ここは、ヘルシンキ市内のアパルトマン。
日本でも大人気のインテリアブランド
「KAUNISTE」(カウニステ)を運営する
クリエイティブディレクター、
ミッラ・コウックネンさん(Milla Koukkunenさん)の
お宅を訪ねました。
今回「紙上旅行」でつくる
プリント生地のワンピースとスカートは、
もともと、カウニステがつくっている
インテリアファブリックがもとになっているんです。
今回、服地にするにあたっては、
生地えらびからプリントまで、STAMPSが担当。
日本でつくった製品をヘルシンキまで運んで、
ミッラさんにじっさいに着てもらいながら、
彼女が、大胆、かつ繊細なこのデザインをつくった、
その背景をおたずねしました。
<ミッラ・コウックネンさんのプロフィール>
Milla Koukkunen
ヘルシンキ生まれ。
2008年に4人の仲間で立ち上げた
インテリアブランド「KAUNISTE」(カウニステ)の
クリエイティブディレクター。
創業から、製作、プロデュース、
営業、運営、接客まで、KAUNISTEのすべてを担当。
専属のデザイナーをもたず、
力のある国内外のクリエイターと協業し、
ていねいな作品をつくりつづけている。
中国、イギリス、フランスへの留学経験があり、
5カ国語に堪能。
▶KAUNISTEのwebsite
▶KAUNISTEのInstagram
[2]
アートはふつうの暮らしのなかに。
吉川
今回、いろいろな色の服をつくったんですが、
そこに「あったらいいな」と思ったのが、
ミッラさんがプロデュースした、
マッティ・ピックヤムサさんの作品を
プリントした生地でした。
ミッラ
これ、日曜日に描いたから、
「日曜日」(Sunnuntai)っていうタイトルなんですって。
詳しいことはあらためて、
直接マッティから聞きましょう!
吉川
はい、そうしましょう。
ミッラ
マッティが描いた鳥、いいですよね。
そういえば、私、祖母から、
トイッカのガラスの鳥をもらったんです。
吉川
ステキな話ですね!
おばあさんは、アートに関心がおありだったんですか。
ミッラ
いえいえ、ごく普通の人ですよ。
トイッカの鳥って、そういうものなんです。
とくべつなアートコレクターのものじゃなくて、
普通の人が、普通に買うもの。
吉川
そうなんですね。じつは僕、恥ずかしながら、
なんでこんなに高いガラスの鳥が売れているんだろうって、
ずっと不思議に思っていたんです。
でも、それはほんとに
日本的な考え方だったかもしれません。
使わなくてただ置くのに、って、
さっぱり価値が理解できなかったんですが、
思い切って自分で買って、窓側に置いたら、
「あ‥‥」と。すぐに理由がわかったんです。
やっぱりこれって「癒やし」なんだなって。
ミッラ
ふふふ。
吉川
光の当たり具合によって表情が変わり、
しかも刻一刻と変化するんですね。
しかもそれを見せつけるのではなく、
自分で気づく、感じるという豊かさがある。
僕、ダイヤモンドの魅力についても
ほんとうのところで
理解してないように思っているんですが‥‥、
あっ! ‥‥そうか! 今、話していて、
すごくよくわかりました。
オイヴァ・トイッカの鳥は、
アクセサリーとして身に付けられませんよね。
その存在を人にアピールできない、
家に行かないとわからないわけです。
つまり「どう?」って見せるものじゃない。
それがきっと、根底にあるんじゃないかな?
ミッラ
そうですね。
芸術作品だと大きいものが多いので、
どうしてもある程度の空間の中に住んでいたり、
特別な空間を所有していないと飾ることができません。
でもトイッカの作品だと、
スペースをそんなに取らないから、
家の中で置き場所も選べます。
いろいろなところに置くことができます。
吉川
そうですよね。
こうして直接お話しして、
理由が明確にわかりました。
ああ、本当に豊かさを感じます。
この部屋も幸せに包まれた空間だという
感じがしますし。
ミッラ
ありがとうございます。
吉川
ところで、テキスタイルデザインの自由さについて
お聞きしてもいいでしょうか。
日本で洋服に使うプリントって、
わりと緻密な柄が多いんです。
でも、フィンランドだと、マリメッコもそうですが、
自然で大胆、という印象があります。
それも、もしかして、何かが根本的に違うのかな、って。
ミッラさんの小さいころからの、
テキスタイルとの付き合いを聞けたら‥‥。
ミッラ
私、自分で洋服をつくっていたんです。
裁縫が得意だったんですね。そうすると、
自分で着て、着心地がよくなきゃいけないじゃないですか。
だからマテリアルの選び方とか、
着た時に心地がいいってどういうことかっていうことに、
ものすごく時間をかけていました。
もし、売っている洋服を買いに行ったら、
それが好きかどうかだけで、
あっという間に答えは出せるけれども。
服を自分でつくるというのは、
自分で答えを出すために、
すごく時間をかけるんです。
そういう若いころのバックグラウンドがあります。
そして大胆な柄についてですが、
私が育った家では、マリメッコみたいな
大胆なものを使うことは、あまりありませんでした。
母はマリメッコのテーブルクロスを持っていましたが、
あんまり使っていなかったですね。
でも私がカウニステを始めた時は、
絵の世界、アートを日常使いの布にするっていう
発想がありましたよ。
だから最初に、マッティにお願いして、
絵を描いてもらったんです。
その次にレーナ・キソネン(Leena Kisonen)という、
日本でも知られているグラフィックデザイナーに、
ほかにもいろいろなアーティストの方‥‥、
ミロコマチコさん
もそうです。
吉川
あ、そうだ、ミロコさんとも!
そっか、アートをテキスタイルに、
っていう発想が、カウニステの出発点なんですね。
ミッラ
ヨーロッパのテキスタイルのメーカーの多くは、
絵を依頼するとき、加工しやすいよう、
線やパターンで描いてもらうんですが、
カウニステでは自由に「絵」を描いてもらいます。
画材も自由で、
たとえば原画がクレヨンで描かれたものもありますよ。
これがそうですね。
ハンネレ・アイヤラというデザイナーの作品です。
吉川
ああ、なるほど!
マッティさんの「日曜日」の生地が、
のびのびと自由な理由がわかりました。
ミッラ
マッティの作品は、見れば見るほど発見がありますよね。
一瞬見るとお花に見えるものが、
「あれ? これって鳥の巣かも?」って。
「じゃ、これは鳥のタマゴかな」(笑)とか、
そういうディテールが、見どころになっています。
吉川
今回は、マッティさんの絵を、
ぼくらのほうでプリントしました。
洋服にしたときに
ちょうどいいように、すこし縮小して。
日本の京都でプリントしたんですよ。
ミッラ
すごくいいですね。
吉川
とっても腕のいい方にお願いしたんです。
それこそ、パリコレに出るようなブランドが
お願いしているような方です。
デジタルだと、手仕事感が出ないんですよ。
ミッラ
うんうん。ほんとうに素敵。
ほんとだ、比べてみるとわかりますね、
ちょっとした表現のこまかさ!
(じっくり見て)
ここなんて、ブルーを最初に入れて、
そのあとグレーを入れている!
吉川
そうなんです。
原画の再現性、高いと思います。
マッティさんの世界をできるだけちゃんと
伝えられるようにって。
ミッラ
色もすごくクリアですよね。
吉川
そう言っていただけて嬉しいです、
ミッラさん、
明日はマッティさんのアトリエに伺いますが、
ぜひご一緒してくださいね。
ミッラ
もちろんです!
二人のお話、たのしみにしています。
2023-04-09-SUN
フィンランドのイラストレーター / アーティスト、
Matti Pikkujämsä(マッティ・ピックヤムサ)が
インテリアブランド
Kauniste(カウニステ)のために描いた柄をつかって、
ワンピースとスカートをつくりました。
STAMP AND DIARY + ほぼ日
日曜日のワンピース
28,600円(税込)
STAMP AND DIARY + ほぼ日
日曜日のスカート
26,400円(税込)
(C) HOBONICHI