休符と珈琲。
対談 タナカサトル ✕ 糸井重里
コラボレーションブレンド、
「Torahebi 1101 Blend」
の完成と発売を記念して、
虎へび珈琲オーナー・タナカサトルさんと、
糸井重里の対談をお届けします。
お店にはよく訪れている糸井ですが、
サトルさんとゆっくり話すのは、この日がはじめて。
コーヒーの香りに包まれながらの会話は、
最後までたのしくころがりました。
新潟から上京してファッションの道に進み、
やがて「虎へび珈琲」をうみだすまで、
サトルさんの半生をたどる、全4回の物語です。
タナカサトルさんのプロフィール
虎へび珈琲について
第2回
ファッションを捉え直す。
糸井
「東京コレクション」に参加したのは、
何年でした?
サトル
ぼくが30の頃で、2000年です。
そこまでに知り合っていた、
優秀なパタンナーやディレクターとか、
何人かの仲間が集まって。
糸井
「この部分については
俺よりこの人のほうが上だな」
という人たちと、
だんだんと一緒になるじゃないですか。
サトル
なりますね。
糸井
それは、たのしいですよね。
サトル
たのしいです。
今のコーヒーづくりにしても、
ぼくがデザイナーの役割で、
彼(焙煎士・今井さん)が
パタンナーをやっているようなことですから。
糸井
なるほど、「服」ですね。
サトル
そうですね。
糸井
だけど、そうやって服のことをやっている人が
コーヒーと出会う機会って、
なかなかやってこない気がするんですが。
サトル
そうですね、ただ、
今はファッションの文脈も、
洋服だけかといったらそうでもなくて、
いわゆるライフスタイル全般を
取り入れていくのが定番化しているというか。
糸井
わかります。
サトル
一方で、カフェブームというのが
ちょっと前から実際にあって、
カフェに行くことがおしゃれ
という感覚も一般的になっています。
地方に行くと、
「カフェに行くために着飾る」
っていう話をよく聞くんです。
ぼくらの地元の新潟でも、
おしゃれをして街を歩く文化はもうなくて、
ファッションの目的地がカフェになってる。
糸井
はい、はい。
サトル
この事実に、何かヒントがあるんじゃないかなと
ぼくはずっと思っていて。
コーヒー屋さんはコーヒーのことしか知りません。
スペシャリストとして当然だと思います。
でも、おしゃれをして出かける
女の子たちの気持ちとしては、
「コーヒーもファッション」なわけで。
だとしたら、そこをちょっと、
ぼくがつなげてみようと。
糸井
うん。
サトル
なんと言ったらいいか‥‥
ファッションとかコーヒーとかアートとか、
もっと言うと会社とか仕事とかも、
言葉ではいろいろと分けるんですけど、
結局、ぼくは、総じて言えば、
すべて「クリエイティブ」から
できあがっているものだと思っています。
糸井
まったくそうですね。
サトル
ですから、もとをたどっていけば
ぜんぶ一緒という結論に、
最近では至っているんです。
糸井
ぼくはよく、
「あ、いいこと考えた」が仕事だよ
って言うんですけど、それと同じですよね。
サトル
そう、そうです。
糸井
「いいこと」というのは、
「アイデア」と言ってもいいし、
「クリエイティブ」と言ってもいい。
「ひらめき」と言っても。
何でもいいんだけど、
それがなくて、箱だけがあってもしょうがない。
サトル
ほんとうにそう思います。
糸井
さっきの話、おもしろかったです。
何のためにおしゃれをするかというところ。
サトル
はい。
糸井
ほぼ日でも服を扱ってはいるんだけど、
たしかにそう、
今の洋服は「着物」と同じようなことに
なっているなと思って。
サトル
着物。
糸井
せっかくきれいに着付けても、
着ていく場所がない。
だから、お茶会とか、歌舞伎を観に行くとか、
そういう状況をつくらないと
意味がなくなっちゃってる。
昔だったら、さっきおっしゃったように
街を歩いているだけで、
互いに見せ合う劇場があったわけですよね。
サトル
ええ。
糸井
今、誰も、見ようともしないから。
自分の趣味とか思想を表す意味での
ファッションで外を歩いても、気に留められない。
サトル
そうですね。ほんとに。
糸井
もう、着物の世界になっちゃったなと。
サトル
なるほど。
糸井
そういう今、
ファッションをどう捉え直すかというのは、
ものすごくおもしろいと思います。
サトル
はい、難しいですが。
糸井
難しいけど、ファッション屋さんたちは昔から、
時代ごとにファッションを捉え直すことを
繰り返していますよね。
春夏のコレクションとか、ショーを、
ずっとやっているわけです。
そのおもしろさもあるんですよね。
難しいけど、見つけるおもしろさは絶対あるわけで。
サトル
たしかに。
糸井
イノベーションばっかりがいいわけじゃないよ
というのを、最近つくづく思っていて。
あきらめわるく、
同じことをやっているようだけれど、
実はそのことでものすごく人が育っているとか、
かっこよくなってるみたいな‥‥。
そういうことを、
ぼくはチームでやりたいんですよね。
サトル
なるほど。
糸井
‥‥きょうは、
こういう話でいいんですかね?(笑)
サトル
いや、こういう話がしたかったです(笑)。
すごく興味があるんです。
ぼくから見た糸井さんは、
昔からいろいろなことにチャレンジされて、
それぞれをきちんと形にされて。
ぼくの場合は、中途半端につなげて、
なんとかやっている感じなので。
糸井
そんなことはないと思いますよ。
中途半端じゃないと思います。
サトル
そうですかね。
糸井
うん。
今、食えてるということ自体が、
中途半端では無理です。
サトル
まあ、それはそうなんですけど。
糸井
あの場所で、ああいう感じで
コーヒー屋さんをやっているのは、
実はすごく、相当やれているんだと思います。
誰かにやってごらんと言ったって、
できっこないですよ。
サトル
ありがとうございます。
糸井
だから、
人に伝えやすい方法ではないと思うけど、
かなりのことをやってるんですよ。
サトル
ただ、83になるおふくろに、
「お前はまだ成功してない」
って言われるんです。
糸井
認めてくれない(笑)。
サトル
認められてないです(笑)。
何をもって「成功」とするかは、
人の基準によると思うんですけど。
糸井
認められたいのは、
ぼくの場合はおふくろじゃなかったし、
おやじでもなくて。
ぼくは、ぼくがいいと思ってる人から
認められたいんですよね。
人柄的にいうと、南伸坊という人がいて、
これはもう昔からの知り合いだけど、
いい人なんです。
そんな伸坊から
「糸井さん、この頃ちょっとどうかと思うんだよ」
って言われら、
まるまる反省しようと思う。
サトル
ああ‥‥。
糸井
亡くなっちゃった、先生方とかもそうですね。
いろんなことを教えてくれた
そういう人たちは
権威とか関係なく付き合って
教えてくれた人たちなので。
そういう人が「それダメだよ」と言ったら、
ぼくはいつでも反省する用意があるんです。
‥‥おっと、自分の話をしてる(笑)。
サトル
いえいえ、うかがえてうれしいです。
糸井
だってまだ、今のコーヒー屋さんに
話がたどりついてない(笑)。
続けて訊きます。
サトル
はい。
2024-10-10-THU
(つづきます)
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