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LIFEのBOOK ほぼ日手帳

LIFEのBOOK ほぼ日手帳

「ほぼ日手帳2018」では、
陶器作家でありアーティストの
鹿児島睦(かごしま・まこと)さんと
ふたつの手帳カバーをつくりました。
オリジナル用の「鳥花柳(とりかりゅう)」と、
カズン用の「ネコスリー」。
どちらも眺めるたびにうれしくなる、
繊細な図柄のかわいい手帳カバーです。
完成したタイミングで手帳チームが
鹿児島さんの事務所をたずねたので、
その時のお話をご紹介します。

2選ぶ人に喜んでほしくて。

ーー
今回は本当にありがとうございました。
どちらのカバーも、ついにできました。
鹿児島
こちらこそありがとうございました。
かわいいですね。
ーー
おかげさまで、とてもすてきなものができました。
実は今回、鹿児島さんにデザインを
引き受けていただけるかどうか、
ドキドキしていたんです。
鹿児島
そんな、ドキドキしなくていいのに(笑)。
ほぼ日手帳って、ブームなどではなく、
草の根的に広まってきたものじゃないですか。
そういうプロダクトって、ぼくも好きなんです。
作り手側の
「大変であっても、おもしろいことをやりたいよね」
という意識が伝わって来る感じがあるというか。
ーー
そんなふうに言っていただけて、うれしいです。
今回の鹿児島さんの手帳カバーは、
ほぼ日の乗組員たちにも人気なんです。
たとえば
「『ネコスリー』を使いたいから
こんどの手帳はカズンにしようかな」
と言っている人もいるくらい。
鹿児島
なんと。ありがたいですね。
リネン生地へのプリントって難しいから、
もっとざらざらするかと思ったんですが、
きれいに仕上がりましたね。
ーー
今回「ネコスリー」で、
ネコをモチーフにされた理由はあるのでしょうか。
鹿児島
多くの人が喜んでくれそうだから、
というのがまず一つ。
そして手帳ってすごくパーソナルなものですけど、
いつも一緒に行動してくれる<お供>が
3匹いてくれると、たのしいかなと思ったんです。
ーー
たしかにこの手帳を持っていると、
ネコたちと毎日を一緒にすごす感じがあって
なんだか心強いです。
そして「鳥花柳」のほうは、
鹿児島さんが10年前に描かれた作品の
アレンジなんですよね。
鹿児島
そうですね、今回だいぶ新しくしていますが、
10年前に描いたものをもとにしています。
すごく好きな図案だったのですが、
当時のものは見てもらえる機会が短くて、
すこし残念に思っていたんです。
また、今のほうが自分の技術も上がってるはずだから、
そういった意味でも、
もういちど絵にしてみたいと思ったんです。
ーー
どちらもカラフルな仕上がりになりましたが、
2つとも最初は1色だったんですよね。
‥‥これはこれで、すごくすてきですけど。
鹿児島
最初は1色のほうが持ち歩きやすいかな、
と思ったんです。
だけど眺めていたら
「ちょっと味気ないかな」と思いはじめ、
いろいろな色を使うことにしました。
1年間そばにある手帳だから、
持つ人の気持ち次第で、見るたびに印象が
変わるほうがいいかなと思って。
『昨日は絵のこの部分がいいと思ったけど、
今日はこの花が気になるな』とか。
ーー
実際の刷り上がりを見たとき
「なんてきれいな色の組み合わせなんだろう!」
と思いました。
また「鳥花柳」は、こんなに淡い階調のほぼ日手帳が
これまでなかったから、それもいいなと思って。
鹿児島
淡い色の組み合わせもいいですよね。
ーー
わたし(担当のほしの)の話ですが、
最初、鹿児島さんのことを知ったのは、
雑貨店の「doinel(ドワネル)」さんの個展で見た
ハンカチだったんです。
モノクロのものと、カラフルなものの
2種類があって。
鹿児島
ずいぶん前ですよね。
2012年にほぼ日のみなさんと
ハラマキでご一緒するよりもずっと前?
ーー
はい、もっと前です。
そしてそのとき、モノクロのハンカチも
カラフルなのハンカチも、
どちらもほんとうに素敵だなと思ったんです。
「モノクロを買おうかな」と思うと
「でも、色があるのもいいよなぁ‥‥」
って思うし、
色を選ぼうとすると
「だけど線だけでこんな素敵なんだぞ‥‥」
と気になる。
その”迷うのがうれしい”という記憶が
すごく自分の印象に残っていたんです。
だから、ほぼ日手帳になったときにも、
みなさんがたのしく選ぶ姿が想像できる気がして、
今回鹿児島さんに手帳カバーを
お願いできたらと思ったんです。
鹿児島
声をかけてくださって、嬉しいです。
このハンカチはありがたいことに、
すごくいろいろな人に喜んでもらえているアイテムですね。
インドでプリントしているものなんですけど。
ーー
インドで作られているんですか。
鹿児島
そう。ただ、インド人のおじさんたちが
勝手にアレンジしちゃうんです(笑)。
ズラして押してロスが出ないようにしたり、
版を勝手に自分たちが彫りやすいものに
変えてしまったり。
ぼくらも毎回「あ、こんどはこんな感じか」
みたいな感覚で。
おかしいんですけど、それも良しとしていて。
ーー
それ、いいんですか?
鹿児島
はい(笑)。
ぼくは自分自身のことを、デザイナーというより、
道具を作る人だと認識しているところがあるんです。
「こうじゃないとダメ!」ではなくて、
作る人がストレスなく作れて、
仕上がりがちゃんと素敵で、
お客さんたちが喜んでくれるものができて、
みんなの生活がちょっと豊かになれば、
それでいいかなと。
ーー
そうなんですか。では、鹿児島さんにとって、
ひとつひとつのプロダクトは
「作品」ではない感じですか?
鹿児島
いわゆる「アート作品」ではないですね。
ぼくは作品って、
「自分のために作るもの」だと思っているので。
ぼくはそうじゃなくて、
使ってくれる人やたのしんでくれる人のために、
自分ができることをしている感覚なんです。
選んでくれる人が喜んでくださるのが、
やっぱりいちばんで。

(つづきます)