青森県五所川原市生まれ。
大学院修士課程で教育学と天文学を学んだ後、
1994年より、公開天文台の
兵庫県立西はりま天文台研究員として
望遠鏡で見る星空の魅力を伝える仕事に従事。
1998年からは
東京・三鷹にある国立天文台天文情報センターにて
天文学の広報と普及事業に携わってこられました。
「ほぼ日」では、2012年の
「金環日食すべりこみ講座。」で
金環日食を安全にたのしむポイントを
教えていただきました。
国立天文台の広報として働く小野智子さんは、
仕事のこともプライベートのことも、
ほぼ日手帳にメモすることを習慣にされています。
記憶と照らし合わせられるように書かれたメモは、
小野さん独自のルールに沿ったものでした。
たとえば、会議でキーワードだけを書いたり、
メモページの右ページだけを使ったり。
小野さんのほぼ日手帳には、
読み返した時に思い出すためのきっかけが、
たっぷりと詰まっていました。
小野智子さんのプロフィール
-
- ――
- よろしくお願いします。
小野さんはふだん、「ほぼ日手帳」を
どう使っているのでしょうか。
- 小野
- weeksをプライベートでも持ち歩いて、
スケジュール帳として使っています。
カズンは、デスクの置き手帳にしていて、
その日に何をしたかの記録をしています。
- ――
- 仕事とプライベートで、
使い分けをされているんですね。
- 小野
- weeksは、仕事でも、休日に出かける時でも、
荷物をよっぽど軽くしたい時以外は、
カバンに入れて持ち歩きます。
アナログな人間なので、
紙とペンがないと、なんだか落ち着かなくて。
あっ、これが実際に出かけた先で
メモが必要な時に切って使ったところです。
- ――
- メモページを切ったんですね!
- 小野
- 手帳の下敷きをあてて
パリッと切るのに使ったり、
あとは、定規がわりに使ったり。
- ――
- カッターにも、定規にも。
下敷きって、便利ですね。
- 小野
- 一時期は、手帳を使わないで、
スケジュール管理も、メモも、
スマートフォンで記録していた時期があったんです。
でも、矢印をひっぱったり、文字を囲んだり、
デジタルではすぐにできないことが、
紙ならフリーに書けるのがいいですね。
- ――
- お仕事のスケジュールは
どう管理されているんでしょうか。
- 小野
- スケジュールが自分の頭に
入っていないと気が済まないんですよね。
スマートフォンに予定を入れてはいるけれど、
同じことを手帳にも書いています。
朝、出勤でバスに乗る15分間に手帳を見て、
「今週は何があるかな?」という確認を、
毎朝のようにやっているんです。
- ――
- 毎朝の習慣なんですね。
他にも、お仕事にどう活用しているんでしょう。
- 小野
- 仕事のことなら何でも、
手帳にすべて書くようにしています。
以前は会議資料として配られたプリントに
メモを書き込むこともありましたが、
どこに書いたかなって、探さないと出てこないんです。
- ――
- 書いたはずなのに、
場所を忘れちゃうことってありますよね。
- 小野
- 広報という仕事柄、電話をいただくことも多いので、
机の左側にいつも手帳(カズン)を置いています。
電話がかかってきたら、
まず手帳を開いてから電話を取って、
手帳にメモを書くようにしています。
新聞記者さんなどから電話取材を受ける時でも、
冒頭にお名前をお聞きして、いろいろ喋っている間に、
相手のお名前を忘れてしまうこともあるんです。
- ――
- 固有名詞だけ、うっかり抜けてしまうんでよね。
- 小野
- そのかたと実際にどこかでお会いした時に、
「先日はありがとうございました」と言われて、
「ええと、誰だっけ」なんてことになると失礼ですし。
電話を取ってすぐお名前を書くようにしています。
- ――
- はい、よくわかります。
手帳をいつもそばに置いているんですね。
その日のことを何でも書けるノートみたいな。
- 小野
- はい、基本的にメモ代わりですね。
机には過去の手帳も並べてあるんです。
手帳を1年間使い終えたら背表紙に年号を書いて、
仕事机の棚に並べてあります。
去年のことを調べたければ、手帳を取り出して、
「去年はこうやってやったな」と思い出したり。
手帳には、過去の仕事メールにも残っていない、
自分しか書いていない記録があったりするので。
- ――
- 過去の自分が助けてくれるんですね。
メモページには、
どんなことが書かれているのでしょうか。
- 小野
- たとえば、打ち合わせ用のメモなら、
話しながら書くので、細かいことは書きません。
全部書いちゃうと話半分しか聞けないから、
打ち合わせのメモは、かなりざっくりです。
- ――
- 思い出すためのヒントですね。
その日のことは、その日のページに
記録していますか。
- 小野
- 基本的には、その日に。
会議が集中する日には、1ページで書ききれないから、
休みの日のページに矢印を引っ張って
続きを書いたりしています。
後ろのメモページは落書き帳ですね。
考えをまとめたい時には、
ペンを持って紙に向かうんです。
- ――
- 小野さんのメモって、すごくきれいで、
几帳面に整理されていますね。
ご自身用のメモとは言いつつ、
かなり、きれいに書かれていますよね。
- 小野
- weeksのメモページの中に、1本だけ太めの線がありますよね。
学生時代に使っていたノートの癖で、
左のスペースに小見出しをつけたりして。
- ――
- 習慣になっているんですね。
この線を、「秘密の縦ライン」と呼んでいます。
- 小野
- 絶妙ですよね、この濃さが。
- ――
- ありがとうございます。
ちなみに、見返したくなるような
思い入れの強いページってありますか。
- 小野
- 2014年に父を亡くしているんですが、
父が倒れてからの4年半に、私はどれくらい
彼に会いに行けたんだろうと思って、
ちょっと振り返ってみたんですね。
- ――
- ええ、はい。
- 小野
- 2010年に外出先で突然倒れて、
一命は取り留めたんですけども、
その後ずっと意識がないままだったんです。
私の実家は青森で、
当時は新幹線が通っていなかったので
飛行機で帰っていたんですね。
飛行機の搭乗券を全部残していて、
途中から新幹線の記録もするようになりました。
- ――
- 振り返れるのは、手帳ならではですね。
- 小野
- 振り返れるのが紙の強みだと思いますし、
ちゃんと1冊になっているのが
いいところだなぁと思っています。
- ――
- 手帳に移動の記録を残していたから、
思い出すきっかけになっていたんですね。
- 小野
- 何から何まで書いていなくても、
思い出すきっかけになりますから。
「そういえば、この時はこんなことがあったな」
というのが、なんだかうれしい。
たとえば、病院でもらった薬の記録とか。
- ――
- ああ、いいですね。
- 小野
- おくすり手帳も持っているんですけど、
薬局でプリントアウトされた
シールを貼るようになっていますよね。
でも、昔のシールは印字が消えちゃうことがあって。
だから、本当に大事なことは
ちゃんと書いておいたほうがいいかなと。
- ――
- お財布に入れたレシートの文字も、
薄くなったりしますもんね。
- 小野
- あと、スマートフォンに記録した
スケジュール帳なんかも、
過去のものって消えちゃうんです。
そこに気づいて、手帳が大事だなって思いました。
やっぱり紙とペンだと。
- ――
- データは消える。
- 小野
- たいしたこと書いてあるわけじゃないですけど、
何かが残っている、ということは、
誰にとっても、自分にとっても、いいので。
- ――
- あとになって、うれしさがわかる。
小野さんのweeksを見て気になっていたんですが、
メモページの右側ばかりに書かれていますよね。
- 小野
- これは単に私の癖なんですけど、
右側に書いてあることについて、
何かコメントしたり、メモを書き足したり、
あるいは、落書きのようなものを書く時とかは
左に書くようにしていますね。
- ――
- 右ページだけ書く、というのは初めて見ました。
ノートも、同じように使うんですか。
- 小野
- はい。ノートは基本、右ばかりです。
紙がもったいないですけど、
それでも、こういう書き方をしちゃうんです。
左ページに書く時は、
右手に紙が擦れる感じが苦手で。
- ――
- はあー。昔からですか?
- 小野
- もう、ずっと右ページばかりに書いています。
私にとっての左ページは、
特別なことのために取っておくような
感覚なのかもしれません。
仕事のことを右ページに書きだした後で、
ふと思い出したことを、左ページに書き足したり。
- ――
- あくまでも右がメインで、
左に補足や大事なことが書かれている。
大事な情報が埋もれない工夫ですね。
- 小野
- そういうことですね。
時系列に書いたメモの後ろに書き足すだけだと、
本当は関係している情報のはずなのに、
物理的に離れちゃうんです。
- ――
- いつでも差し込めるようにしてあるんですね。
自分でルールを作ると、使いやすいですね。
- 小野
- 最初からルールがあったわけじゃないけれど、
手帳を使っていくうちに、
知らないうちにルールができている感じですね。
癖みたいなものですが、
かといって、誰かに説明するものでもないので。
- ――
- たしかにそうですね。
そういうルールを、みんなが持っているといいですね。
- 小野
- 取材をきっかけに改めて手帳を見直してみて、
いろんなことを思い出せました。
- ――
- 思い出すきっかけが全部、
手帳の中に入っていますもんね。
- 小野
- 書いているうちに記憶しているので、
実は見返さなくても覚えてはいられるんです。
自分の手を動かして書いたことで、
この辺りに何かを書いていたなっていう、
そういう記憶が頭に残るんですよね。
- ――
- 引き出しの鍵だけ覚えておけばいい、
みたいな感覚ですね。
- 小野
- ああ、そうです。
どこに何を入れたかさえ覚えておけば、
細かいことは、開ければわかる。
- ――
- 小野さんのお話を聞かせていただいて、
自分で作ったルールに沿って
使ってくださっていたのが、ありがたいです。
- 小野
- ありがとうございます。
- ――
- ありがとうございました!