第8回 アミノスタローン。

糸井 先生が、いまの味の素の研究所に
お入りになったのは
どういうきっかけだったんですか?

もともとアミノ酸の研究を
されていたわけじゃなかったのに‥‥。

高橋 東京大学の牧場があるんですよ。
茨城県の岩間というところに。
糸井 牧場、ですか。
高橋 馬とか牛、羊、ヤギ‥‥いろんな動物がいるんです。

で、そういった家畜に
エサとしてアミノ酸を与えたらどうかって、
味の素の人が、やって来たんですね、ある日。
糸井 それはつまり、売り込みですね。
高橋 ええ、でもアミノ酸なんて値段が高いし、
コスト的に難しい。

そこで、「唯一、食べるのは競走馬ですね」って、
お答えしたんです。

優秀な種馬は、僕らなんかよりも
ぜんぜん高いもの食べてますからね、間違いなく。

糸井 ええ、ええ。
高橋 馬というのはおもしろい動物でね、
バクテリアがつくってくれたアミノ酸を
排泄物として、捨てちゃうんですよ。

常に欠乏的状態にさらされているから、
必須アミノ酸のミクスチャーを競走馬に食べさせれば
きっといいだろうって、言ったわけです。
糸井 ええ、ええ。
高橋 そしたら、そしたらその人、話に乗ってくれて。
本当にそういうエサを作ってくれたんです。
そこで、東大牧場の馬に食べさせてみた。

‥‥そいつ、大井競馬で5勝しちゃったんですよ。

アミノスタローンってやつなんですけど。

糸井 名前にも「アミノ」が(笑)。

でも、すごい効果が出たもんですね‥‥アミノ酸。
高橋 ほかにも、勝てないって有名だった
ある牧場の馬に食べさせてみたんです。

そしたらそこの馬も、やたらに勝っちゃって。
糸井 勝たないはずの牧場の馬が(笑)。
高橋 その馬だってね、500万円でも売れなかったという、
それはもう、貧乏くさい馬でね‥‥。
糸井 貧乏くさい馬ってなんですか(笑)。
高橋 なんというか‥‥まぁ、
大切にされてなかったんですよ、みんなに。

たとえば、
サンデーサイレンスのこどもだとかって言ったら
蝶よ花よってね、まわりから。

でも、500万円でも売れないっていう馬は
口をパクパク、チョコチョコ動いて‥‥。

糸井 腰の低い馬みたいな(笑)。
高橋 でも、そいつが、やたら勝ったんです。

それでまあ、細かいことは省きますけど
そういったご縁で。
糸井 味の素の研究所に。
高橋 そういうことなんです。
糸井 先生のそういう話、いいなぁ(笑)。



<つづきます>


2007-11-13-TUE


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