わたしたちが向かったのは、愛媛県宇和島市。
三重県の伊勢志摩や長崎県の対馬などとならぶ、
養殖真珠の一大産地として知られています。
今回のHOBO SIRI SIRIでは、
今年の春に宇和島近郊の海で採れた
アコヤ真珠を使っています。
南国ムードたっぷりです。
どうぞよろしくお願いいたします!
くねくねと曲がりくねった道がつづきます。
「静かな入り江がたくさんあるおかげで、
魚や真珠などの養殖が盛んなのです」
と一宮さん。
鳥も啼いていたりして、のんびりした実にいいムードです。
海をのぞきこんでみると、すごくきれい!
このへんの海は透明度が高いことで知られているそうです。
中村治郎さん。
中村さんは、質の高い真珠をつくるエキスパートで、
その腕前は賞を獲るほどなのだそう。
ということで見せてもらったのは、
黒いプラスチックのカゴに入った山盛りのアコヤ貝たち。
ぎっしりつまっています。
なるほど、ここ貝を育てているんですね。
実は中国と日本の貝をかけあわせた、ハーフなんですよ」
なんと、モデルや芸能界のみならず、
真珠界にもハーフの波が。
「この母貝に、真珠のもとになる『核』を入れるんですが、
まず『抑制』といって、半年くらいこのカゴに入れて、
貝をちょっと弱らすんです」
「あとで手術するんで、その麻酔がわりです」
あっ、えっ、手術?
いったいどういうことなんでしょう?
「では、手術するところをご覧に入れましょう」
中村さんは、わたしたちを作業場のようなところに
連れていってくれて、母貝を1つ取りだし、
ハサミを手にしました。
別のアコヤ貝から切り取った外套膜(がいとうまく)の
切片(ピース)を核といっしょに入れないと、
アコヤ貝は真珠をつくらないそうなのです。
ハサミで外套膜を切り出し、まな板みたいな木の板の上で、
びらびらした部分を取り除きます。
残った細長い、細かくピースに切り分けていき、
さいごに薬品をかけて完了。
なるほど、これが手術ですね。
中村さんは、なにか特殊な器具が据えつけられたデスクに
アコヤ貝をセットして、「核入れ」を実演してくれました。
「アコヤ貝の生殖巣に切れ目を入れ、
そこからピースを入れます。
そのあとすぐに核をおなじ場所に入れます」
すばやく作業する手さばきの、なんとあざやかなこと!
そうか、これが「手術」かあ。
ぜひ動画でご覧ください。
わたしたちも体験させてもらったのですが、
いやもう、ちょっと習ってできるようなものでは、
まったくありませんでした。
アコヤ貝の部位が書かれた図も見たりしながら
やってみるのですが、ぜんぜんうまくいきません。
中村さんレベルになるには、どれだけかかるんだろう‥‥?
「核入れしたら、この底の浅いカゴに入れて、
波の穏やかなところで1ヶ月ほど『養生』させます」
手術後、しばらく入院する感覚ですね。
退院したら、こんどはどうするんですか?
「『沖出し』といって、貝をネットに移して、
いかだに吊るします。
見に行ってみましょう」
中村さんは船で、わたしたちを沖合いに
連れていってくださいました。
たくさんの黒い球が並んでいて、
「浮き玉いかだ」というそうです。
貝の活動が活発になって、真珠が育つわけです」
年によって、育ち具合やでき具合もちがうらしいし、
もしかして、海苔とかに似ているかも?
どうやら真珠が「旬のもの」という直感は、
そんなにまちがっていなかったみたいです。
さいごにいくつか、沖出ししたあとのアコヤ貝を
開けてみてもらいました、
すると、1つめにナチュラルグレーの真珠が!
取り引きされないんですよ。
だから逆に、ちゃんとあつめると価値が出るのです」
まさに「うまれたままのパール」が見られて、
よかったです。
中村さん、一宮さん、ありがとうございました!