2選ぶ人に喜んでほしくて。
- ーー
- 今回は本当にありがとうございました。
どちらのカバーも、ついにできました。
- 鹿児島
- こちらこそありがとうございました。
かわいいですね。
- ーー
- おかげさまで、とてもすてきなものができました。
実は今回、鹿児島さんにデザインを
引き受けていただけるかどうか、
ドキドキしていたんです。
- 鹿児島
- そんな、ドキドキしなくていいのに(笑)。
ほぼ日手帳って、ブームなどではなく、
草の根的に広まってきたものじゃないですか。
そういうプロダクトって、ぼくも好きなんです。
作り手側の
「大変であっても、おもしろいことをやりたいよね」
という意識が伝わって来る感じがあるというか。
- ーー
- そんなふうに言っていただけて、うれしいです。
今回の鹿児島さんの手帳カバーは、
ほぼ日の乗組員たちにも人気なんです。
たとえば
「『ネコスリー』を使いたいから
こんどの手帳はカズンにしようかな」
と言っている人もいるくらい。
- 鹿児島
- なんと。ありがたいですね。
リネン生地へのプリントって難しいから、
もっとざらざらするかと思ったんですが、
きれいに仕上がりましたね。
- ーー
- 今回「ネコスリー」で、
ネコをモチーフにされた理由はあるのでしょうか。
- 鹿児島
- 多くの人が喜んでくれそうだから、
というのがまず一つ。
そして手帳ってすごくパーソナルなものですけど、
いつも一緒に行動してくれる<お供>が
3匹いてくれると、たのしいかなと思ったんです。
- ーー
- たしかにこの手帳を持っていると、
ネコたちと毎日を一緒にすごす感じがあって
なんだか心強いです。
そして「鳥花柳」のほうは、
鹿児島さんが10年前に描かれた作品の
アレンジなんですよね。
- 鹿児島
- そうですね、今回だいぶ新しくしていますが、
10年前に描いたものをもとにしています。
すごく好きな図案だったのですが、
当時のものは見てもらえる機会が短くて、
すこし残念に思っていたんです。
また、今のほうが自分の技術も上がってるはずだから、
そういった意味でも、
もういちど絵にしてみたいと思ったんです。
- ーー
- どちらもカラフルな仕上がりになりましたが、
2つとも最初は1色だったんですよね。
‥‥これはこれで、すごくすてきですけど。
- 鹿児島
- 最初は1色のほうが持ち歩きやすいかな、
と思ったんです。
だけど眺めていたら
「ちょっと味気ないかな」と思いはじめ、
いろいろな色を使うことにしました。
1年間そばにある手帳だから、
持つ人の気持ち次第で、見るたびに印象が
変わるほうがいいかなと思って。
『昨日は絵のこの部分がいいと思ったけど、
今日はこの花が気になるな』とか。
- ーー
- 実際の刷り上がりを見たとき
「なんてきれいな色の組み合わせなんだろう!」
と思いました。
また「鳥花柳」は、こんなに淡い階調のほぼ日手帳が
これまでなかったから、それもいいなと思って。
- 鹿児島
- 淡い色の組み合わせもいいですよね。
- ーー
- わたし(担当のほしの)の話ですが、
最初、鹿児島さんのことを知ったのは、
雑貨店の「doinel(ドワネル)」さんの個展で見た
ハンカチだったんです。
モノクロのものと、カラフルなものの
2種類があって。
- 鹿児島
- ずいぶん前ですよね。
2012年にほぼ日のみなさんと
ハラマキでご一緒するよりもずっと前?
- ーー
- はい、もっと前です。
そしてそのとき、モノクロのハンカチも
カラフルなのハンカチも、
どちらもほんとうに素敵だなと思ったんです。
「モノクロを買おうかな」と思うと
「でも、色があるのもいいよなぁ‥‥」
って思うし、
色を選ぼうとすると
「だけど線だけでこんな素敵なんだぞ‥‥」
と気になる。
その”迷うのがうれしい”という記憶が
すごく自分の印象に残っていたんです。
だから、ほぼ日手帳になったときにも、
みなさんがたのしく選ぶ姿が想像できる気がして、
今回鹿児島さんに手帳カバーを
お願いできたらと思ったんです。
- 鹿児島
- 声をかけてくださって、嬉しいです。
このハンカチはありがたいことに、
すごくいろいろな人に喜んでもらえているアイテムですね。
インドでプリントしているものなんですけど。
- ーー
- インドで作られているんですか。
- 鹿児島
- そう。ただ、インド人のおじさんたちが
勝手にアレンジしちゃうんです(笑)。
ズラして押してロスが出ないようにしたり、
版を勝手に自分たちが彫りやすいものに
変えてしまったり。
ぼくらも毎回「あ、こんどはこんな感じか」
みたいな感覚で。
おかしいんですけど、それも良しとしていて。
- ーー
- それ、いいんですか?
- 鹿児島
- はい(笑)。
ぼくは自分自身のことを、デザイナーというより、
道具を作る人だと認識しているところがあるんです。
「こうじゃないとダメ!」ではなくて、
作る人がストレスなく作れて、
仕上がりがちゃんと素敵で、
お客さんたちが喜んでくれるものができて、
みんなの生活がちょっと豊かになれば、
それでいいかなと。
- ーー
- そうなんですか。では、鹿児島さんにとって、
ひとつひとつのプロダクトは
「作品」ではない感じですか?
- 鹿児島
- いわゆる「アート作品」ではないですね。
ぼくは作品って、
「自分のために作るもの」だと思っているので。
ぼくはそうじゃなくて、
使ってくれる人やたのしんでくれる人のために、
自分ができることをしている感覚なんです。
選んでくれる人が喜んでくださるのが、
やっぱりいちばんで。
(つづきます)