Steiff×テオブロマ×ほぼ日 あの「テオブロマ」がつくってくれました。今年のシュタイフコラボは、チョコレートまであるんです。

ドイツのぬいぐるみメーカー、
シュタイフとのコラボレーションで生まれた
ほぼ日手帳が、いよいよ11月1日に発売されます。
手帳カバーや手帳本体、さらにはネクタイまで、
3年めとなる今年のテーマ「トリニティ」にちなんだ、
さまざまなアイテムがお目見えする予定ですが、
実はまだ発表していなかったものがあるんです。

それは、「トリニティの物語」にも登場する、
3頭のテディベアが描かれた缶入りチョコレート。
そう、これ、ほんとうにつくっていたのでした。

Steiffのキャビア・チョコレート

Steiff×テオブロマ×ほぼ日キャビア・チョコレート(トリニティ味)1,944円購入はこちら

チョコレート好きのあいだではつとに名高い、
渋谷のチョコレート専門店
「ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ」にお願いして、
同店のなかでもとくに人気の高い、
「キャビア・チョコレート」をトリニティ仕様に。

お互いにそっと手をふれあっている
なんとも愛らしい3頭のテディベアは、
テオブロマのパッケージに使われるイラストを
一手に手がけている画家・樋上公実子さんが、
このために特別に描いてくださいました。
かわいいふたを開けると、
3色のキャビア状のチョコレートがぎっしり。
ミルク、キャラメル、ストロベリー、
3つのフレーバーを同時にたのしめる、
スペシャルなキャビア・チョコレートです。

この「キャビア・チョコレート(トリニティ味)」の
発売を記念して、
シュタイフのテディベア愛好家でもある
テオブロマの土屋公二シェフに
キャビア・チョコレートやテオブロマについて聞きました。

後 編画家・樋上公実子の世界。

ーー
シュタイフのキャビア・チョコレートには、
画家の樋上公実子さんに描きおろしていただいた
キュートなテディベアの缶が目を引きます。
テオブロマさんが作るチョコレートは、
樋上さんの絵が入ったパッケージも
お客さんに喜ばれているのかなと思います。
樋上さんには、いつごろからパッケージを
お願いしていたんでしょうか。
土屋
キャビア・チョコレートよりも前、
お店を始めてすぐの頃から描いてもらっていました。
最初は、お客さんとして来店した樋上さんが、
「このケーキを買って、絵を描いてもいいですか」
と聞いてきたんですよ。
たまたま私がお店に出ていて対応したのですが、
どうしてそんなこと聞くんだろう、
勝手に描いたらいいのにと不思議でした。
ーー
たしかに、絵を描くだけなら自由ですもんね。
土屋
そんなことがあってから3、4か月して、
樋上さんが小さな本を持ってきたんです。
そこには20軒ぐらいのお店で食べた
ケーキの絵が描かれていて、
そこにテオブロマのケーキも入っていました。
1枚ずつがポストカードとして切り離して使える
画集が小学館から出るから、と言うんです。
私は、樋上さんの描いてきてくれた絵を見て、
彼女のタッチがいいなぁと思ったんですよね。
具体的には言い表せないけれど、
動物的な直感でいいなと思ったんですよ。
「それならうちでも数十冊買って、店頭で売ります」
というやり取りをしたら、
そんなに買った店は、うちだけだった。
ーー
本をそんなに仕入れてくれるなんて、
著者としては嬉しいですね。
土屋
樋上さんにとっても、忘れられなかったようです。
そこから店内に飾る大きな絵とお菓子の絵を依頼して、
すっかり関係性ができあがりました。
今では、板チョコのパッケージで
動物シリーズをずっと続けてもらっています。
もともと樋上さんは、
推理小説の表紙や挿絵を描いている画家さんだから、
絵のタッチはちょっと怖いんですよ。
裸の女性の胸から血が出ていたり、
金魚が空中に浮いていたり独創的なんです。
ケーキやお菓子の絵は
もともと趣味で描いていたらしいですが、
テオブロマの仕事で描くようになってから、
かわいらしい絵が多くなっていったらしいですよ。
ーー
樋上さんの描くパッケージも
テオブロマの個性につながっていますよね。
このパッケージを目印に
買ってくれるお客さんも多いのでは。
土屋
テオブロマの看板みたいになっていますよね。
樋上さんもスタッフの一員みたいになっています。
最近、お客さんからこんなことを言われるんですよ。
「お宅はね、パッケージかわいいから買うのよ」って。
でもそれって、味とは関係のないことじゃないですか。
「パンダが好きだから」「猫好きの子どもに喜ばれる」、
私たち職人が続けてきた味の追求とは違いますが、
それでも、いいなと思っているんです。
お客さんが喜んでくれて、食べて、
おいしいと感じてくれたら、また戻ってきてくれます。
パッケージがかわいいから買う、大歓迎ですよ。
ーー
このパッケージも含めて、
チョコレートにまつわるおたのしみを
提供している感じがしますね。
土屋
でもね、新作のチョコレートを作るときには、
パッケージなしの裸の状態で
コンクールに出されて評価されるわけです。
自分たちで考えるチョコレートは、
どんなカカオ豆で、どんな溶き方で、
どんなふうに香りを閉じ込めて作るか、
そこに夢中になって作っているんですよ。
その結果、賞を獲得することができるんです。
ーー
パッケージなしの状態ですから、
純粋にチョコレートの質が
評価されていますよね。
土屋
そういうことです。
そこでようやく、本格的に売ろうとなって、
樋上さんのパッケージが加わります。
作り手としては、自分たちの味をたのしむ。
パッケージを頼まれた樋上さんは、
「じゃあ、今度は何にしようかな」とワクワクして、
その箱に入る絵を考えてくれる。
今では50枚以上の絵を描いてもらっていて、
原画も増えすぎて家に飾りきれないぐらいです。
樋上さんは、仕事が詰まっているときでも、
テオブロマのパッケージであれば
「これはやりたい仕事だから」と言って
すぐに描き上げてくれることがあるんですよ。
たぶん、シュタイフのテディベアを描くのは、
樋上さんにとっても
喜んでやりたい仕事だったんじゃないかな。
ーー
土屋さんが冒頭でおっしゃっていた、
「スキップしながら仕事をしたい」
ということにつながっていますよね。
土屋
樋上さんの絵も相当ね、スキップしてますよ。
樋上さんに依頼するときには、
細かい指定をしないんですよ。
寸法と、入る文字と、用途だけを伝えています。
色も好きにしてもらっていて、
上がってきたデザインが動物のパッケージ。
で、樋上さんの絵で特徴的なのは、
必ずなにか、小っちゃなものを足してくる。
ーー
ああ、たしかに。
土屋
パンダに子どもが乗っかっていたりして、
私には最初、意味がわかりませんでした。
シンプルにパンダじゃダメなんだろうかって。
でも、お店に出すとお客さんは、
「この絵がいいのよね、やっぱり」
と褒めてくれるんですよね。
樋上公実子の世界が存在するんです。
ーー
シュタイフの缶の絵でも、
ぜひ喜んでいただきたいですよね。
土屋
こういうデザイン性の高いパッケージのものを
家や仕事場の机に置いておくと、
友達が見つけてくれるんですよね。
「なにそれ? かわいい!」と、
そうなったらたまらないですよね。
ーー
ほぼ日の社内を見ていても、
そういったやりとりはよく見かけます。
土屋
まあ、私には全部妄想なんですよ。
全部が妄想なんだけど、
妄想で生きていかないといけませんから。
だって、パティシエには
本当のことは見られないんだから。
ーー
お客さんの姿をずっと
妄想されてきたわけですね。
土屋
妄想だけで生きてますね、ぼくは。
格好つけて「ストーリー」なんて
言われることもありますけど、
結局は妄想なんだと思いますよ。
ーー
土屋さんの妄想する力は、
若い頃からあったのでしょうか。
土屋
いや、私も最初は堅苦しい職人だったんですよ。
フランスで修行した頑固な職人気質で、
「絶対にこうじゃなきゃ嫌だ」とか、
「絶対に許さん」とか、そういう人間でした。
若いスタッフに厳しく当たることもありましたし。
でも、お客さんの姿を知れば知るほど、
自分の理想とするチョコレートと、
お客さんのほしいものは違っていたんです。
チョコレート職人としては、
うまいものを作ったら売れるだろう、
と信じていたのですが、
お客さんたちの望む形はそうじゃなかった。
都内の行きやすい場所で、おしゃれな街角にあって、
店内の雰囲気が心地よくて、非日常で、
おいしくて、パッケージもかわいくて、日持ちもして、
友達にあげたら喜ばれるものが欲しいんです。
すべてを取り入れるわけではありませんが、
自分の目線じゃなくて、
お客さんの目線に立つようになったんです。
ーー
時間をかけて変わっていったわけですね。
土屋さんがお仕事のなかで、
一番おもしろい瞬間ってどういうところなんですか。
土屋
おもしろい瞬間? なんだろうねぇ。
ぼくはたぶん、人が好きなんですよ。
この仕事を通して、いろんな人と出会うんです。
たとえば、旅行に行って知り合った
お土産屋さんのご主人が
東京に来てチョコレートを買いにきてくれたり。
突拍子もないところからの出会いがあると、
うれしいですよね。
ーー
いい人と出会うことで、
土屋さんのやりたい仕事につながるんですね。
土屋
お客さんから教えられることもたくさんありますし、
友だちがくれた贈り物やお土産が、
新しいチョコレートのヒントになったりもします。
新しい挑戦は、まったく重たく感じないんですよ。
新作のインスピレーションが浮かんだら、
夜中でも、お風呂に入っていても、トイレに行っても、
「どうやって作るんだろう」って悩みます。
それが私にとってはたのしいことなんです。
試作をして「ちょっと違うんだよなぁ」と
思いながらやっている時間が好きです。
ーー
スキップしながら仕事に取り組めるから、
喜ばれるものができているんですね。
土屋さん、ありがとうございました。
土屋
どうもありがとうございました。
シュタイフのキャビア・チョコレート、
お店にもたくさん並べているので
シュタイフ好きのかたも、
クマのデザインだから買うというかたも、
まったく初めて来店いただくかたとも、
いい出会いがあるとうれしいです。

(おわります)

ほぼ日手帳 2020 Steiff 商品ラインナップ