鈴木 |
1年ぐらいクイズ作家をやったあと、
その女性のディレクターさんが
声をかけてくれました。
「ちゃんとしたチーフの作家になりたいか?」
「はい、もちろんなりたいです」
「でも、若いし、
文章力はまだまだだから」
そして、こう言われました。
「やる気があるんだったら、来週から、
放送されないけど台本書いてこい」 |
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糸井 |
え? 放送されないけど? |
鈴木 |
はい。
番組は月〜金で毎日やってましたから、
月、火、水、木、金、
毎日チーフ作家さんがついてました。
そのディレクターからは
「じゃ、水曜日分でね」と言われました。
水曜日の放送分で、
放送はされないけど、
今日から鶴光さんに書くと思って、
どういう台本にするか考えて、
毎週書いてこいって。
それを添削してやるって言うんですよ。 |
糸井 |
いい問題ですね。 |
鈴木 |
もうね(笑)、それ、
1本書くのに10時間ぐらいかかるんですよ。
何にも知らないですし。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
うまくなると、
2、3時間でできるんですけど、
そのときは何もわからなかったので。
それでも毎週毎週、書いて持って行きました。
すると、その人は、ていねいに
「これがこうだから」と
全部赤入れてくれました。 |
糸井 |
すごいなぁ。 |
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鈴木 |
それを無償で、
半年間やってくれたんですよ。
ぼくも、少しでも早く
いい仕事をしたいと思うから、
毎週がむしゃらにやりました。
毎週毎週、半年間見てくださって、
あるとき、
「もう通用するから、
チーフにしてやる」
と言われました。 |
糸井 |
うん、いいねぇ。 |
鈴木 |
ぼくをチーフにしてくれるって、
その女性ディレクターが言ったとき、
周りで、
「あいつら、つきあってんの?」
と言う人もいました。 |
糸井 |
ああ。
なるほど。 |
鈴木 |
つきあってるからやさしくするんだと
思ったらしいんですよね。
だけど、そのディレクターは
こう言ってました。
「つきあってるのか、と言う奴もいる。
力があると思うから、
台本を見てきただけだけど、
これから数か月か1年くらいは
たぶんそういうふうに言われると思う」 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
ぼくはすごく腹立ってたんですけど、
「そう思われるだろう」って、
その人は冷静に言ってました。
「だけど、結果、そいつらが
すいませんでした、って言うくらいに
がんばんなさい」
と言ってくれたんです。
あのときのぼくには、
それはもう、でかかったです。 |
糸井 |
すごいねぇ。 |
鈴木 |
ありがたいと思いました。 |
糸井 |
それがなかったら、どうだったと思う? |
鈴木 |
なかったら、ダメだったと思います。 |
糸井 |
書けない? |
鈴木 |
はい。 |
糸井 |
それは、ほんとに、
占い師のとおりに(笑)、
運命を変えてくれた恩人ですね。 |
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鈴木 |
まったくそうですね。 |
糸井 |
23歳かぁ。
それで、「鶴光」だもんねぇ。 |
鈴木 |
はい。
そのあと木村(拓哉)くんと
ラジオやったときに、
「おまえの台本って読むのパワーいんだよな」
と言われました。
それは、ありがたい褒め言葉だったと
思っています。
鶴光さんのあの番組で、23歳のオレが、
「鶴光さんになって主婦を笑わそう」と思って、
必死でやらせてもらったからです。
ほかの芸人さん向けの台本だと、
あそこまで書き込まなかったと思います。
「鶴光さんに読ませる台本を作ろう」
と、毎回真剣に思ってましたから。 |
糸井 |
木村くんとは同い年? |
鈴木 |
はい、同い年です。
出会ったのはちょうど糸井さんが
深夜番組をなさってたときだと思います。
木村くんがドラマで
「若者のすべて」をやってた頃でしょうか。 |
糸井 |
うんうん、あのドラマが
終わったぐらいの頃かなぁ、
木村くん、よく言ってたんですよ、
「若い者同士でやるようなことも、
俺はどんどんやりたんだ」って。
そのとき、ぼくは木村くんに
「そういう人、いる?」
って訊いたんです。
そしたら、
「ちょっといるんですよ、
ラジオやってるやつで」
って、鈴木さんのことを言ってたんです。
「ちょっとわかんないけど」
なんてことは言わないで、すぐに
「いるんですよ、
きっとこれからいっしょにやっていくと思う」
と即答してた。
「いるんですよ」というのは、
なかなか言えないことですよ。 |
鈴木 |
もう、17年とか、経つでしょうか。 |
糸井 |
うん。
あの人は、
そういうものを見る目というのは、 |
鈴木 |
すごいです。 |
糸井 |
(笑) |
鈴木 |
やっぱり、
彼はすごいプロデューサー目線を持ってます。 |
糸井 |
そうなんですよね。 |
鈴木 |
あのときの、あのぼくに
そう思ってくれたということが、まず、
すごいなと思います。 |
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(続きます) |