きれいになりたいと願うのは、
自由です。
- シンクー
- ワークショップの最初の質問は、
「全ての条件を取り払ったときに、
どんな髪になりたいですか?」で。
すごく面白いと思いました。
- 佐藤
- いわゆる投影法といわれるもので、
その人の本質が現れますよね。
実際にその髪型にできなくてもいいんです。
何を抽出したいのかっていうことを、
考えることが大事なので。
- シンクー
- それを、たとえば有名人の名前を出すのではなく、
形容詞で考えてもらう。
しかも、10個も、20個も。
- 佐藤
- その方がどういう女性になりたいのかを
表現できるのって、やっぱり形容詞ですね。
ワークショップを、
クローズドの会議室なんかで開催すると、
泣き出す人がいるんですよ。
- シンクー
- そうなんですか。
- 佐藤
- 多いのが、「私なんか」です。
旦那と子供のことだけ見てきた人生で、
いざ、自分がどうなりたいか聞かれたときに、
空っぽな自分に驚いて泣いてしまう。
あとは、いわゆる親との関係ですね。
- シンクー
- 親と髪の関係?
- 佐藤
- お前なんかどうせ不細工なんだから、
色気づくなと言われて育った、とか。
- シンクー
- ああ、なるほど・・・・。
- 佐藤
- そういう人に、
「いいんですよ、願うのは自由です」
って伝えると、ブワーッて泣き出して。
- シンクー
- 髪は記憶と結びついてるんですね。
- 佐藤
- 以前、ある女性の編集者と話しているときに、
少し反発されたことがありまして。
- シンクー
- ええ。
- 佐藤
- 「髪がきれいになると、人から褒められます」って、
私、軽い感じで言ってしまったんです。
そうしたら、
「男に媚びろってことですか?」って。
「うちの会社も結局、美人しか出世しないです」
みたいな感じで興奮されてしまって。
- シンクー
- 見た目ではなく、実力で評価されたい、
という気持ちがあったのもしれないですね。
- 佐藤
- そのとき、私が彼女にどう言って
納得してもらったかっていうと、
「でも、プレゼンがある日に、
シワシワのシャツでは
外出しないじゃないですか」って。
- シンクー
- 確かに。
- 佐藤
- 「それと同じ気分で、ブローできませんか」
って言ってみたら、
「それなら、やってみてもいい」って(笑)。
きれいになることに対して
心理的なバリアがある人には、
頑張るための名目を用意してあげるのが、
効果的な場合もあるんですよね。
- シンクー
- なるほど。
- 佐藤
- 名目に慣れてきたら、
だんだん、違和感なく「きれいになりたい」って
言えるようになると思うんです。
- シンクー
- 「きれいになりたい」のひと言が、
なかなか出てこない。
- 佐藤
- 私自身が言えなかったですもん。
今でも忘れられないんですけど、
ある編集者から、
「もうちょっと見た目に責任持って下さい」
って言われたことがあるんです。
本の宣伝やなんかでテレビにも
出なきゃいけないわけだから、
「この人にアドバイスされたくない」とは、
思われないようにしてください、
という意味だったんでしょうね。
私、一念発起して、
1年で13キロ落としたんですよ。
- シンクー
- すごい。
- 佐藤
- 髪も伸ばしたりしてね。
仕事のためだ、本を売るためだって思うと、
意外とできちゃったんです。
似合うお洋服も増えて、おしゃれが楽しくなって。
- シンクー
- いいですね。
- 佐藤
- それまでは、黒子であることに逃げていたんです。
読者のみなさんには輝いていただきたい。でも、
「私にはスポットライト当てないでください」って。
これって、すごくねじれていますよね。
- シンクー
- なるほど。
- 佐藤
- だから最近は、
「私、顔は自信ないんですけど、
髪がきれいなんで、若く見えません?」って、
言えるキャラになったんです。
- シンクー
- 本を通して、佐藤さんも変わった。
- 佐藤
- 自分の理想を明確に描くのって、
とってもいいと思いますよ。
理想の自分だったら、
ひょっとしたら髪が長いかも、とか、
いやいや、人目なんか気にせずに、
ベリーショートにしてるかも、とか。
そういうことを、新しい季節に、
ぜひ考えてみてもらいたいんです。
(続きます)
2021-04-02-FRI