糸井 |
(笑福亭)鶴瓶さんと(明石家)さんまさんは
歳は離れてましたっけ? |
鈴木 |
えーっと、鶴瓶さんのほうが、
3、4歳上ですね。
鶴瓶さんがいま、60手前。
58歳くらいかな。 |
糸井 |
鶴瓶さんも、自分で
脱皮と成長を
くり返している感じがする人です。 |
鈴木 |
ぼく、「A-Studio」という番組で
一緒にやらせていただいてるんです。 |
糸井 |
知ってる、知ってる。
あのコンセプトを見てオレは
ほんとうに感心したんだけど。 |
鈴木 |
はい。ご存知だと思うんですが、
あの番組をはじめる前、鶴瓶さんから、
ひとつだけリクエストがありました。
トーク番組をやるとき、
ゲストに前もってアンケートを取るのが
いま、定例になっています。
あのアンケート、項目が多すぎるんですよ。 |
糸井 |
オレもまったくそう思う。 |
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鈴木 |
鶴瓶さんは、
「ゲストが手ぶらで来れる番組を作れないか」
とおっしゃいました。
これまでアンケートで集めていた分の
情報集めはオレがやる、とおっしゃったんです。
だから、スタッフも一緒にがんばってほしい、
ゲストにはアンケートは
1枚も出さないでくれ、
その気持ちで立ち向かいたい、と。
事前取材のとき、
鶴瓶さんがいらっしゃるんだから、
ぼくらがカメラを回すのは、
まぁ、当たり前だと思ってました。
だけど、番組内で、
その「ロケVTR」を流しちゃうと、
結局トーク番組じゃなくなっちゃうよなぁ、
なんて、鶴瓶さんはすっごく考えるんです。 |
糸井 |
すごいねぇ。 |
鈴木 |
だったら思い切って
写真だけで取材するのはどうか、
という意見が会議で出て、
鶴瓶さんはそれにのりました。
1週間で3人も4人も、
事前取材のために会いに行く。
そうやって番組1本ずつを
丁寧に番組を作るということを
あの歳にしてやる、かっこよさ。
さっきの木村くんもそうですが、
鶴瓶さんも同じように、
おそらく、それをやることが、
「笑福亭鶴瓶のいま」として、
かっこいいということを
ご本人が絶対わかってるんだと思います。 |
糸井 |
それは、テレビに巻かれないで
生きてる人たち、とでも言えばいいのかなぁ。
アンケートって、
「ちょっとしか出演しないのに」
という番組でも、いまは必ずあります。
だけどそれってつまり、
番組のなかでは
「わかっていることをやる」
ということでしょう。
テレビがいちばんやっちゃいけないことを
やっていると思います。
そうすると、芸人さんたちはみんな
アンケートを書くために生活している、
というようなことになっていきます。
イライラしたことなんかなくても、
「あ、これイライラしたことの項目に書けるわ」
なんて思って生きていくでしょう。
そうやって捨ててしまうもののことを
テレビは気づいてないのかなぁ、
と思ってたら
スポーツ新聞で、鶴瓶さんが
『A-Studio』のコンセプトとして
アンケートのない番組をやる、
という記事を読んだ。
はじめてそれについて
ちゃんと言ってる人を見たんです。 |
鈴木 |
はい。 |
糸井 |
もともと、鶴瓶さんが
NHKとやってきたことって、
そこのところかもしれないですね。
いちばんうるさそうなNHKなのに、そこでは
鶴瓶さんがいう「もともとのところ」で
番組をやることができたんじゃないかな。 |
鈴木 |
「家族に乾杯」が
デカかったのかもしれないですね。 |
糸井 |
そう。もともとあのやり方は、
ラジオの「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」で
やってたことですから、
何にも不思議はありません。
鶴瓶さんは、メディアそのものに
疑いを持つことをやっていく。
それをやってる人だけが
いま、活きてますよね。
‥‥鈴木さんとずーっと話してて
ああそうかと思ったことがあります。
鈴木さんとオレが同じなのは、
結局「ファン」なんですよね。 |
鈴木 |
はい、そうですね。 |
糸井 |
テレビと、あの人や、あの人や、あの人の、
「ファンであり続ける」ということは、
まじめにやると仕事になるんだね。 |
鈴木 |
そこに向きあっていくと‥‥
たしかにそうですね(笑)。
木村くんもそうですけど、みんな
テレビに巻き込まれずに、
テレビとつきあう人たちです。
ぼくはそういう人たちを
ほんとうに尊敬しています。 |
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糸井 |
うん。 |
鈴木 |
ぼく自身も、気づいたら、
テレビ以外にも
映画やったり、舞台やったり、
本出したりしていました。
テレビの仕事をはじめてちょうど10年たった
30歳のとき、
月9の『人にやさしく』という
ドラマをやらせてもらいました。
そして、『SMAPxSMAP』もやってました。
ぼくの夢というのは、それまで
「月9のドラマとスマスマで
あわせて視聴率40%を取る」
ということでした。
たまたま30歳でそういう機会があって、
結果もよかった。
だけど、そのときふと
「だから何なんだろう」
と思ったんです。 |
糸井 |
うん、うん。 |
鈴木 |
視聴率がよかったりすると、
みんなが電話で「よかったね」と
褒めてくれます。
でも、視聴率なんて、一瞬で更新されます。
こんなことは、たぶん
誰の記憶にも残んねぇな、と思いました。
ちょうど10年ということもあって、
「テレビの作家をやる」
ということはいったい何なんだろう、と
考え直す時期にさしかかっていました。
そのときに、たまたま結婚したり、
舞台をやったりしました。
舞台って、すごくしんどいんですよ。
だけどなんでやってるのかというと、
さっき糸井さんがおっしゃったように、
テレビにのみ込まれないことが大事だと
無意識に思っていたからだと思います。
自分がテレビをすごく好きだから、
テレビを客観的に
見ていたいのかもしれません。 |
糸井 |
そうですね。
‥‥でもね、巻き込まれるんですよ。 |
鈴木 |
はい。 |
糸井 |
ぼくにとってそれは
広告です。
それはもうしょうがないんだけど‥‥
若いときって、
男の子はまぁ、みんなそうなんだけど、
無闇にモテることが憧れなんですよね。 |
鈴木 |
はい。 |
糸井 |
何千万人の人が、
「待って!」「キャー」と
向こうから走ってくる、
自分は悠然と歩いていく。
でもそれって、自分のしあわせとは
何の関係もないんですよ。 |
鈴木 |
わかります。 |
糸井 |
ところが、得られないときには
それはとっても欲しいものです。
ま、何千万人とは言わないから、
6人ぐらいでいい、
キャーキャー言ってください、
みたいに生きちゃうわけですよね。 |
鈴木 |
はい、はい。 |
糸井 |
だけど、さて、
キャーと言われて
それが耳に心地いいというのは、おそらく
3日間ぐらいだとぼくは思います。 |
鈴木 |
うーん。そうかな(笑)。 |
|
(続きます) |