんですよね。
デザインとしてはそのほうがよかったとしても、
変なすき間を作らないようにしています。

「ほいくのいす」の座面。座面中央の木の合せ目も、ぴったりとついています。

すき間ってすごく難しいんです。
たとえば、すき間に指をつっこんで、
友達がぶつかって指をひねって骨折、
っていうことだって考えられますから、
そういったすき間は作りたくない。
そこを極力考えてはいるんですけれど、
こどもの行動のほうが、
こちらの想像をはるかに超えている。
とても追いつけないんですけれど、
なるべく考えぬいて考えぬいて、やっています。
もちろん、かつ、掃除もしやすいように。

「ほいくのいす」裏面にもすきまなし。
そしていすの足にはすべり止めがしっかりついています。
こちらは「すわるのいす」の裏面。同じくすきまなしです。
すべり止めもしっかりついています。

塗装にも特徴があるんです。
木を触るとまるで
素地を触っているような感触なんですけど、
実は結構しっかりと塗装をしています。
かなりの試行錯誤の末、
この状態がつくれるようになりました。

けれどもなるべく化学塗料は使いたくない。
ただ、保育園とか幼稚園で使うとなると、
こどもたちの使い方がかなりハードですし、
それから消毒液、アルコール系のもので
毎日のように除菌するから、
どんな塗料でも、はげるんですよね。

そこを強くしてあげたいと思うと、
本当は何度も塗り直してあげるのがいいんでしょうし、
天然塗料であるオイルだけで仕上げるっていうのが
理想ではあるんですけど、
それ以上に拭き取りが激しい。
そういった環境のなかではとても耐えきれないんですね。

そこで使っているのがウレタン塗料です。
お椀や弁当箱に「ウレタン塗料」って書いてあるのを
ごらんになったかたもいることでしょう。
あのウレタンって、だいたいはウレタンの粒子を
シンナーなど石油系の溶剤で混ぜて塗ってあるんです。
それだと化学塗料まみれになっちゃうんですけれど、
この椅子に使っているのは、
オイルにウレタンの粒子を
少し混ぜてあるようなものなんです。
だから質感はオイル仕上げに近くて、
拭き取りや汚れに強い。
クレヨンや絵の具も、拭き取ればおおよそ取れます。

気持ちいい手ざわり。

日光に当たって色が変わるような、
経年変化も、もちろんあります。
触り心地もいいので、
たくさん触れたところにつやが出たり。
そんな変化も楽しんでもらえると思います。

(つづきます)

2018-03-25-SUN