ほぼ日の「おちつけ」グッズ発売を前に、
みんなにとっての「おちつけ」とは
どんなものだろうかと考えてみました。
座談会に集まったのは、ほぼ日乗組員の5人組。
毎日、会社で顔を合わせて
仕事をしている仲間ですから、
忙しい時や、緊張している時の
おちついていない顔も知っています。
「おちつきたい」とは思っていながら、
なかなかおちつけないでいる私たち。
さあ、「おちつけ」を考えましょう。
進行役は、ひらのです。
<おちつけ座談会の参加メンバー>
緊張が態度に出やすい。
取材前はうわの空になる。
「おちつきがないね」と
言われ続けてきた人生を歩む。
おっちょこちょいな
失敗をしてしまいがち。
後ろを振り返らずに突き進む
せっかちな性格を自認。
糸井重里のつけたコピーが、
「おちついた挙動不審」。
- ーー
- 「おちつけ」グッズの発売を記念して
「おちつかない5人」のみなさんに
お集まりいただきました。
それでは早速、みなさんに質問します。
「自分はおちついている」と思いますか。
- この集まりに招待されたってことは、
おちついていないように見られてるのかな。
私、自分のことを
どんと構えている方だと思っていたから、
ちょっと新鮮な驚きなんです。
だから今日は、私がバタバタして見えるときでも、
中身はすごくおちついてるんだぞと言いたいです。
- 私は自分でもおちついてないと思ってます。
あれっ、みんなは自覚ないの?
おっくんなんて、いつも会議中に手遊びして、
絶対におちついてないからね。
この間も、机の上に置いた持ち物が
いつの間にか積み上がっていて、
合体ロボみたいになってたよ。
- 手遊びは小学生の通知表にずっと書かれてました。
消しゴムを丸めたり、ペン回しをしたり。
手を動かしてるとおちつくんですよね。
- 奥野さんの手遊びは、よーく知ってます。
- おちついてない感じが
すごく伝わってくるんだよね。
ふたりで話してるっていうのに、
私の目の前で、パスケースのひもを
クルンクルン回す遊びをしていて、
全然おちついてくれないんです。
最後には、同僚のスノードームに引っ掛けて
パリーンって割っちゃったんだよ。
- 昔からみんなが
よくやることだと思うんですけど‥‥。
その時はたまたま引っ掛かって。
- それ、小学生の息子がやるレベル(笑)。
私は普段からおちつきたくて、
自分の「おちつけ」グッズを持ってるの。
- ホントだ! 「KEEP CALM」って書いてある。
お店で見つけてピンときたの?
- そう、私に必要な言葉だなと思って。
「おちついて、普段通りにやりましょう」
ということですよね?
戦時中にイギリス政府から
国民に伝えた言葉なんですって。
- 私も昔、「KEEP CALM」って書いてある
スマホケースを使っていたことがあります。
イギリスの人も「おちつけ」を
大事にしているんですね。
- 「おちつかない」と一言で言っても、
真っ白になる人とか、バタバタしている人とか、
いろんなパターンがありますよね?
私、真っ白になることはないのですが、
何かをやりながら、終わらないうちに
次のことに頭がいってしまうので、
動きと考えがずれていて
結果、ちぐはぐに見えるんでしょうね。
- おちついているようには見えないよ。
- こう見えて、頭の中はいつも静かです。
自分の座右の銘にしている言葉が、
「覆水盆に返らず」なんですよ。
- 意外な座右の銘だね。
- 「覆水」はしょっちゅうしているんです。
でも、水がこぼれることは織り込み済みなんで、
何があっても、わりと堂々としています。
あっちこっちに水をこぼして、
まわりの人に心配されても大丈夫。
私はゆっくりと水を拭くだけです。
- こぼした水を盆に返さないで、
覆水、織り込み済みなんだ!
- 私は自分を真っ白タイプだと思ってます。
普段は自分でおちつきたいと思ってるのに、
おっちょこちょいなことをするんです。
「ああ、やっちゃった!」と思って
真っ白になってからが、
私の「おちつけ」のスタートです。
よくやる失敗が「添付で送ります」って
メールに書いたのに添付がついていない。
その後、「あっ、失礼しました!」と
送ったメールにも添付が漏れていたりとか。
- 会社のみんなで行った海外研修旅行でも、
ちょうさんがお風呂で叫んだ事件が
ありましたよね。
- みんなが忘れてくれなくて恥ずかしい‥‥。
ひとり、ホテルでお風呂に入ろうとしたんです。
浴槽にお湯を溜めて、さあ入ろうと思ったら
飛び上がるぐらいの熱湯風呂。
「熱っつい!」ってあわてて冷水を浴びたら、
今度はすっごく冷たかったんです。
- まんま、熱湯コマーシャルだよ(笑)。
- せっかくのホテルだし、
その次の日には気分を変えて、
泡風呂をたのしもうとしたんです。
今度はお湯の温度をちゃんと確かめてから、
バブルバスの入浴剤を入れて
優雅な気分でお風呂に行ってみたら、
浴室中に泡がモクモクーってふくらんで!
お風呂に入ろうにも息ができないし、
なんとか自力で泡を止めるために
浴槽の底にあるコルクを抜いて
結局お風呂にも入れず。
- 一同
- (笑)
- ちょうさんはハプニングが多すぎる!
- 普段はおちついてると思うんだけど、
何かが起きるとワタワタしちゃうんです。
だからいつも、ひとり反省会をしています。
「あの時もっとおちついていたら、
絶対そんなふうにならなかったのにな」
とか、だいたい落ち込むんです。
- おちついていたらなっていう失敗は、
あとで反省したくなるよね。
私も仕事で真っ白になった話を思い出しました。
まだ「ほぼ日」に入社したての頃に、
糸井さんを助手席に乗せて運転したんです。
どこか遠くから東京方面に帰りたいのに、
道路標示には「品川」としか出てきません。
目的地は品川じゃないのに、いくら走っても
東京の地名が品川しか出てこない‥‥。
私は入社したばかりだし、
横には「糸井重里さん」が座っているしで、
運転しながらパニックになっちゃったんですよ。
そうしたら糸井さんが気づいてくれて
「スガノ、俺を品川だと思って走れ!
もう焦らなくていい、俺が品川だ!」
と言ってくれておちついたんです。
- 俺が品川!
- 入社したばかりの糸井さんって強烈だから
超緊張しちゃったんだよね。
あのときの名言は一生忘れません。
ふじちゃんはいつも、
ギリギリまで準備できないって言ってるよね。
- 私は前もって準備するのができないんですよ。
たとえば、結婚式に呼ばれたりすると、
当日になってから、ものすごくあわてるんです。
この間、12時の挙式に
出席しなくちゃいけないのに、
履いていけるような靴が見当たらなくて、
急いで靴を買いに走ったんです。
なんでもいいからヒールのある靴を買わなきゃ
と思って、靴をレジに持って行って、
「すごく急いでるんで履いていきますね!
箱もいらないです!」って式場に走りました。
急いだおかげで式場には時間どおりに着いて、
完璧だなと思って何食わぬ顔をしていたら、
友だちから「靴が右と左でバラバラだよ」って。
- いやー、おちついてーっ!!
- 靴って、みんな似てませんか?
ヒールの高さもだいたい同じに見えるし、
デザインがちょっと違うぐらい。
ちょっと水玉が入っているとか、
ちょっとストライプが入っているとか。
- それにしても違うと思うんだけど。
- あの、取材する時って緊張しませんか?
先輩たちは、おちついていられますか?
- 私は今でも、取材現場ではおちつけないよ。
あまりにも私がおちついてないから、
相手が「この人、大丈夫かな」って心配して
すべてをさらけ出してくれるんです。
たぶん、同行しているデザイナーさんは、
みんな知ってるんじゃないかな。
- ぼくは、昔よりはおちついたと思います。
今でも取材が始まる前までは
ちょっと緊張してますけど、
始まるともう大丈夫‥‥だと思ってるんです。
- 待って、いま「ちょっと」って言ったけど、
おっくんはそうとう緊張してるから。
何も手についてなくて、うわの空だよね。
右から左にものを移動してるだけで、
何もしていない状態が続いてるよ。
- あ、取材の前はかなり緊張してます。
何を質問しようかとか、
いっぱい考えていると何もできなくて。
でも取材が始まっちゃえば、
自分のコントロールは利かないんで、
相手に委ねるしかないんですよ。
- 「取材が始まれば大丈夫」を繰り返していれば、
学習して、おちつくことはないんですか。
- たぶん、取材中に関して言えば、
10年前、20年前よりは
緊張していないんじゃないかな。
取材のスタイルって人によると思うけど、
ぼくの場合、ICレコーダーで録音すれば、
自分が覚えている必要がないと思ってるんです。
だから、あとで文字起こしをすると
同じ質問を3回も訊いていたりします。
- えーっ、ほんとに?
- 文字に起こしてみると、
如実に同じことを訊いているんです。
取材相手も、まさか同じこと訊かれるなんて
思ってもみないのか、
もしくは、何か意味があるのかと感じて
違う答え方をしてくれるんで、
結果的に、話がより深まることがあります。
- おちつかなかったことで、
いいほうに転がることがあるんですね。
ここにいるみなさんって、
語り口はおちついていて穏やかな感じなのに、
心の中であわててるのがおもしろいです。
- むしろ、「ほぼ日」の社内で
おちついている人っているのかな。
特にこの会社では、
思ってもみない角度のことがよく起きるから、
おちつけないことが多いですよね。
みんなの話でほっとしました。
- 人間はみんな、
おちついていないんですね。
- 一同
- ああ、おちつきたい。
(「ほぼ日」乗組員がおちついていないから
社長が「おちつけ」と言うのかも。
座談会は後編につづきます)
2019-02-02-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN