この「混」(こん。「まぜ」と呼ぶひともいます)。 はじめて食べるかたには、 きっと驚いていただけると思います。
昨シーズンに「とび」という、 青海苔がほんのりまじった海苔を紹介したのを おぼえていらっしゃるかたもいることでしょう。 「混」は、そのまじり具合が、 さらに多いものをいいます。 青海苔ならではの鮮烈な香りとほんのりした苦味が、 黒い海苔の濃い味と重なって、 野趣のある独特の風味が生まれるんです。
この海苔、じつは、つくるのが、 とてもむずかしいものなのだそうです。 世の中には、別々に育てて収穫した 青海苔とふつうの海苔を、 機械で混ぜてつくるという方法もあるらしいのですが、 皿垣の「混」のつくり手は、ちがいます。 まず、養殖の網。 ふつうの海苔と青海苔の網を交互にめぐらせます。 そうすると、海の波やうねりにもまれ、育つうちに、 ふつうの海苔と青海苔が、少しずつ混じります。 海況や育て方によって青海苔の混じる比率は変わるため、 なかなかコントロールは効きません。 そして、そもそも、一般的な海苔と青海苔は、 おいしくできる時期がことなるため、 同じ海で同時期に育てること自体が至難の業。 生産者の経験と、高い技術が必要なのです。 苦労してできあがったその海苔は、 青海苔の比率の高いものを「混」、 比率が低く、青海苔がほんのりと香るものは 「とび」(飛)と呼ばれます。 (昨シーズン販売したのは、その「とび」でした。)
生産量が多くないため、隠れた人気があり、 海苔好きのあいだで珍重されるこの海苔。 林屋海苔店の相沢さんでも、入手困難だというなか、 今回は、運よく「混」2種類を仕入れることができました。
個性はかなり、強めです。
「混」の個性は、まず香り! 元気よく立ちのぼる青海苔の香りです。 そして「海大臣」の名にふさわしい、 ゆたかなうまみと、歯ごたえ。 口にいれたときの風味は、 ちょっとほかでは味わえない、とくべつなもの。 個性はかなり、強めです。
「じゃあ、使いづらい海苔なんじゃ‥‥?」 という心配は無用。 まずはそのまま、おつまみとして食べていただくのもよし、 その次は炊き立てのごはんを巻いて おしょうゆもなにもつけずに食べてみてください。 ごはんの水分を吸って、香りがさらにゆたかになるのが、 きっと実感していただけるはずです。
もちろん、ほかの「海大臣」同様、 「いつもの海苔」として、いろいろな料理にも使えます。 いつもの料理が、「これ何?!」と言われるような ごちそうに変身しますよ。 ぜいたくな使い方としては、青海苔のかわりに、 焼きそばやお好み焼きの薬味としてもおすすめです。
長芋‥‥‥‥200g(正味) 薄力粉‥‥‥‥50g〜60g 桜えび‥‥‥‥5g 塩‥‥‥‥ひとつまみ 薄口しょうゆ 適量 のり(混)‥‥‥‥1枚