タオルと一緒にあったら
うれしいもの。01ツルヤ商店さんの籐(とう)のかご。
20年を迎えた「やさしいタオル」。
「ほぼ日手帳」や「ほぼ日ハラマキ」とともに、
ほぼ日のロングセラーのひとつとして、
たくさんの方々にご愛用いただいています。
そんな20周年を記念して、
新作のタオルとともに、
“一緒にあったらうれしい”
素敵なアイテムを揃えました。
いずれも、くらしに便利で、使ってたのしく、
「やさしいタオル」のある毎日を
にぎやかに彩ってくれるものばかりです。
そのひとつめは、籐(とう)のかご。
明治時代につる細工店としてはじまり、
現在は籐を使った製品を制作している
山形県のツルヤ商店さんの手づくりの作品です。
やさしいタオルチームで
ギャラリー・工房に取材に行ったようす、お届けします!
有限会社ツルヤ商店
1907年(明治40年)に、
つる細工の製造を専門とした
「會田ツル細工店」として創業。
1961年に、
「有限会社ツルヤ商店」として会社を設立。
1987年から、四代目會田源司さんが
代表となり、現在に至る。
2009年に、工場・事務所と併設して
ギャラリー&ショップ
「つるや品物店」をオープン。
今回の取材では、
代表の會田源司さんにお話をうかがいました。
1.
「いま」の暮らしのための
籐(とう)
東京ー山形・新庄間を結ぶ
新幹線「つばさ」に乗って、
「ほぼ日」のある神田から、
およそ3時間。
山形駅から車で10分のところに、
ツルヤ商店の社屋があります。
出迎えてくださったのは、ツルヤ商店の代表、會田源司さん。
ここはもともと、
銀行があった建物なのだそう。
15年ほど前に事務所と工場をこの場所に移転して、
となりにギャラリーショップもひらいたのだそうです。
會田さんのご案内で、まずはギャラリーにお邪魔しました。
- ──
- おじゃまします。
うわぁ、素敵なものがいっぱいありますね。
すべて、材料は籐なんですね。
- 會田
- はい、すべて籐です。
ひとつひとつ、手作業で組み立てています。 - ──
- どれもたたずまいが美しいです。
創業当時はつる細工をなさっていたと聞きましたが、
籐製品へとうつった経緯を教えてください。 - 會田
- うちは明治時代に、
つる細工の専門店として始まりました。
最初はあけびとか、山葡萄のつるを
山間部の農家から仕入れて、
かごや手提げバッグを作っていたんです。
そういった「つる」は、
はじめは身近なところで採れる材料だったんですが、
けっこう、制作の前の工程が大変で。
水に濡らして洗ったり、幅をそろえたり、
作る前にいろいろ下準備が必要だったんです。
それで昭和の頃から、東京や大阪の材料問屋さんから
材料を仕入れるようになって、
そのなかに、籐があったんですね。
- ──
- そこで籐に出会われたんですね。
- 會田
- そうなんです。
籐は、インドネシアなどの東南アジアや、
アフリカ、ジャマイカ、オーストラリアの熱帯域に育つ
ヤシ科の植物の総称で、つるを伸ばすのが特徴です。
ですから日本でも採れるあけびやぶどうとは
性質が違うんですが、
編み込んだり、巻いたりする工程は似ていたので、
材料を籐に変えたんです。 - ──
- なるほど。籐を使うようになってから、
つくる製品に変化はありましたか? - 會田
- そうですね。前と同じような
かごやバッグを作りつつ、だんだんと脱衣かごや、
一人掛けの椅子など、家具寄りの製品も
手掛けるようになったんです。
山形県って、上山温泉とか、天童温泉とか、
温泉が有名でしょう?
それで温泉旅館の備品を
制作するようになったんです。 - ──
- 旅館の和室の窓際によく籐の家具がありますよね。
ああいったものですか。 - 會田
- そうです、そうです。
和室の、いわゆる広縁にある
椅子やテーブルですね。
そういうふうに、
地域で必要なものを作っていました。
その後は次第に、
他県からの注文を受けて
作ることが増えていきました。
いまは、百貨店や通販を通して
全国規模で販売をしています。 - ──
- 少しずつ変化をしながら、
作り続けてきたんですね。 - 會田
- ええ。戦後のベビーブームの頃は、
子ども用の椅子や、ゆりかごみたいなものも
たくさん作っていたんですよ。
- ──
- いろんな時代を経て
いまのツルヤ商店さんがあるということが、
作品からも伝わってきます。
今回ほぼ日で扱わせていただくかごも、
形は昔ながらの脱衣かごの形ですけれど、
モダンといいますか、
どこか「今っぽさ」がありますよね。
- 會田
- 20年くらい前から、
外部のデザイナーと一緒に
籐製品を作るようになったんです。
取り扱っていただく脚付きの脱衣かごも、
小野里奈さんというデザイナーと作った
「hairu(ハイル)シリーズ」の一つです。
いまの人々の暮らしになじむように、
従来のものより小さめに作っているんです。 - ──
- たしかに思ったよりも小ぶりで、
リビングとか、寝室とか、
家のどこでも合いそうです。 - 會田
- ダイニングテーブルの下にも置ける高さがいいと
小野さんがおっしゃったので、
それで高さが60cmになったんです。
使っている材料も比較的細い籐なので、
軽くて持ち運びもしやすいんですよ。 - ──
- はじめてかごを持ってみたとき、
みんなで「かるっ!」って、
びっくりしました。
本当に、驚きの軽さです。
- 會田
- びっくりする軽さだと思います。
10年~20年くらい前は太い材料を使った
がっしり感のあるものが人気だったんですけれど、
時代とともに変わっていますね。 - ──
- 見た目の美しさはもちろん、この軽さも、
いまの暮らしに寄り添っていて素敵です。
2.
長く使えるものをつくる。
- 會田
- 工房の中もどうぞ。
- ──
- おじゃまします。
- 會田
- うちではいろんな太さの籐を仕入れているんです。
太いものはまず、
金属の窯に入れて熱します。
- ──
- なぜ、熱を加えるんですか?
- 會田
- 熱すると柔らかくなって、
曲げられるようになるんです。
それで籐を変形させて、仮止めをして、
乾燥させておきます。
- ──
- この状態で、出番待ち。
- 會田
- そうです。固定しておかないと、元に戻ってしまいます。
そして、乾燥した曲げた状態のものを、
バナーであぶりながら、型にあわせて変形させていくんです。
- ──
- まずこうやって、すべてのパーツを準備するんですね。
- 會田
- ええ。変形作業が終わったら、
次は組み立てです。
カゴの骨組みを釘で接合していきます。
- ──
- けっこうたくさん
小さな釘が打ち込まれていますね。 - 會田
- しっかり固定しています。
上から籐の芯を巻きつけるので、
外からは見えません。
これは、カゴの底の部分に張る網状の籐です。
釘で留めて、はみでたところをカットします。
- ──
- うすい! これも籐なんですか。
- 會田
- 籐の表面の皮です。
これは機械で網目状に編まれているんですが、
椅子の座面に使われるくらい、
見た目以上に頑丈です。
ぜんぶ組み立てたら、接合した部分に
籐を巻きつけていきます。 - ──
- とても手間のかかる作業ですね。
- 會田
- 籐の皮は硬かったりやわらかかったりしますから、
力加減を調節しながら巻き付けていきます。
接合部分を覆うだけじゃなく、
カゴを補強する効果もあるんですよ。
- ──
- なるほど。
どのパーツもデザインの良さだけじゃなく、
機能があるところが素敵です。 - 會田
- 特に今回販売するかごは、
籐の良さがふんだんに生かされています。
この「Oval-600(脚付き)」は、
脚を補強するために内側に一本、
籐をアーチ状に添えていますけど、
この立体的な曲線は、
籐だからこそできることなんです。
- ──
- 色も、無垢な色といいますか、
とてもきれいです。 - 會田
- 無着色、無塗装なので、
素材そのままの色です。
組み立てるときから、色合いの近い材料を選んで、
ひとつの製品をつくっています。
- もちろんコーティングをした方が
使いやすくはなるんですが、
そこはあえて、素材を感じてもらいたいので、
無垢のままなんです。
ですから高温多湿の場所にずっと置いておいたり、
濡れたものを入れっぱなしにしたりしないように、
普段から気をつけていれば長持ちします。
また、お使いいただくうちに、経年変化で
だんだんと籐の色が変化します。
うんと長く、丁寧に使った籐製品は、
きれいなアメ色になるんですよ。
こちらの勝手な考えかもしれないですけど、
素材を知って、
長く、愛着を持って使っていただきたいですね。 - ──
- 濡れたタオルを長くおきっぱなしにするのは
要注意ですね(笑)。 - 會田
- そうですね(笑)、
タオルは乾いているものを入れてください。
汗をかいた衣類や、
お風呂のあとのタオルなど濡れたもので、
お洗濯までしばらく時間があるような場合は、
とくにご注意ください。
乾いたタオルの収納や、
脱衣カゴにしたり、物入れとして使ったり、
自由に生活に取り入れてもらえるとうれしいです。 - ──
- 家のどこに置くか、
想像するだけでワクワクしてきます。
ありがとうございました。
(おわります)
2023-09-12-tue