1986年生まれ。
多摩美術大学情報デザイン学科卒業。
Web制作会社やデザイン会社にて
さまざまなジャンルのデザインに携わるなかで、
「議論の可視化」に興味を持つ。
2013年、Tokyo Graphic Recorderとして活動開始。
同年、Yahoo! JAPANに入社し、
UXデザイナーとしての業務を行いながら
グラフィックレコーディングの
研究と実践を続けている。
著書に『Graphic Recorder——議論を可視化する
グラフィックレコーディングの教科書』
(ピー・エヌ・エヌ新社)。
![グラフィックレコーディングをやってみました!](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/main_title.jpg)
![グラフィックレコーディングをやってみました!](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/main_title_sp.jpg)
会議などで飛び交う、いろんな人の「議論」を
絵や図などのグラフィックに「可視化」して記録するという
ちょっと不思議なコミュニケーション手段があります。
その名も「グラフィックレコーディング」。
自分の考えを言葉でうまく伝えたいときや、
上司に囲まれて発言しにくい会議などに、有効なのだとか。
「考え」を「書く」ことで「整理」できるということで、
ほぼ日手帳との共通点もありそうです。
いったいどんなものなのか、
興味を持ったほぼ日手帳チーム数名が
「グラフィックレコーダー」の清水淳子さんをお迎えし、
話をくわしく聞いてみることにしました。
模造紙を使って、手帳チームのミーティングを
描いてもらったところ、なかなかおもしろい発見も‥‥。
インタビューと実践のようすを、全2回でお届けします。
profile
-
清水淳子Shimizu Junko
-
グラフィックレコーディングって?
会議の中での人々の議論を、図式や絵などを使ってリアルタイムで可視化する方法。
「グラフィックレコーダー」は会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。
グラフィックレコーディングって?
会議の中での人々の議論を、図式や絵などを使ってリアルタイムで可視化する方法。
「グラフィックレコーダー」は会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。
- ――
- 今日はお越しいただき、ありがとうございます。
清水さんの著書『Graphic Recorder』を読んで、
会議やコミュニケーションを活性化する
「グラフィックレコーディング」という方法を
はじめて知りました。
「自分の考え」を「書く」ことで「整理する」‥‥
それって、ほぼ日手帳にも応用できそうだし、
「書くこと」つながりで、お話をお聞きできたら
おもしろそう! と思ったんです。
- 清水
- ありがとうございます!
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_01.jpg)
- ――
- まず「グラフィックレコーディング」って
ちょっと聞き慣れない言葉なのですが、
どんなものなのでしょうか?
- 清水
- 会議の中での人々の議論を
図式や絵などを使って
リアルタイムで可視化する、ということです。
グラフィックレコーディングによって
議論の衝突や、行き詰まりなどを
解消することもできるんです。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_02.jpg)
実際に会議の場に出向き、耳から聞こえる情報をもとに
議論を1枚の模造紙にまとめていきます。
- ――
- 一般的な会議のイメージだと、
ホワイトボードに、出てきた案件を
箇条書きにしていって‥‥と、
文字や単語をピックアップして
書くことが多いですが、
絵や図を使うところがおもしろいですよね。
- 清水
- 話の文脈や事実関係を整理して、
1枚の紙の上にグラフィック化することによって
その場にいる全員が、
ひと目で全体を俯瞰できます。
そうすると、関係性や構造が直感的にわかるし、
みんなの認識を合わせやすくなるので、
自然と、その場の会話も活性化するんです。
- ――
- そもそも、どうやって思いついたんですか?
- 清水
- 前職のデザインコンサルティング会社で
化粧品の店舗やワインのパッケージなどの
いろいろなデザインプロジェクトに関わっていたのですが、
そのとき私は25歳で、まわりが40代ぐらいで。
チーム内で、年上の方に
うまく自分の意見を言えなかったり、
流れに飲まれそうなときがあったんです。
- ――
- ええ。
- 清水
- 言葉ではうまく伝えられなくて、
このままだと流れが変な方向に行きそうで、
どうしよう‥‥! って困ったときに
そのあたりにあった紙を使って
グラフィックで描いてみたら、
うまく伝えることができたんです。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_03.jpg)
- ――
- 実際に会議で困った経験から
生まれたんですね。
- 清水
- はい。そのあとにも、50代ぐらいの社長に
「ちょっとここ、多分違うと思うんです」って
意見を言いたいときに使ったらうまくいって。
グラフィックに描いて説明することで、
「角」が立ちにくくなるなと思ったんです。
- ――
- そういう場では、言葉だけより
イメージを共有しやすいんですね。
- 清水
- もうひとつの理由としては、
私がイベントや勉強会に行ったときに
グラフィックでとったノートを
たまたまウェブでアップしたら、
「これはいいね」って言ってくれる人がいて。
- ――
- ノートをとるときもグラフィックで!
- 清水
- そうしているうちに
「うちのイベントの内容を描いてください」
みたいな依頼が来だしたんです。
そこから、いろいろと活動を広げていきました。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_04.jpg)
文字だけのページやグラフィックだけのページがあるなど
使い方を限定しない、自由なメモになっています。
- ――
- 清水さんは、学生時代から
こういうノートの取り方をしていたんですか。
- 清水
- 小学校5年生ぐらいのときには
こんな感じで、図解みたいに書いていた気がします。
小学校や中学校だと、
「横線が入ったノートを買いなさい」って
言われがちなんですけど、
私は横線がない方がいいなと思って
無地のノートを買って使っていましたね。
- ――
- 「Graphic Recorder」の本を出してから
反響や変化はありましたか?
- 清水
- 北海道で小学校の先生をしている人から
突然、メールが来たりしました。
「黒板の書き方で悩んでいたのですが、
ヒントがもらえて、同僚にもすすめました」とか。
本を出したことで、デザイン業界だけでなく
いろいろな職業のかたにも
反応をいただけたのは嬉しかったです。
- ――
- 確かに、参考になりそうですね。
清水さんは、いろいろな企業のかたから
「ミーティングを記録してほしい」という依頼も
受けているんですよね?
みなさんの反応はどうですか。
- 清水
- ありがたいことに、「やってよかった」という
お話をいただることが多いです。
ふだん話し合えているつもりでも、
第三者が客観的に描き出すと、
「けっこう無駄な話をしていたな」
っていうことがわかったりするみたいです。
- ――
- ああ、なるほど。
- 清水
- 逆に「今までは気づかなかったけど、
実は、けっこうしっかり考えて話せていたんだ」
っていう前向きな発見もあったり。
普段と違うものに気づいたという
お話をいただきますね。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_05.jpg)
- ――
- ミーティングや会議って、
ほぼすべての会社やチームで、やるものですよね。
仕事以外でも学校や、ご近所の会合などもありますけど、
そうした会議で実際、
うまく進行できなくて悩んでいる人が
多いんじゃないかなと思うんです。
- 清水
- ええ。
- ――
- たとえば、ダメ出しが怖くて意見を言えないとか、
発言する人がいつも同じだとか、
話がそれて結論がまとまらないとか‥‥。
- 清水
- そうですね。
依頼をいただく企業のみなさんも、
ほとんどが悩みを持っていらっしゃいます。
「いま身の周りにあるコミュニケーションの
課題を書き出し、その原因を考えてみましょう」
というワークショップをやると、
みなさん、異常に盛り上がって!
もう、終わらないんです(笑)。
- ――
- 課題って、たとえばどんなものでしょう?
- 清水
- 立場の差が、まずは大きいですね。
年上の人や経験がある人に対しては
何も言えなくなってしまうとか。
- ――
- 多かれ少なかれ、どの会議にも
それは必ずあるのかも。
- 清水
- それから、そもそもの発言量が少ない、
発言が出ないっていうパターンも多いです。
集まったものの、「シーン」みたいな。
- ――
- そういうときは、どうするんですか?
- 清水
- 根本的にシーンとしすぎている場合は、
A4の紙を配って、
「5分間、自分が思っていることを書きましょう」
という時間を作ってから発表してもらいます。
そうすると、意見が出てくるんですよ。
実はみなさん、考えをお持ちなんです。
- ――
- 口では言いにくいけど、
紙に書けば意見が出やすいんですね。
では、会議でよくありそうなケースとして、
たとえば、対立する意見が出て、
平行線をたどりそうな場合は、
どうやってまとめていくんですか?
- 清水
- 描きながら私がまとめたり、
「こっちのほうがいい」とマルをしたりはしません。
それよりも、反対意見になっている状態を、
鏡のように描き出すことによって、
「じゃあ、この反対をどうとらえようか」って、
みんなが考えられるようにしますね。
- ――
- 対立を、見えるようにする。
- 清水
- 反対のことを言っているのにもかかわらず
会話は反対じゃない雰囲気で進んでいる、
ということもあるので。
それが、描くことで明らかになるんです。
- ――
- ああ。なんとなく、気まずい雰囲気になるのを
避けるために、言い方をやわらげてしまったりして‥‥。
- 清水
- そう。表面上は穏便に進めているけど、
実は反対意見を言っているとか。
または、反対だと思っているのに
ハッキリと言えない人がいたり。
だから、それは、
描いて明らかにしておくほうがいいんです。
- ――
- そういう点を、より明らかにしやすいのも
グラフィックレコーディングの特長なんですね。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_06.jpg)
- ――
- これまでに、清水さんが第三者として参加して
おもしろかった会議はありますか?
- 清水
- ある会議を聞きながら描いていたときに、
その場のひとりが、
「いや、違う。ここはこうなんだよ」って、
立ち上がって、ペンを持って描き出したんです。
そうしたら、他の人も
「いや、でも、そこはそうでしょう」って参加して。
最後には5人ぐらいいた全員が
ペンを持って立ち上がっていたことがありました。
![](/store/techo/ja/magazine/2017/graphicrecording/images/photo_07.jpg)
- ――
- おお!
- 清水
- カラオケでいうマイクの取り合いみたいに(笑)。
それまで無口だったエンジニアさんが、
描きながらしゃべり始めたりして、
その会議の場が、すごくいい雰囲気になっていましたね。
(後編につづきます)