糸井 | 大橋さんが『アルネ』を 始めたのは何年でしたっけ。 |
大橋 | 2002年ですね。 |
糸井 | その時は、 ぼくはインターネットを やっていたわけですけど。 |
大橋 | そうですよね。 |
糸井 | 2002年っていうと、 ぼくがほぼ日を始めてから4年目ぐらいですか。 だから、紙とか印刷とかっていうのは、 とにかくえらい大変だから、 それがなくてもいいんだと思って インターネットを始めた時に、 大橋さんがへっちゃらで紙で出してきた(笑)。 |
大橋 | 紙しかなかったから、私には。 |
糸井 | 考えもしなかったっていうことですよね。 そこはやっぱり愉快ですよね。 |
大橋 | たぶん私の中では、目の前にある手で広げるもの、 ぐらいのことしか、考えられなかった。 たとえば、糸井さんはもっとこう、 広いじゃないですか。 だけど、対象になるような人たちも 広いけれど──ていうか、 ものすごく広範囲の方に届けてらっしゃいますけど、 私のほうは単に、この中で、 この中のことを皆さんの中で なんとなく好きっていうふうに 言ってくださればうれしいな、 みたいな程度だったの。 |
糸井 | 友だちですよね。 |
大橋 | そう、みんな友だち、みたいな。 だから、『アルネ』を買ってくださってる 人については、もうすごいやっぱり なんていうんだろう、友だちみたいな、 読んでてありがとう、みたいな。 だからそれ以上にはやっぱり広がらない代わり、 やっぱりそれはそれで、私は満足してるの。 |
糸井 | 超・絵手紙みたいですね。 |
大橋 | そうですね。そうです。 |
糸井 | そうだ、スーパー絵手紙だ。 |
大橋 | そうなっちゃうか、わかんないです、 スーパーまで行くか。 |
糸井 | 超‥‥つまり、 1枚の絵手紙じゃなくて、 綴じるぐらいまで。 |
大橋 | そうですね。 |
糸井 | それだ、と思ったら 作り始められますね、たしかにね。 |
大橋 | だから、あんまりすごく 大変っていうのはなかったですね。 |
糸井 | で、ひと通り、会いたい人っていうことで だいたい会った気がするし、 物も紹介していったと。 いろんなことを、 おもしろいことを順番にやっていったら、 「いやぁ、最初の頃に思ってたことを だいたいやっちゃったな」みたいな。 |
大橋 | そうですね、たぶん、ほとんどやりました‥‥ やったというか、お願いする人も、 私がこの人にぜひお会いしたいっていう方も、 ほとんどクリアっていうか、お願いできたから。 もう私の中ではこの絵手紙は もうここで終わりにしても大丈夫じゃないかな、 みたいな。 |
糸井 | そうか、読むだけの側っていうのは、 いつでも分量とか、長さとかっていうのを 無限にもっともっとって言うものですからね。 読者としての自分っていうのも、 作者としての自分っていうのも、 お互いに話し合って終ったんですね、きっとね。 |
大橋 | はい、思うんですけれどもね。 |
糸井 | ぼく、よく、ふつうの仕事をやる時に 「4回やりましょう」とか 「5回やりましょう」とか、 「1年続けましょう」とか、 サイズを決めてやるっていう仕事は 人を不自由にするなって思ってたことがあって。 だから、原稿を頼まれるにしても 「原稿用紙で3枚お願いします」って、 その分量に合わせてものを考えるって、 やっぱりプロはできるんですっていう 言い方もあるんだけど、めんどくさいんですよね。 で、書きたい分だけ書いたら、 もうちょっと「うん」って言ったら、 20行でもいいし、10行でもいいし、 1冊分になっちゃってもいい。 で、そういうのがいいなぁと思ってたところに、 インターネットっていうのもあって。 |
大橋 | ああ、そうですね。 |
糸井 | それが、何か自分を ずいぶんラクにしてくれたんですよ。 |
大橋 | なるほど、わかります。 |
糸井 | 大橋さんの『アルネ』も、 あと3年ですとかって決めないおかげで、 会いたくない人に会う必要ないし、 決めてたら、違うことやらなきゃ なんないですよね。 そうか、何か、それちゃんと今、 読者って、もしかしたら 言えばわかる時代かもしれないですね。 「私の中では本当に終りましたから」って、 心から言えば通じる読者みたいな気がしますね。 「やめないでぇ〜」とか言われないでしょう? 叫びみたいな‥‥。 |
大橋 | そういうのはないです。 |
糸井 | ないでしょう。 |
大橋 | はい、ありません。 |
糸井 | アイドルのファンクラブだったらもう‥‥ 続けてくれないんだったら殺してやる、 みたいなことだってありますからね(笑)。 その意味では、だから本当に 絵手紙を交換してる友だちですよね。 |
大橋 | そうですね。 |
糸井 | その『アルネ』の話になると、 なんとなく、ぼく近いから。 ぼくの自分の心にすごく、すごく近いんですよ。 |
大橋 | そうですか、へえ。 |
糸井 | あそこに『アルネ』があるっていうのは、 ぼくにとって、なんだろう、 海を船で進んでいるとしたら、 あの島、っていうみたいな、目標なんですよね。 |
大橋 | そうなんですか、 まあどうもすみません、 ありがとうございます。 |
糸井 | こちらこそ、なんです。 あの『アルネ』の島を横目に見ながら、 みたいなところがあるんです。 ああ、『アルネ』がやりそうだなとか。 だから、大橋さんとお知り合いになれて、 やり取りできるような時に、 島と船にこう桟橋が付いたみたいな。 本当にうれしかったですね。 本格的にがっぷり四つに組むって いうようなことは別にないですけど、 でも、桟橋で物の荷下ろしをしたり、 逆にその産物を積んだりみたいな、 そういうのって、たのしいですね。 |
大橋 | 私はありがたいと思ってます。 |
糸井 | その、運命共同体っていうほどじゃないんだけど、 仲良くしてるから取引ができる、みたいな。 船と桟橋みたいな。 |
(次回、最終回につづきます) |