糸井 |
木村くんて、意外と
本を読まないらしいんですよ。
きっと、本じゃなくて、
一度映像にしたライブラリーを
頭の中に持ってるんです。
それをアイドルにやられちゃったら、
鬼に金棒ですよ。 |
鈴木 |
糸井さん、アンヴィルというバンドの映画が
DVDになったのって、ご存知ですか? |
糸井 |
はい、映画のほうを観ました。 |
鈴木 |
ぼくは、たまたまコメントを頼まれて、その
「アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち」の
映画の公開前に観ました。
すっげーおもしろくて、
これはもしかしたら
木村くんが気に入るかも、と思って
「ちょっと観てみて、たぶん好きだと思う」
と、渡したんです。
そしたら、すごくテンション高いメールが
返ってきました。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
そのとき木村くんが
釜山映画祭に参加することになったらしくて、
ある日いきなり電話かかってきました。
「どうした?」って言ったら
「アンヴィルのTシャツ、手に入らないかなぁ」
て言うんですよ。
「釜山映画祭に着て行こうかな」
って。 |
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糸井 |
すごいねぇ。 |
鈴木 |
はい。その感覚、すごいです。
それは、結局、間に合わなくて
実現しなかったんですけど。 |
糸井 |
公開前の「アンヴィル」のTシャツを
映画祭でね。それは、ピターッとくるね。 |
鈴木 |
そうなんですよ。
アンヴィルのTシャツを、なんて、
ぼくらはそんなこと
ぜんぜん思いつかないですよ。 |
糸井 |
うまいよなぁ。 |
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鈴木 |
ひとつのものから感じるものの量が
ハンパないです。 |
糸井 |
木村くんが考えることって、
たとえつまんないことだとしても
広がるんですよ。
タレントが自分で企画しちゃダメだ、って
よく言われるし、
それは真実だと思うんですが、
彼は自分でメディアを
持ってるようなものですから。 |
鈴木 |
勝負強さもあります。
彼がずーっとがんばってるから、
ぼくも、がんばんなきゃいけねぇな、
って思います。
とんでもない星の下に
生まれたんだなぁと思います。
ぼくだったら毎日吐いてるなと
いうぐらいです。 |
糸井 |
ほんとはさぁ、
もっと低いところから
ぴょんぴょん飛びたいよね。 |
鈴木 |
そうなんです。
彼はいつも高いところで
勝負しなきゃいけない。
なのに彼は、そんなことは
いっさい語らないです。
そこがまた、かっこよくて。 |
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糸井 |
アスリート感覚なんでしょうね。
きっと、そうやってったら、
飛べちゃうんだろうなぁ。 |
鈴木 |
木村くんって、
運がそうとう強いな、と
思うときがあるんですよ。 |
糸井 |
ぼくは、あれは運に見えないです。
「運がいい」という答えが出るように
その前のところを整えてるんじゃないかな。 |
鈴木 |
あの‥‥仕事で、ラスベガスに一緒に
行ったことがあるんです。
彼、ギャンブル好きじゃないんですけど、
待ち時間があったので、
スロットに小銭入れて
1回だけやったんですよ。
そしたら「ガンガンガンガンガン」
って音がなりました。
なんと、そのマシンの
「いちばんの出」だったんです。 |
糸井 |
へえぇ! |
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鈴木 |
そしたら木村くんが
「出ちったよ」と言ったんです。
ぼくはそれ見てて、
もうギャンブルはしないことにしました。
やるのバカバカしいです。 |
糸井 |
そうかぁ(笑)。
でも、そこでもし出なかったときは、
人はそれを憶えてないと思うんですよ。 |
鈴木 |
うーん、なるほど。 |
糸井 |
「出ちったよ」という
その台詞のところに彼がいるわけです。 |
鈴木 |
ああ、そうか! |
糸井 |
鈴木さんが出ちゃうってことも
ぼくが出ちゃうってことも
あると思うんです。
だけどそこでぼくらが
「こんなうれしいことは
一生に一度もないだろうな!
ワハハハハ」
なんて言ったとしたら、
その「薄さ」になります。 |
鈴木 |
そうですよね。
それでなおかつ誰も憶えない。 |
糸井 |
木村くんがそのときに、
「出ちったよ」
と言うことによって
ああ、この人にはこの奥に
まだ無限大のものがあるんだ、って
こっちが勝手に考えちゃう(笑)。 |
鈴木 |
ははははは。そうだ。 |
糸井 |
それがきっと、彼の志です。
誰もが神様じゃないんだけど、
神様のように見える瞬間を
次々と見せていくのが
神様のような人なわけでしょう。 |
鈴木 |
そうですね。 |
糸井 |
そういう闘いを、
ジャニーズのスターの人たちは
特に、やっていると思います。
負けたときに絵になるかどうかも、
できるようになっていきます。
だけど、木村くんは基本的に
「勝つことでクリアしていく」
ということをやっていこうとしています。
あれは運じゃない。
でも、努力とも言えないんだよね。 |
鈴木 |
そうなんですよ。
本人に、努力してるという意識は
ないでしょうからね。 |
糸井 |
ねぇ?
二十歳そこそこのときの
木村くんをいっぱい見てたけど‥‥ |
鈴木 |
あの頃から、ずっと変わらないです。 |
糸井 |
きっと「いちばん」になったつもりが
いまでもないでしょうね。 |
鈴木 |
ないと思います。 |
糸井 |
しかも、まだ上がいることについて、
「ちっきしょー」とも
思ってるんじゃないでしょうか。 |
鈴木 |
はい、そう思います。 |
糸井 |
「それを見ている鈴木おさむ」
というところで考えていくと、
鈴木さんのやってることが
すごくよくわかるんです。
だって、もう鈴木さんも
「いい気になってもいい時期」
というのは、過ぎましたよね。 |
鈴木 |
いやぁ、そうですよ。
だって、木村くんが
「カメラ目線できねぇならテレビ出るな」
って、本気で怒ってくれたりしますからね。
厳しい人たちが周りにいてくれるのは、
ほんとにありがたいです。 |
糸井 |
そういう人たちがいて何でも聞ける状況は、
最高ですよね。
そういうほうが
「運がいい」と言うんじゃないでしょうか。 |
鈴木 |
ああ、そうですね(笑)。 |
糸井 |
そういうもんじゃないのかな。
「オレは運がいいから」なんて言う人がいたら、
それはだいたいが、終わってるときなんです。
逆に、「運が強い」ってことを
ひたすらに言う人って
ものすごい不安を抱えてる気がする。 |
鈴木 |
うん。きっとそうですね。 |
糸井 |
木村くんは「あれは運だよ」とか、
軽く言うかもしれないけど、
「オレはほんとに運がいいんだよ」
とは、本気では言わないと思う。
だからこそ「何をすればどうなるか」について、
怖い目して、いつも考えてますよね。 |
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(続きます) |