鈴木 |
糸井さんは桑田佳祐さんと
お仕事なさったこと、ありますか? |
糸井 |
ないと思います。 |
鈴木 |
桑田さんって、ご存知のとおり、
この日本の音楽シーンで
30年間CDが売れ続けている人です。
ぼくは、桑田さんが昔からすごく好きで、
好きすぎて語るとイタくなるから、
控えてるくらいなんですけど‥‥。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
去年、ラジオ局ですれ違ったので、
ごあいさつさせてもらおうと思って
「鈴木おさむと申します」とお伝えしたら
「書いてくれてありがとね」
って言われたんですよ。
そのときぼくが桑田さんのことを
書かせていただいたのって、
雑誌の小さな記事だったんです。
あれをごらんになったんだ! と思って
驚きました。
また別のとき、東京FMで、
桑田さんの曲をリクエストしてかける
番組がありました。
ぼくは、コメントがほしいと言われたんで、
コメントとリクエストを出しました。
桑田さんの「誰かの風の跡」という曲が
あるんですけど、
いまだったらそれを聴きたい、というふうに
リクエストしたんです。
桑田さん、そのラジオも
全部聴いてたらしいんですよ。 |
|
|
糸井 |
へえぇ。 |
鈴木 |
その日、桑田さんは
番組の収録があったらしいんですが、
ぼくのリクエストでかかった
「誰かの風の跡」を聴いて
番組で演奏する曲を「これにする」って、
その場で変えたらしいんです。
ほんとうだったらすごくうれしいんですけど! |
糸井 |
うん、うん(笑)。 |
鈴木 |
そうやって、
ご自分の特集、番組、放送、記事、
すべてごらんになっている。
すごいと思います。
おそらくそれは‥‥危機感ですよね。 |
糸井 |
うん。そりゃ、
「ひとりチーム」だね。 |
鈴木 |
昔、「TSUNAMI」という歌が、
大ヒットしましたけど、
「TSUNAMI」の前にリリースされた
「イエローマン」という曲がありました。
ぼくはすごく好きな曲なんですけれども、
そんなに大ヒットではなかったようです。
その「イエローマン」のあと、
桑田さんがどうして
「TSUNAMI」を作ったのかを、
インタビューで
お答えになっていたことがありました。
ちょうどネットの
ホームページやBBSができた頃でしたから、
ファンの声が直接届く状況に
なっていたそうです。
桑田さんはそれを全部見てたんですって。
桑田さんはファンの反応を見て
「あれ?」と思ったらしいです。
もしかして、サザンに求めてる曲というのは
こういう曲なのかなぁ? と考えはじめて、
だったら、やさしくストライクを
投げてみようと思ったそうです。
「ファンが無責任に求めてること」
確かにそういうものはあります。
真ん中にいる人って、
意外とそこに気づかないんですよね。 |
糸井 |
うん。
気づかないような壁が
できるんだよね。 |
鈴木 |
それに気づかなくて
去っていくアーティストって
めちゃめちゃ多いのに、
あの人はそれをできるんだ、と思いました。
ラジオもちゃんと聴いてるし、
雑誌も全部見てる、そういう人だから。
トップに居続ける人って
やっぱりそのあたりが違うと思います。 |
糸井 |
自分で詞も曲も作って
ボーカルやってる人は、
自分の歌いやすい歌を
ずっと作っていくことになりがちです。
ふつうのボーカリストじゃないから、
ほかの人の歌を歌ったら
ヘタになっちゃったりするんですよ。
それは、誰だったか、
音楽の専門の人がぼくに教えてくれたことです。
だけど、桑田さんはあるときから
他人の歌をどんどん歌えるようになっていった。
「ああ、この人はどっかでそっちに行ったんだ」
と、すごく驚いたんです。
つまり、他人の歌の世界に、
自分がものすごい苦労をして
橋をかけたわけですよ。 |
鈴木 |
うん。 |
糸井 |
あの歳で
「ボーカリストでも持つ」という状態を
自分で作ったら、今度は
自分のために作る歌が
もっと幅広くなりますよね。
この桑田佳祐という人、
やっぱりおそろしいと思いました。
それは、「桑田佳祐」のプロデューサーが
桑田さん自身であることがよくわかった、
ということでもあるんですけどね。 |
鈴木 |
桑田さんとさんまさん、
たしか同い年なんですよね。 |
糸井 |
ははぁ、そうなんだ。 |
鈴木 |
明石家さんまさんと、桑田佳祐さん、
郷ひろみさんの3人は
おそらく同学年です。 |
糸井 |
それぞれにやり方ちがうけど、
3人とも、似てるね。 |
鈴木 |
そうなんですよ。 |
糸井 |
これは名セリフだと思うんだけど(笑)、
あるときさんまさんが
「トータルテンボスと
おなじくらいのギャラでテレビ出たい」
って言ってた。 |
鈴木 |
ははははは。 |
糸井 |
「オレなぁ、みんな、もうほんまに
よう声かけてくれへんねん」
って、嘘ばっかりって思うけど、
トータルテンボスぐらいのギャラでね、
深夜(番組)をやりたいって、
あれは半分本気ですよ。 |
鈴木 |
はははは。 |
|
|
|
(続きます) |