- ――
- きょうはよろしくおねがいします。
橋本さんはキルフェボンの総店長さんだそうですが、
総店長とはどんなお仕事ですか?
- 橋本
- わかりやすくいうと、
エリアマネージャーのような役割ですね。
キルフェボンの全10店舗をみて、
それぞれの店長に対して指導や、アドバイスをします。
- ――
- さいしょはどんなきっかけで、
はたらくようになったんでしょう?
- 橋本
- ここにくる前は、病院で管理栄養士をしていました。
その病院が、患者さんの食事を
とてもていねいに、手づくりでつくるところで。
栄養士は食事をつくるのではなく指導する側ですが、
もともと料理やお菓子をつくるのは好きだったので、
つくる側にもまわってみたいなと思って、
アルバイトをはじめました。
- ――
- ほかにもケーキ屋さんはたくさんあると思いますが、
なぜキルフェボンに?
- 橋本
- もちろんタルトも魅力的でしたし、
みんながたのしそうに働いている。
そこが好きでした。
お店の雰囲気もあたたかくて、
ほかにはなかなかない感じで。
- ――
- たしかに、このお店(青山店)も
すてきな雰囲気です。
ことしほぼ日手帳のカバーにもなった
笹尾光彦さんの「My favorite Table」には
キルフェボンのタルトが描かれていますが、
このお店には
笹尾さんからの絵ハガキが飾られていますね。
- 橋本
- 笹尾さんは最初、お友達からのお土産で
この店のことを知ってくださったようで、
そこからとても気に入ってくださったんです。
笹尾さんの作品が、
横浜や仙台、福岡など全7店舗に飾られています。
どれも、お店の雰囲気に
とってもなじんでいるんですよ
- ――
- どちらもとってもあざやかだから、
親和性が高いのかもしれませんね。
- 橋本
- そうですね。
笹尾さんご自身も、
私がアルバイトをはじめたころから
お店によく来てくださっています。
- ーー
- アルバイトをはじめたころは、橋本さんは
ケーキをつくる仕事をされていたんですか?
- 橋本
- そうですね、主につくるほうです。
だから、接客は苦手でした。
ケーキに対しては、自分でいうのもなんですが
さいしょから高いこころざしでいられたと思います。
ただ正確につくるだけではなくて、
やわらかくとか、あたたかくとか、
そういうところにも心をむけてつくっていました。
けれどお客さまに対してどんなふうに接するか、
ほんとうのほんとうに実感として
そのたいせつさと、たのしさを感じられるようになるまでは、
かなり時間がかかりました。
- ――
- それでもなんとかのりこえて、
接客のたのしさにも気づいて、
社員になって、総店長にまでなられた。
さいしょから社員になろうとおもっていましたか?
- 橋本
- いえ、さいしょはそこまでの覚悟はありませんでした。
でもそれまで数回の転職を経験してきて、
「やめたいな」と思う気持ちって、
わたしの場合は、スランプにおちいったり、
うまくいかなかったりして、
自分と向き合わなくてはいけないときに
生まれるものだな、と気づいたんです。
いままではその気持ちに素直に
転職をしてきた。
でもそういう場面にぶつかったとき、
「今回だけは、
『それでもやるんだ』という側にまわってみよう。
そしたら自分はどうなるんだろう?」
という思いがうまれた。
そう思えたのも、当時の店長や仲間が、
「いっしょにがんばろう」とささえてくれたからだと
おもいます。
- ――
- そしていまは、橋本さんがささえる側に
まわっているわけですね。
- 橋本
- あ、たしかに、そうですね。
- ーー
- ほぼ日手帳を使ってくださっているということですが、
さいしょにほぼ日手帳を知ったのは?
- 橋本
- わたし、2013年の気仙沼さんま寄席にひとりで参加したんです。
- ――
- わあ、ありがとうございます!
- 橋本
- そこでいっしょになった方たちがほぼ日手帳をたのしそうに
使ってらっしゃったので、2014年版から使うようになりました。
- ――
- どんなふうに使っていますか?
- 橋本
- 月間ページにはスケジュールを書いていますが、
1日ページにはほんとうにプライベートなことばかりです。
考えていることを書きとめるのがほとんどです。
- ――
- 仕事のことはあまり書かれないんですか?
- 橋本
- 具体的な仕事についてはあまり書かなくて、
もっとメンタル的なこと、
「自分がいまつまづいていることはなんだろう?」
という、つぶやきのようなことを書いて、
そこから考えをめぐらせながら
「たぶん、こうなのかも」と
いちおうのこたえを書いています。
ふだんはあまり書いたものを読み返しませんが、
新年に手帳を変えるときだけ、
ちょっと読むことがあるんですよ。
すると、
「けっこういいこと言ってるじゃん」と思えたり、
いま悩んでいることについて、
数か月前の自分が答えを出していたりする。
「あ、このときもこうやって悩んで、
こういう結論を出していたんだな」と気づく。
それがすごくおもしろいんです。
- ――
- じゃあ、悩んでいる時期のほうが
手帳への書き込みが増えたり‥‥?
- 橋本
- そうかもしれません(笑)。
毎日かならず書くというわけではなく、
ちょっといきづまって、
もやもやした気持ちを抱えているときに書いています。
でも、ネガティブというわけでもなく、
書いて、解決策を探して、
結果的に「あ、がんばろう!」となることがほとんどです。
- ――
- 書くうちに前向きになっていくんでしょうか?
- 橋本
- そうですね。
本当に自分のプライベートな気持ちなので、
取材に来ていただいたのに申し訳ないと思いつつ、
なかなかお見せできないんですけれど‥‥。
- ――
- だいじょうぶです(笑)。
- 橋本
- あ、そういうページばかりではなくて、
チケットや人からもらったカードなども貼っていて、
そのページは見せられますよ。
- ――
- 「梅ちゃんの梅干し」と書いてあります。
- 橋本
- 梅ちゃんという店長がいて、
そのお父さんから梅をいただいたんです(笑)。
あとはチケットをよく貼っています。
- ――
- 演劇、映画、展覧会。
たくさんありますね。
- 橋本
- 学生時代に演劇部だったこともあって、
昔からよく観に行っているんです。
これは映画のチケットかな。
母の誕生日に映画を観て、母のリクエストで
二人でキルフェボンのケーキを食べました(笑)。
- ――
- 総店長さんという立場は、
おやすみがないくらいお忙しいのかと思いましたが、
プライベートも充実されているんですね。
- 橋本
- でもここ3、4年でやっと、
時間をうまく使えるようになってきました。
それまで10年間くらいは、
曜日を決めて休むことがなかなか難しかったり、
早く帰れなかったりしました。
でもそれは、自分の問題だったんです。
自分で決めてうまく調整すれば、
時間をつくることもできるようになった。
いまは休みの日にいろんな場所に行くこともありますが、
「この日はからだを休める」と決めたら
しっかり休むこともあります。
ひたすら時間を埋めるようなつかいかたは
しないようにしています。
手帳も同じ。
毎日書くと決めずに、ゆるく続けています。
- ――
- お仕事をされていて、
たのしいことってなんでしょう?
- 橋本
- うーん、自分自身がどうこうではなくて、
「いま。この場がすごくいい感じになったな」とか、
新しく店長になった人がいろんなことを経験して、
「このお店、いい空気になったな」という瞬間でしょうか。
店ごとに状況も違いますから、
「いいお店をめざそう」という目標は同じでも、
そこに至るまでのアプローチは違う。
それぞれの店に対して
さまざまなトライ&エラーを繰り返して、
そこからこぼれた感情が、
ちょっと手帳に書かれているという感じです。
- ――
- 日々の仕事のなかで生まれた感情と、
おやすみの日のたのしい思い出とがつまっている。
- 橋本
- そうです。だから、読み返すと
「これ、本当に自分が書いたことなのかな?」
と思うこともあるんです。
書くことによって一旦忘れられるというのは、
おおきいかもしれません。
- ――
- 2014年版からもう3年、
つづけて使ってくださっているんですね。
ほぼ日手帳がつづく理由はなんでしょう。
- 橋本
- なんだろう‥‥。
いままでの手帳は、秋ごろに次の年の手帳を買うと
すぐに新しいほうの手帳に移行してしまっていたんです。
だから、10月以降は一切書かれていない手帳が
たくさんありました。
でも、ほぼ日手帳は12月31日まで
使いたくなるんですよね。
「日々の言葉」を読むだけでも
使っている気分になれるというのもあるかな。
自分の気持ちにあわせて書く、
そのせいで空白があったりしてもべつにいい。
そういうゆるい使い方を
許容してくれている手帳という気がします。
- ――
- これからも気持ちを整理する場所として、
使いつづけてくださるとうれしいです。
ありがとうございました。
- 橋本
- ありがとうございました。