孫 泰蔵×糸井重里対談「ご近所の社長は、やっぱりすごい人だった。」 孫 泰蔵×糸井重里対談「ご近所の社長は、やっぱりすごい人だった。」
Mistletoe株式会社の孫泰蔵さんと、
糸井重里が対談をしました。
きっかけは孫さんがSNSで、糸井が尊敬する
岩井克人さんについて語っていたこと。
しかも孫さんの会社
「Mistletoe(ミスルトウ)」があるのは、
ほぼ日の事務所と同じビル。
そんな縁もあって、4月のある日、
ふたつの会社のメンバーが観客となった、
とくべつな公開対談がおこなわれました。
対談後、みんなが口々に
「おもしろかった!」と言い合った、
その日のトークをご紹介します。
(Introduction)孫泰蔵さんと「Mistletoe」
2018年4月現在、株式会社ほぼ日は、
東京都港区にある10階建てのビルの、
9階と10階に入っています。



入り口は9階なので、
基本的には誰もがエレベーターを使って
事務所に向かいます。
同じビルにはいくつもの会社があるため、
別の会社で働く方と一緒になることも、
よくあります。



「‥‥チン! 7階です」



7、8階で降りる人がいると、
「Mistletoe」という
緑に白のロゴが掲げられた、
なにやら素敵な雰囲気の会社が目に入ります。
だからほぼ日の乗組員たちは普段から、
その会社がどんなことをしているかは
知らなくても、
「7、8階にはあのおしゃれな
『Mistletoe』という会社があるなあ」
ということを
日々なんとなく感じながら暮らしています。



また、ほぼ日の乗組員の多くは、
ちょっとしたご近所の話題として、
「あの会社は、孫泰蔵さんの会社らしいよ」
ということも耳にしています。
孫泰蔵さんという名前を聞いて、
詳しい乗組員はもちろん
「わぁ、あの孫泰蔵さんの!」
とすぐに反応します。



ただ、人によっては詳しい人から聞いて、
「ソフトバンクの孫正義さんの
実の弟の実業家の方なんだ!」
とか
「Yahoo! JAPANの立ち上げをした人なんだ」
とか
「『パズル&ドラゴンズ』で有名な
ガンホー・オンライン・エンターテインメントの
前身の会社を創った方!」
とか、
「いまは、さまざまなスタートアップを
支援するような仕事をされているんだ」
などと知って、そこから興味を持つ人もいます。



さて、2018年4月のある日のこと。
そんな同じビルの会社の社長同士である、
孫泰蔵さんと糸井重里が対談をしました。
きっかけは、孫さんが自身のFacebookで、
糸井の尊敬する経済学者の
岩井克人さんについて書かれていたこと。



ふたつの会社が同じビルにあったことや、
最近すこしずつ、仕事でも
会社同士の関わりができていたことも、
ふたりの対談の実現を後押ししました。



(現在シンガポールにお住まいの孫さんが
日本にいらっしゃる期間に、
糸井との予定をあわせて、開催しました)



そうして行われた対談は、
孫さんと糸井がほぼ初対面だったにも関わらず、
すばらしく盛り上がりました。
濃密で、たのしい話の連続。
笑いもたくさん起きました。
その場の全員が
「このまま、できるだけ長く話を
聞いていたいなあ」
と思っていたと思います。
もともとの予定時間を大幅に超えて、
2時間半にわたっておこなわれました。



そして終わったあと、聞いたみんなが
口々に「おもしろかった!」と言いました。



さて。そんな熱気にあふれた
この日のトークを、
明日から全12回の連載でおとどけします。



また今日はイントロダクションとして、
質疑応答の時間にほぼ日のメンバーが聞いた
「Mistletoe株式会社は
どんなことをしている会社なのでしょうか?」
という質問への、
孫さんの回答をご紹介します。



先にお伝えしておきますが、
こちらのコラムは
読んでも読まなくても大丈夫です。
人によっては、聞き慣れない言葉が
数多く登場しますが、
その意味がほとんどわからなくても、
対談はとてもおもしろく
お読みいただけますのでご安心ください。



(今回、興味を持って、
くわしく知りたくなった方に、
孫さんの会社がどんなことをされているかを
お伝えするために、掲載します)
質疑応答のときに
孫さん自身が教えてくれた
「Mistletoe株式会社」の説明を
ご紹介します。
ちょっと読みにくいんですけど
「ミスルトウ」と呼びます。



事業としては、スタートアップを
支援する事業をやっています。
出資することもありますし、
人を出すこともあるし、出資した会社と
会社をつないで、共同研究を促したり、
いろんな他の投資家につないであげたり、
もうとにかく、自分たちにできる
ありとあらゆることを何でもやっています。



コミュニティをどんどん
作ったほうがいいときは、
コミュニティを作るサポートをするし、
非営利法人を寄付という形で
サポートすることもあります。
ミッションがすごく似ている場合は、
それが株式会社だったら出資をするし、
NPOだったら寄付をする。
でもとにかく、お金や人や物を
グルグル回しながら、
先端企業を作るということをやってます。



社名の「Mistletoe」は
「ヤドリギ」という植物のことなんですが、
他の樹木に寄生して育つんですね。
冬に赤い実をつけた枝が
クリスマスリースになったりもします。
落葉樹は冬になると
葉っぱが落ちて枝だけになりますけど、
ヤドリギがあると青々してるんですね。
そこに鳥が巣を作ったりもします。



で、実は鳥って森にとって
重要な役割をしているんですね。
木の実を食べたあとでフンを落としますが、
そこで消化されなかった種から発芽して、
新たな場所で木が育っていったりする。
そういうかたちで、鳥がけっこう
森を広げているということがあって。
私たちの世界ではよく
「スタートアップ・エコシステム」
と言うんですが、
スタートアップって起業家だけがいれば
いいんじゃなく、
いろんな人たちによるいい周りの生態系がないと
うまく育たないと言われているんです。
たとえばシリコンバレーは、
その生態系がすごくよくできてるから、
おもしろいスタートアップが
どんどん出てくると言われています。



僕らはその、いいスタートアップが
育つための環境をたくさん作っていきたいと
思っているんですね。



そのとき、この環境を森に例えるとするならば、
自分たちはすごいささやかだけど
「森を広げる鳥の巣を作る」みたいなことを
しようとしてるんです。
見た目には「寄生してるだけやん」とか
言われるんですけど、
実は意外と重要な役割を果たしている。
その「目立たないけど意外と重要」って感じが
まさに自分たちともぴったりかもと思って、
この名前をつけました。



働いている人にはいろんな人がいます。
テクノロジストもいれば、
起業家の先輩もいれば、銀行出身者とか、
研究者とか、アーティストとか、いろいろです。
外国人の方もたくさんいます。



大半はいわゆる業務委託で、
それぞれの人たちが個人事業主だったり
自分の会社をお持ちだったりしながら、
同時にこちらの活動をしてくださっています。
いま、前職が社員だったということから
社員の人たちが20名くらいいるんですが、
僕は「雇用契約」と言われる、
いわゆる社員契約というものを
「経営者の都合のいいように作られた
隷属的な契約」だと思っているので、
いずれは社員のみんながそれぞれに独立して、
会社と契約をする方向に
持っていけたらと思っています。
そして最終的には社員がいない
コミュニティにしていければと考えています。
だから、そういう意味でフラットですね。
まったく階層がゼロの組織です。
それでは、本編は明日からはじまります。



どうぞおたのしみに。
(続きます)
2018-05-16-WED