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張替 |
こんにちは。伊東屋の張替と申します。
今日はよろしくお願いいたします。
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ほぼ日 |
お世話になります。
「ほぼ日」の手帳チームです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
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張替 |
‥‥さっそくですが、
手帳と一緒に使うのによさそうな万年筆を
持ってきてみました。 |
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ほぼ日 |
わぁ! すでに、わくわくします。
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張替 |
「手帳と一緒に使う」ことを想定しながら
いくつか選んでみたら、
小ぶりなものが多くなりました。
手帳と比べてものすごく大きいと、
やっぱりバランスが悪いと思いまして。
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ほぼ日 |
たしかに小さいほうが、持ちやすそうですね。
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張替 |
ええ。胸ポケットにさすこともできますし。
また「手帳向き」の機能を持ったものもあって、
こちらはワンタッチ式の万年筆です。
頭をノックすると、ペン先が出てきます。
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ほぼ日 |
つまり、フタがない、ということですか。
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張替 |
そうなんです。
万年筆のフタには、キャップがネジ式になっていて
ぐるぐるまわして開けるものなどもあるんですが、
それだと両手を使う必要があるんですね。
でもこれは、片手だけで使いはじめられるので、
立ったまま手帳にメモしたいときなどに
便利なんですよ。
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ほぼ日 |
‥‥なるほど。
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張替 |
実を言うと私、自分の手帳用にもこちらを
使用していたのですが、使いやすくて良かったんです。
商品としてはPILOTの「キャップレス デシモ」
というものですね。
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ほぼ日 |
いまお持ちくださったものだけでもたくさんあるし、
この売場にも相当の数が並んでいますし、
万年筆って、本当にいろんな種類があるんでしょうね。
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張替 |
そうですね。いろいろあります。
せっかくなので、すごいものをお見せしますと‥‥
ちょっと待ってくださいね。
(立ち上がり、奥のケースから持ってくる)
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ほぼ日 |
(わくわくわくわく) |
張替 |
‥‥こちらは70万円くらいするものです。
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ほぼ日 |
な、70万円‥‥!
そして、見るからに高そうです。 |
張替 |
筆記具というよりも、
ぜいたく品のようなものではありますが、
キャップの頭部分に
数学者のアインシュタインが数式を書いた
本物の紙が入っているんです。
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ほぼ日 |
本物‥‥ですか。
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張替 |
ええ、本物です。
作っている人がオークションで落札したものを
中に入れているらしいんです。
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ほぼ日 |
お金持ちの方のコレクションアイテムというか、
なんというか。
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張替 |
そうかもしれません(笑)。
そして、こちらは軸が翡翠(ひすい)でできた
万年筆です。
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ほぼ日 |
こちらもまたぜいたくな‥‥
すごい世界ですね。 |
張替 |
このごろの万年筆は、各社がデザインに凝っていて、
非常に個性的なものが多いんです。
また、こういったものもありますよ。
「プランジャー式」と呼ばれる吸入式です。
こんなふうに引っ張って、インクを入れるんです。
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ほぼ日 |
モノとして、そそられますね。
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張替 |
そうなんです。
しかも、すごくマニアの人は、これだけでは物足りなくて、
さらに注射器のような部品(上の写真の銀色の部品)
を使って、インクを吸入したりするんです。
実際のところ、別にこれを使わなくたって
インクは入るんですけど(笑)。
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ほぼ日 |
なんだか儀式のようです。
でも‥‥いいですね。
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張替 |
追求していくと、非常におもしろいんですよ。
ただ、こういった高価なものというのは、
はじめから買うものではないですね。
みなさん、最初は使いやすい手頃なものから
万年筆自体に慣れていって、
その中で人によっては、こうした趣味の領域に
行く人もいるという感じです。
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ほぼ日 |
初めて万年筆を買う方々は
みなさん、どんなことを基準に
最初の一本を選ばれていますか?
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張替 |
売り場だと、まずはみなさん、
やはり「試し書き」されることが多いですね。
そして、持ったときの
「重さ」「持った感じ」「書いた感じ」などを
確かめていらっしゃいます。
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ほぼ日 |
まずは「試し書き」。
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張替 |
はい。「試し書き」はぼくらとしても、
ぜひ買う前にしてもらいたいことの一つです。
ただ「試し書き」はとても大切なんですが、
じつはもう一つ
気にしてほしいことがあるんです。
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ほぼ日 |
なんでしょう。
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張替 |
それは「自分の使い方に合った字幅(じはば)を選ぶ」
ということなんです。
万年筆には「字幅」という「ペン先の太さ」があるんですけど、
どうしても「字幅」が「細い」ものは、
「太い」ものより
書くときに引っ掛かりを感じるんです。
逆に「太い」もので書くと
書き味が「なめらか」なんですね。
だから、試し書きをして、太いものを
「これ、すごく書きやすい」っていうふうに買われて、
家に持って帰っていざ書こうとしたときに
「太すぎて使いにくかった」というケースがあるんです。
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ほぼ日 |
あぁー。
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張替 |
だから、最初に買うときは、
「自分が使うシーンをしっかりイメージしながら、
試し書きをして、選ぶ」
というのがいいかな、と思います。
手帳と一緒に使うのか、原稿用紙に書きたいのか、
手紙を書きたいのか、サインをしたいのか。
それを想定した上で「試し書き」していただく。
そうすると滑らかさだけに惑わされずに
使いやすいものを選ぶことができると思います。
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ほぼ日 |
「字幅」って、たくさんあるんでしょうか。
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張替 |
スタンダードなものになればなるほど、
細かく分かれてますね。
極細、細、中細、中字、太字とか、いろいろ。
あと「字幅」で注意していただきたいのが、
外国のメーカーと日本のメーカーだと
「字幅」の基準がまったく違うんです。
たとえば「細字」という名前から細いと思って買って、
実際使ってみると
「‥‥あれ、すごく太い」
ということがあるんですよね。
だから、その言葉に惑わされないで、
実際に試し書きしてもらって、
見た目の太さで選んでもらうのがいいと思います。
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ほぼ日 |
安易ですが、
「手帳には、細めのものを買っておけばいい」
ということでもないですか?
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張替 |
字幅が細いものは手帳などに便利ですけど、
大きく書きたい場合に
字としては貧相になっちゃうんです。
だから、その中間というんじゃないんですけれども、
いいおさめどころをお客様に判断してもらうというのが
いいかな、と思います。
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ほぼ日 |
万年筆って、けっこう値段に幅がありますけど、
やっぱり値段が高いもののほうが
書き味が良いのでしょうか。
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張替 |
実はそうでもないんです。
値段の理由って、書き味だけではないんですよ。
さきほどお見せしたもののように翡翠を使っていたら、
それが理由で値段で上がりますよね。
高いものにはそれぞれ、高いなりの理由がありますけど、
それが、買う人が求めている部分かどうかは
また別なんです。
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ほぼ日 |
「重いものがいい」とか
「軽いほうがいい」とかってありますか?
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張替 |
ああ、重さや軽さも一概には言えなくて、
ほんとうに好みになってしまいますね。
傾向としては、比較的、
男性のほうが重いものが好きで、
女性のほうが軽いものが好きな印象はあります。
ただそれも本当に人それぞれで、
「重いのがいい」という人、「軽いのがいい」という人、
どちらもいらっしゃるんです。
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ほぼ日 |
個人的な話になりますが、わたし、
極細のボールペンとかだと、
先をつぶしちゃうことがあるんですけど、
万年筆も筆圧には気をつけたほうがいいんでしょうか。
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張替 |
あ、筆圧はとても大事です。
ぼくは修理も担当しているので、
お客さまが使ってこられたものをよく見るんですけど、
お客さまの筆圧とペン先とが
まったく合ってないものってよく見るんです。
万年筆のペン先って、
柔らかいものと固いものがあるんですが、
筆圧が強い人が先のやわらかいペンで書くと、
ペン先のかたちが変わってしまうことがあるんです。
インクが出すぎるくらいなら、まだいいんですが、
先がグッとひらいちゃうこともあって、
そこまで行くと、おすすめしません。
大まかにですけど
「筆圧が高い人は固めのペン先、
筆圧が弱い人はやわらかめのペン先」
を選ぶといいと思います。
また、ペン先がやわらかいもののほうが
筆のような書き心地になって、
書く線にニュアンスは出やすいんですが、
扱いにくくはなります。
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ほぼ日 |
持ち方のコツというのも、あるのでしょうか。
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張替 |
この、ペン先の平たくなっているところの先に
丸いペンポイントがついているのですが、
この部分が紙に触れるように持つ必要がありますね。
万年筆は、ここが紙に当たらないと
うまく書くことができません。
だから、ペンポイントがきっちり紙に当たることが、
いちばんいい使い方なんですね。
ただ、それだけ守れば持ち方は人それぞれで大丈夫です。
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ほぼ日 |
ペンの先の、この切れたところを伝って、
インクが流れるんですか?
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張替 |
そうです、そうです。
インクはこの切り割りを通ってきます。
そして、この切り割りが長ければ長いほど、
ペン先っていうのは柔らかくなります。
逆に、切り割りが短いと開かないので、
硬くなります。
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ほぼ日 |
知りませんでした。
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張替 |
また、ペン先のかたちにも色々あって、
先がすごく細いものもあれば、太目のものもあります。
そして先が細いほうが、
筆みたいなタッチで書けるペンが多いですね。
太いものは、ペン先が動かないので硬めなんですよ。
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ほぼ日 |
なるほどー。
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張替 |
さきほど筆圧が強いっておっしゃったんですけど、
強い力で書く人っていうのは、
メモでも何でも思い付いたことを
バーッと素早く書きたいんだと思うんです。
そうすると、ペン先が硬いほうが向いてるんですね。
柔らかいペン先で、スラスラスラ‥‥みたいに
ゆっくり書く余裕がない感じならば、
硬いペン先のものがおすすめです。
やわらかいものを使っちゃうと、どうしても
先がパチンとはねちゃったりすると思います。
以前、YouTubeで万年筆で
すごく繊細なイラストが描かれている動画が流行って
「あれと同じペンがほしい」とたくさんのお客さまが
買っていかれたことがあるんですけど、
それは、ペン先のやわらかい
すごく扱いの難しいペンだったんですね。
非常に人気で、
メーカーの在庫が無くなるほどだったんですけど、
そのときは「インクが出ない」
また逆に「インクがペン先にたまってしまう」などの
お持ち込みがたくさんありました。
あのときは、悲しかったですね。
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ほぼ日 |
やっぱり、それぞれの人に合ったものを
選ぶ必要があるんですね。
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張替 |
ええ、できるだけ、自分の使い方や用途に
ぴったりのものに
出会っていただけたら、と思っています。
(後編につづきます。) |