昨年2019年の秋、「アコヤ貝が大量死している」という
ニュースが流れました。
それを見たとき、わたしたちは、
「あ、これって、もしかしてマズいのでは?」と、
うっすら思いましたが、そのうち忘れてしまいました。
その後しばらくしてから、
いつもHOBO SIRI SIRIでお世話になっている
「宇和海真珠」の一宮さんから、連絡をいただきました。
一宮さんは、こうおっしゃいました。
「例年のように『春獲れ』の時期を待っていたら、
おそらく、必要な量のパールは確保できません」
それは困った、受注会ができなくなってしまう。
あわてましたが、自分たちではどうしようもありません。
結果からいいますと、
宇和海真珠さんが精力的に動いてくださり、
その時点で手に入るパールをかきあつめてくれたおかげで、
幸いにもわたしたちは、
あるていどの量のパールを入手することができました。
昨年、パールにいったいどんなことが起こっていたのか、
一宮さんに、あらましを教えてもらいました。
という話を聞いたのが、8月の末ぐらいでした。
真珠をつくっている途中の貝が死んだのではなくて、
やがて真珠を育てる母貝となるはずの稚貝(ちがい)、
つまり貝のこどもですね、
これが大量に死んでしまったんです。
ひどい地域だと6割とか、死んだところもあって。
はっきりとした原因は不明です。
外洋から本来日本にいないプランクトンが入ってきたり、
考えられる要因はさまざまあるんですけど、
根本的な原因はわかりません。
病気でないということだけは、たしかです。
現場への影響は、やっぱりあります。
たとえば高齢で養殖をされているかたが、
これからあらたに母貝を買い付けると
またお金がかかるから、
この歳で借金するくらいなら、もうやめちゃおう、
ということで、廃業されるところも出てきています。
そうなると、仕入元がなくなるわけですから、
わたしたちのような卸屋も困るわけです。
ちょっとまだわからない感じです。
真珠の養殖は数年かけて行うものなので、
今年、稚貝がたくさん死んでしまった影響が
この先どんなふうに出てくるか、まだ読めないんですよ。
ただ、来年あたりはいったん、8ミリとか9ミリとか、
大きい珠は減産するでしょうね。
白い真珠自体が例年よりすくなくなるわけですから、
ナチュラルグレーのバロックパールは、
さらにすくなくなると思います。
品質はまったく問題ありません
母貝がだいじょうぶだったのに、
なぜ「春獲れ」を待つことができなかったかというと、
今回の受注会のために声をかけていた養殖屋さんが、
もしも冬に浜揚げ予定の貝も
死んじゃったらかなわないってことで、
早めに浜揚げしちゃったんです。
そのなかにあったナチュラルグレーのバロックパールを、
SIRI SIRIさんや「ほぼ日」さんと相談しつつ、
うちもあるていどリスクを取って、
できるかぎりの量をかきあつめて、押さえました。
そうしないと、すぐ、ほかのところに取られちゃうので。
なんかいま、ナチュラルグレーのバロックパールは、
人気が出すぎてるんですよね。
早めに収獲したのでちょっと心配していたのですが、
品質は、昨年よりややバロックの度合いがつよいくらいで、
まったく問題ありません。
いつもどおりのクオリティ感で、
HOBO SIRI SIRIのジュエリーをつくれると思います。
真珠というものは、
人間の手で完全にコントロールできない自然のもの、
まさに「海産物」であることを痛感しました。
例年は「とれたらスタート」だったのが、
今年は「もう、とれてます」ということになります。
具体的には2019年の秋に浜揚げされたパールなので、
実際には「春獲れ」ではなく
「秋獲れ」ということになるでしょうか。
ほしいと思ってくださるかた全員のご希望に
応えられるどうかわかりませんが、
できるかぎりの量は確保しましたので、
どうかひとまず、ご安心いただければと思います。
一宮さんのお話にあったように、おそらく来年2021年は、
今年以上にナチュラルグレーのバロックパールが
入手しづらくなる可能性があります。
また、来年以降のパールの状況自体も不透明です。
その意味では、今年の受注会は、
ほんとうに貴重な機会になるかもしれません。