HOBONICHI

つきのみせ。2022 私たちのほしい、心地いいもの。

「心地よさ」について話していると、
それぞれ感覚や好みが
違っていることに気がつきました。
しっかり包まれているほうが安心する人、
風を通すように爽快なほうが気持ちいい人。
それぞれの「心地よさ」に寄りそえるように、
つきのみせは少しずつバリエーションを
ふやしてきました。
今季のテーマは「深呼吸」。
深呼吸したくなるような気持ちよさ、着心地、
ニュートラルになれる色。
定番のショーツは4種類から、
好きな形を選んでいただけるように。
つきのみせチームが惚れこんだ、
あたらしい心地よさを感じるお洋服も。
すこしずつ外に出られるようになってきて、
アクティブに過ごす日にぴったりです。
ラインナップについてのくわしいお話を、
おとどけします。
「watanomama」の開発までの道のりについて、
ブランドを担当されている、
平沢さんと平田さんにおうかがいしました。
watanomamaは信州大学・感性工学科と
気持ちよさを科学的に共同研究しています。
実は平田さんは同学科の出身で、
現在も大学で研究をしながら、商品づくりをされています。
どうしてそんなに繊維に心奪われたのか、
コットンの魅力についてもたっぷり語っていただきました。
平沢貴宏さんプロフィール
株式会社近藤紡績所、素材開発部所属。
信州大学繊維学部化学材料課程卒業。主に生地の開発を担当し、
『watanomama』ブランドには立ち上げから携わる。
現在は『renment』ブランド生地開発担当として活躍中。
平田凪沙さんプロフィール
株式会社近藤紡績所、素材開発部所属。
信州大学繊維学部在籍時には感性工学課程で
近藤紡績所との共同研究を経験。
現在は『watanomama』ブランド担当として活躍中。

“心地よさ”を計量化して、生まれた生地

watanomamaは、
着ていることが気持ちいい。
「ことばにできない気持ちよさ」を感じました。

つきのみせチームのみなさんが
「感動しました!」と言ってくださって、
ものすごくうれしかったです。

ほんとに、感動したんです。

ありがとうございます。

ただ、正直なことを言うと、
触ったときの気持ちよさって
画面を通して伝えることがどうしても難しくて。
どうすればお客さんに“この感じ”が
伝わるものですかね‥‥。

わたしたちもwatanomamaの
心地よさについては、
たしかな自信を持っているんですが、
まさに「ことばで表すことがむずかしい」という
もどかしさのようなものを感じています。

同じ悩みを。

そうですね。写真でも伝わりにくいですし。

watanomamaについて、
あらためて特徴を伺ってもいいですか?
ものすごく軽いですよね。

はい。watanomamaは、弊社・近藤紡績所で
研究を尽くした、世界で唯一の
「コットンをわたのまま編む技術」を使って
作っているブランドです。
繊維の間にたっぷりと空気を含んでいることが
特徴で、まるで着ていないように軽いんですね。
こんなに薄くて繊細な生地ははじめてです。
その特徴がなかなか伝わりにくく、
「感性工学」というものも、
とても頼りにしているんです。

信州大学の感性工学科と、
産学連携されているんですよね。

はい。2018年から共同で研究していて、
今年で4年目です。
最初は信州大学の設備を使って、
衣服内の環境を定量化する研究をしていました。

衣服内の環境‥‥?

服を着たときの気持ちよさ、ということですね。
どういう衣服のパターンを
人は心地よいと感じるのか。
保温性や、動きやすさ、着心地に着目して、
感覚を定量化するんです。
「いかに快適か」ということを、
根拠として語りたいと思っていまして。

感覚で気持ちよさを語るのではなくて、
数値で科学的に証明するということですね。

はい。その結果が、
watanomamaになっています。

たしかに、数字で語れるというのは心強いですね。

そうなんです。
たとえばコットン100%のスウェットと
watanomamaを比較すると、
「コットン100%」という意味では一緒ですが、
素材がぜんぜん違うから重さもさわり心地も違う。
たとえば生地自体の重さが、
上下セットで500mlペットボトル1本分も軽いのは
めずらしいのではないかと思います。

袖を通したときに、
不思議な軽さだったんです。
着ている時間が長くなるほど、
その軽さを実感してきて。

実感していただけて、うれしいです。
あと、「衣服圧」にも着目したんです。

私たちの場合は、肩にかかる圧力ですね。
センサーを肩にぽんぽんと貼って、
着用したときや動いたときに
数値がどう変化するかを、
別の衣類と比較したんです。
そうすると、布帛(ふはく)の衣類は
力が一箇所に集中しやすい。
それに対して、watanomamaは圧力が分散して、
均等に力がかかっているということがわかりました。

なるほど。だから、
体に何もまとってないみたいな
感覚で着られるんですね。

これは、寝返りのときなんかにも
大きな違いが出ると思います。

綿(わた)のままの生地をまといたい‥‥

“世界で唯一の技術”ということで、
開発のご苦労も多かったんじゃないかと思います。

わたしは生地開発に携わっているんですが、
watanomamaのはじまりは、
実は、取引先の方との何気ないやりとりが
ヒントになりました。
新しい機械を導入したときに、
「補強を入れずに、コットン100パーセントで
生地を作ってみたらどうなるの?」と言われて。

知識不足で申し訳ないのですが、
補強というのは?

通常、この機械をつかって
コットン素材の生地をつくるには、
強度を持たせるために
綿の束の芯に合成繊維を入れます。
ですが、watanomamaは芯に補強を入れないで、
綿だけにすることでやわらかさを実現しているんです。

その発想はなかったものですから、
これは試してみようとやってみたのが、
「watanomama」のプロトタイプでした。

試しに作ってみたものがよかったんですか。

いえ、たしかに触ってみると気持ちはいいんです。
ですが、やわらかすぎてプロトタイプの生地は穴があいて、
生地の強度として基準に満たないものだったんですね。
だけど、あまりにも風合いがよかったものですから
「この素材はおもしろいんじゃないか」ということで、
そこから改良を重ねていきました。

基準を満たせる生地になるまで、
どのぐらいの期間かかったのですか?

まずは、穴があく原因を追究するところからはじめました。
わたの束の太さが細かったり太かったり
ムラがあると穴があくことに気づき、
より均一な原料をつくるために
製造方法を一から見直しました。
商品にできる生地に仕上がるまでに、
2年ほどかかりましたね。

2年も‥‥!

試行錯誤を重ねる大変な2年でしたけど、
あのふわっふわのさわり心地と、
「こんな綿のままの生地をまとえたら……」
という気持ちが忘れられませんでしたので。

なんとか、強度を出すことに成功してからは、
スムーズに進んだのですか?

それが、その後も大変でしたね。
あまりにもデリケートな生地なので、
よりやさしく染められる方法を
見つけなければいけませんでした。
過剰な力がかかり、生地に穴があかないように
水の圧力も調整したほどです。

繊細な生地なんですね。

そうなんです。
縫製にしてもとても繊細なので、
かなりの技術が必要でして。
ハリのない生地を美しく縫うことがいかに難しいか、
ということに直面しました。
衣服として完成したときには、
本当に感激しました。

染色も縫製もいままでのやり方が
まったく通用しなかったので、
感動はひとしおでしたね。

徳島の縫製工場で、1人の人が1着を
最後まで縫製するので、
とても美しく仕上がるんです。

一人の人が、最後まで縫製してくださるなんて、
とても贅沢ですね。

また、1枚では衣服にできない薄さだったので、
2枚重ねることで強度を持たせています。

ああ、なるほど。
肌ざわりのいい、高級なティッシュみたいですよね。

▲一枚だとこの薄さ。
これを2枚重ねて縫製しています。

そのイメージですね(笑)。
原料がとってもいいんですよ。
スーピマコットンの中でも厳しい基準をクリアした、
繊維の長さも長くて、品質のいい、
「SILKCOTT」という原料のみを使用しています。
それを100%使用した生地だからこその光沢ですね。

もうちょっと、大変だったことを話してもいいですか?

ぜひ、お願いします。

大変さで言うと、ウエストのゴムとか
副資材選びにも気を遣いました。
最初は通常の強さのゴム紐を使用していたんですが、
「watanomama」があまりに繊細で気持ちいいので
普通のゴムだと「強い」「きつい」と
感じてしまうんです。
そこでこの素材に合うものを探し出しました。

ゴム紐が平たいタイプで、
おなかに食い込まないので、
すごく楽ちんですよね。

そういう細かいところも考えたんですよ。
あと、お手入れも気になりますよね。

それは思いました。
繊細な繊維なので、
毛玉が出やすいのではないかと‥‥
実は、ご一緒することを決める前に、
watanomamaさんのアイテムを買って、
何度も着たり洗濯機に入れてみたりしたんですよ。
そうしたら、まったく問題なくて。

ああ、よかった。
ネットにさえ入れていただければ、
洗濯機でいくら洗っていただいても、
目に見えるような劣化はないと思います。
洗濯ネットは、荒い目のものがおすすめです。

細かい目じゃなくて、荒い目ですか?

そうなんです。
わたのまま生地を編んでいるので毛羽は絶対出るものです。
簡単な洗濯実験を2年間おこなったところ、
その毛羽が外に出ていきやすいのが
荒い目の洗濯ネットだとわかりました。

そういったことなんですね。

それから、一般的な生地は、
一度糸を撚って糊で固めてから、
逆方向にまた撚っているので、
洗濯を繰り返すことによって
綿糸が元のリラックスした形に戻ろうとするんですね。
なので毛玉が出来ると
生地から脱落せずに残留してしまうんです。

ですが、watanomamaはそもそも
「撚る」という工程を踏んでいなくて、
名前の通り「綿(わた)のまま」生地にしています。
だから糸が元に戻ろうとしたり、
毛玉がとどまるようなことがないんです。

コットンがもう、リラックスしている状態なんですね。

信州大学に「連続洗濯機」という設備を備えていて、
そこで50回連続で洗濯もしてみましたが、
構造が変わることはありませんでした。

50回!
あと、乾きもいいですよね。

吸水速乾性がいいのも特徴ですね。
これは、撚っていないこともそうですが、
全体の重量が軽いので
含まれる水分量が少ないというのがあると思います。

あとは、吸水する速度もすごく早いんですよ。
布帛と比較すると5倍ぐらいの速さなんですね。
なので、汗を吸ってもすぐに拡散して、
さっと乾いてむれませんし、
洗濯をしても乾きが速いです。

わたしも平田も3年ほど使っていますが、
きれいなままです。
そこは自信を持ってお伝えできますね。

▲平田さんが3年ほど着用と洗濯のテストをしたwatanomamaのパジャマ。
表面にはほとんど毛玉は見られませんでした。

どういったお客さまが買われることが多いですか?

いろいろな方に幅広くお使いいただいてはいるんです。
中でも素材にこだわる方はもちろん、
今ですと睡眠に悩みをお持ちの方のご購入も多いです。
一度使っていただくと、リピーターの方やお手紙で
お礼を伝えてくださる方もいらっしゃいます。

お手紙が届くんですか。

「寝付くことがなかなかできなかったけれど、
watanomamaを着るようになって、変わりました」
「肌が敏感で、着るものをすごく選ぶのですが、
watanomamaで心地よく過ごせてます」
といったお声をいただくことがあって。
これまで困っていらした方や癒しを求めている方に
少しでも応えられている、と考えると
本当にうれしくて。
頼もしい存在でありたいなと日々思います。

今回のほぼ日さんとのコラボアイテムもそうですが、
製品の展開もいろいろ考えています。
7月からは新しい機械の導入も決まっているんですよ!
フライス編みができるようになるので、
肌着や新しい製品にも挑戦したいです。

(つづきます。)

つきのみせ。× watanomama
8.4(THU)ON SALE
スリーブレストップ
¥8,800(税込み)
カシュクールカーディガン
¥16,500(税込み)
テーパードパンツ
¥15,400(税込み)