鈴木 |
去年1年、TBSの
「バラエティーニュース
キミハ・ブレイク」
という生放送の番組で、
MCをやることになったんです。 |
糸井 |
はい、はい。 |
鈴木 |
その番組に出ることは
木村くんには言いませんでした。 |
糸井 |
うん。 |
鈴木 |
ぼくとテリー(伊藤)さんと
加藤シルビアアナウンサーがスタジオにいて、
1分半ぐらい軽くプレゼンしてから
VTRがはじまる、という構成になっていました。
木村くんに、その番組のことは
ほんとに何も言わなかったし、
お互いふれずにいました。
番組がはじまって3〜4か月経ったときに、
コンサートの打ち上げで、
その話になったんです。 |
糸井 |
おお、おお。 |
鈴木 |
そのとき、木村くんに
「カメラ見るの、怖いだろ」
と言われました。
つまり、テレビカメラをね。 |
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糸井 |
へぇえ。 |
鈴木 |
「え、なんで?」
と返しました。
「ワンショットで
しゃべろうとしてなくて、
会話で成立させようとしてるじゃん?」
と言うんですよ。
テリーさんは絶対1回は
自分の意見をカメラに向かって言ってる、
だけど、ぼくはいつもほかの人に
話を振ってしまっている、
そう木村くんは言うんです。
「カメラを見るのが怖いから
3人で話してるんだ。オレはわかる」
と。びっくりしました。 |
糸井 |
はぁぁぁ、なるほど。 |
鈴木 |
「そこで責任を持てないんだったら、
出ないほうがいいよ」
って、言われたんですよ。 |
糸井 |
わぁ。 |
鈴木 |
木村くんは、きっと
コンサートとかで単純に客席をわかせる
アクションをするときにも、
「オレの中で覚悟がある」
ということなんでしょうね! |
糸井 |
‥‥なるほどなぁ。 |
鈴木 |
だから、テレビでも木村くんはそうなんです。
テレビに出るのは別にいいと思う、だけど、
出ようと思うんだったら
そこの責任を取るつもりでやれ、と。
それはめずらしく、
けっこう熱く言われたんですよ。 |
糸井 |
おお。 |
鈴木 |
ぼくはちょっと悔しくなって(笑)、
「そんなことねぇよ」
みたいな感じで返しました。
そういうことがあって、次の週から
なるべく自分の意見を、
10秒でもいいから言うようにしました。
「怖いな」と思ったんですけど、
そうしました。
2か月ぐらいしたら、
木村くんから
「だんだんよくなってきたぞ」
ってメールが入って(笑)。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
やっぱり彼はすごいなぁと思いました。 |
糸井 |
そうだね、すごいな、その話。 |
鈴木 |
人がテレビに出ている姿を目にしたとき、
見てるところがぜんぜん違う。
すごい能力です。 |
糸井 |
うん。
木村くんはもう、そのあたりの力は
もともと持ってますよね。
鍛えてもいるだろうけど、
もともと持ってます。 |
鈴木 |
そうなんですよ。
それに、木村くんってわりと
そういうことを言わない人です。
それって彼なりの
ちょっとした種あかしでしょう。
それをオレに言ってくれたんだ、
ということにも、ちょっと驚きがありました。 |
糸井 |
あの人の種あかしって
何だろうな‥‥、つまり、
「全部わかってやっている」ということの
あらわれなんですよね。 |
鈴木 |
そうなんです。
テレビに映るときに、
かっこいいポーズを意識的じゃなくやるのが
まずは「木村拓哉」なわけですよ? |
糸井 |
そうそう。 |
鈴木 |
芝居もそうですが、
どこまで意識してるのかわからない。
もしも計算でやってるとしたら、
とんでもないな、とも思う。
でも、計算じゃないから、
スターなんだとも思います。 |
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糸井 |
きっと、どっちとも言えないんでしょうね。
「知っててやってる」という意味では
計算なんだけど、
表現を考えるという部分においては、
その人が出てしまいますから。 |
鈴木 |
はい、そうですね。 |
糸井 |
作家でもそうです。
「落ち葉が落ちた、ドスンッ」
と書いたら、
「ドスンッ」になっちゃいます。
それを「ひらひら」と書いたときには、
その作家が、どこかで見た「ひらひら」を
描写するんですよね。 |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
それと同じで、そのあたりは
才能なんだと思う。
彼がまだうんと若かったころ、
厚生年金会館かどこかで
コンサートがありました。
そのステージをぼくは見に行ったんです。
そしたら、木村くんがギター弾いて、
ピックを口にくわえて、
客席に飛ばしてました。 |
鈴木 |
おお。 |
糸井 |
お客さんは、
ものすごくうれしいですよね。
二十歳そこそこの若いやつが
どうしてそんなこと考えつくんだろうと
ぼくは思いました。 |
鈴木 |
うーん‥‥。 |
糸井 |
ピックをくわえてから投げるというのは、
ふつうに投げるのとは
ぜんぜん意味が違ってくるわけです。
もう、「おまえ、何?」と思うくらい
ショックでした。
ベテランのプロデューサーが
指示してやったならわかるけど、
あの頃はそうじゃないでしょう。
あれもちゃんと、覚悟して意識して、
やってたことなんですよ。 |
鈴木 |
そうでしょうね。 |
糸井 |
木村くんは、
「かっこいい」ということを
すべて、具体的にとらえているんです。 |
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(続きます) |