糸井 |
田口さんの肩は、手術をして、
治るんですよね、おそらく。
|
田口 |
治るとは思います。
でも、100パーセントに戻るかどうかは
ちょっとわからないです。
|
糸井 |
あ、そうなんですか。
|
田口 |
はい。
いま、野球のケガのなかで、
いちばん治りづらいのが
肩だといわれてるんですよ。
逆に、肘は、100パーセントに近いくらい
治るだろうといわれてて。
|
|
糸井 |
へぇーー。
|
田口 |
肩は、なかなか、
100パーセントは戻らないっていう。
|
糸井 |
でも、その状態で、現役を続けて、
球団からのオファーを待っている。
|
田口 |
はい。
|
糸井 |
それについては、なんていうんだろう、
うれしいだの悲しいだのじゃなくて、
もう、どういうものなのか‥‥
似た気持ちはありますか、
いままで味わったことのなかで。
|
田口 |
うーん‥‥似た気持ちは、ないですね。
|
|
糸井 |
はじめてですか。
|
田口 |
はじめてですねぇ。
だから、どうなるかわかんないんですけど、
完璧に仕上げようとは、思ってます。
|
糸井 |
あぁー、いいなぁ。
それは田口さんの美意識ですよね。
|
田口 |
はい。治します。
|
|
糸井 |
それは、すごいことだなぁ。
|
田口 |
結果がどうなるかまったくわかんないですし、
まぁ、いってみれば、
ここまま引退することになるかもしれない。
|
糸井 |
それは当然、頭の中には‥‥。
|
田口 |
あります。
|
糸井 |
ありますよね。
馬鹿じゃないんだからね(笑)。
|
田口 |
(笑)
|
糸井 |
いや、そう思うんですよ。
つまり、ただただ無邪気に、
いまの道を選んでいるわけではない。
|
|
田口 |
いや、そういうわけにはいかないです。
このまま50歳になっても60歳になっても
生涯現役、みたいなことを言うつもりはない。
|
糸井 |
そうですよね。
たぶん、威勢のいい野球ファンは、
田口さんにそういうことを
求めちゃうのかもしれませんけど。
|
田口 |
(笑)
|
|
糸井 |
なんていうか、治したからこそ
あきらめられることだってあるだろうし、
治したからこそ、違う場所に生まれる
仕事なんかも想像できますもんねぇ。
|
田口 |
そうですね、はい。
だから、まずは、どうしても治したい。
完璧に仕上げました、というところまで行って、
そこからまたちょっとずつ積み上げていこうと。
|
糸井 |
リハビリを終えて、
完全に動けるようになったら、
どこかのテスト受ける
みたいなことになるんでしょうか。
それともなにか別の方法があるんですか。
|
田口 |
うーん、方法としては、まぁ、
テストを受ける方法もありますし
どこかから声が掛かる可能性もありますし。
|
糸井 |
それは、今シーズンのことですよね。
|
田口 |
そうです。
だから、早くてもシーズン途中
という感じになってくると思います。
|
糸井 |
ああ、そうか、そうか。
つまり、また失礼な言い方をしてしまいますけど、
レギュラーとしてではない、はじまり方を。
|
|
田口 |
はい、たぶんそうなるでしょうね。
シーズンに入ってから
選手を必要とするっていうのは、
チームになにか欠点があって、
なんらかの補強をしなくてはいけない、
というようなケースになってくると思います。
|
糸井 |
つまり、なんでもいいから
すごい選手がほしい、っていうよりも
「いま、田口っぽいものがほしい」
っていうようなチームですよね。
|
田口 |
はい。
|
糸井 |
そういう位置にいる田口さんというのは、
たいへんですけれど、おもしろいですね。
|
田口 |
そうですね(笑)。
|
|
糸井 |
打つ、走る、守るの機能だけじゃなくて
「おまえがほしいんだよ」
って言われるような場所を、
田口さんはいままで少しずつ
積み重ねてつくってきたわけで。
それは、すてきなことだと思いますよ。
|
田口 |
ありがとうございます。
|
糸井 |
そういう人でありたいですね、やっぱりね。
|
田口 |
かたちはどうであれ、やっぱり、
「必要だ」って言われる選手でありたいですよね。
|
糸井 |
そうですね。
前に聞いた、バントの話でもねぇ。
やっぱり「おまえだからな」って
言われるよろこびですよね。
|
田口 |
そうですね、はい(笑)。
フィリーズにいたときも、
いつも「ベンチに座っとけ」って
言われてましたからね。
|
|
糸井 |
はい、はい(笑)。
|
田口 |
レギュラーじゃないんだけど、
「いるだけでいい」っていう、
そういう状態でしたし。
|
糸井 |
それは誇りですよね、田口さんの。
(つづきます) |