新茶シーズンの茶畑と工場にうかがいました。 新茶シーズンの茶畑と工場にうかがいました。
4月下旬、ほぼ日のにほん茶を作ってくださっている、
つきまさ静岡工場へ、
チーム全員でおじゃましてきました。



毎年この時期は、新茶の摘採・加工がはじまり、
工場で働く方も、畑を管理している方も、
一年で最も忙しい日々を過ごされています。



今年は新茶の摘採が本格的にはじまる直前、
といったタイミングでの訪問になりました。
見渡す限り新緑の、美しい茶畑を
案内していただきながら、
新茶について、さまざまなお話をうかがいました。
後編
農家さんと共に、品質を守る。
茶畑を訪れた後は、つきまさ工場に戻り、
製茶の工程を見せていただくことになりました。



つきまさの皆さんが独自に
管理されている畑のお茶だけでなく、
全国の契約農家さんが育てたお茶が集まってきます。
その中には、ほぼ日で販売する、
静岡、宮崎、鹿児島それぞれの契約農家さんが
育てた新茶も含まれています。



それらは、「荒茶」という、
一次加工を施した状態で届くため、
その膨大な量の荒茶を、まずは精査する必要があります。
▲右が「ほぼ日のにほん茶」を作ってくださっている、
つきまさ工場長の石田さん。30年以上、お茶に携わっています。
▲まずは、見本缶に入った荒茶を
「拝見盆」という黒いお皿に出して、
葉の形がしっかりしているか、見た目でも確かめます。
▲五円玉と同じ量の粗茶を量り‥‥。
▲熱湯を注ぎます。
▲まず香りを確かめ、その後で味を確かめます。
「今日は皆さんに試していただきたく、
荒茶を5点だけ用意しましたが、
通常はここに50点ほどが並びます。
ピークになると、何百杯と試飲をしますし、
少しでも体調を崩すと味覚が落ちてしまうので、
体調管理には一番気をつけています」と石田さん。
▲ほぼ日乗組員もトライ!
野生味の強い、葉っぱの香りと苦味があります。
「いま確かめた味を、よく覚えていてくださいね。
荒茶の段階で試飲していただいた味と、
この後、火入れをした味とでは、また変わってきますから。
それでは工場の中を案内します」と石田さん。
▲まず案内されたのは冷蔵室。
全国各地から荒茶が届き、品質を保つことのできる
適正な温度で管理します。
「荒茶は不揃いなので、ここから棒(茎)を取ったり、
粉を取ったりしていきます」と石田さん。
▲葉と茎の部分を分けています。
▲荒茶から「茎(棒)」と
「粉」の部分を取りのぞいたもの。
このバランスで、お茶の濃さ、飲み口が変わってくるんです。
「次が、一番難しくて重要なところなんですが、
茶葉をドラムの中で回転させながら、
火入れをしていく工程です。
機械を使っていますが、常に人の目で見て、
それぞれのお茶に合わせた火加減や、
加熱時間を調整しているんです」
▲中をのぞくと‥‥。
▲ドラムが回転し、お茶の葉が舞っています。
なぜドラム状になっているのか、その理由を尋ねました。



「たとえばチャーハンを作るときも、さっさっさっと
フライパンを動かすことで、ご飯の水分が飛んで、
パラパラになるのと同じで、
ドラムの回転の速さによって、お茶の葉の水分が飛んで、
飲み口や味わいも変わってくるんです」
この工程が終わったら、いったんお茶の審査です。



「本当にこの火加減でいいのか、
お茶の個性を活かせているのか、
商品のイメージに合っているのか。
試飲して味を確かめて、どこかが違うと思ったら、
またドラムに戻る、という作業を
日に何度も行っています」と石田さん。
▲お茶の味を確かめる。
▲最後の味をチェック。「品種が同じでも、育つ場所によっても、
摘採時期が数日違うだけでも、味が変わってくるんです」
「100点満点の優等生なお茶はつまらない」という
社長の方針のもと、それぞれのお茶の個性を活かした火入れ、
仕上げをするのがつきまささんのお茶作りです。
その中で、すべてのお茶に共通しているのは「色」です。



「今は、お茶をいれたときの色というと、
濃い緑色がいい、というような風潮があります。
でも、緑色のお茶は粉の部分を多くすれば
簡単に作れるんです。



一方、自然の露地栽培で日光を浴びて育てたお茶、
葉の形がしっかりとした状態のお茶の葉は、
火入れをしても粉っぽくならず、
いれたときに淡く、きいろいお茶になります。
それを私たちは『きいろきんいろ』と言っています。



お茶のおいしさはお客さまが決めることですし、
私たちが判断するものではありません。
お客さまが濃い緑色のほうが好きだという場合は、
もちろんそれでいいと思うんです。
でも、私たちは、露地栽培で育ったお茶は、
太陽の色と同じで、自然な黄色になるものだと思っています。
そこは昔から変わらない信念です」
▲できあがったお茶をいれます。
▲奥から一煎、二煎、三煎といれたときの
味の違いも確かめます。
▲お茶の色は「きいろきんいろ」!
できあがったお茶は、
袋詰めして出荷準備に入ります。



最後に、石田さんが近年のお茶事情について
教えてくださいました。



「ほぼ日さんとも長いお付き合いですが、
その間に、だんだん、うちと農家さんとの
信頼関係も深まってきたと思います。



ただ、今は、お茶を取り巻く状況が
どんどん変わってきていまして、
農家さんが肥料などの資材に
十分な投資ができなくなっていて、
管理の差がお茶にも影響してしまっているんです。



お茶業界では、茶価は相場で左右されているんです。
たとえば、このあたりのお茶は、
一律いくら、というふうに相場が決められていく。
質よりも数量で決まってしまうところがあって。



でもうちはそうではなく、
品質を維持していただくために、
しっかり農家さんにお支払いしていくべきだと思っていますし、
各農家さんが作るお茶の品質を見て、
それをどういう商品にするかで価格を決めています」
さらに、土屋社長が続けます。



「農家さんのやりがいや、茶業に対する
情熱を決して消してはいけないんです。
そのためには、日頃からのつきあいを大事にしながら、
本当にいいものは高く評価するという姿勢を崩さない、
ということを大切にしています。
日々、その積み重ねなんです」



今回、あらためて茶畑や工場を見学させていただき、
時代とともにお茶を取り巻く環境が変わっても、
いいお茶を作るために妥協をしないということ、
品質を守るということ、
いつでも農家さんのほうを向いているということ、
すべての方がその信念を持って働いている様子が、
静かに、強く、伝わってきました。
つきまさ工場の皆さん、ありがとうございました!
(おわります)
2024-06-12-WED
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