ジャパネットたかたの創業者である髙田明さんと、
糸井重里が対談することになりました。

生まれた年も日も近いふたりが、
「ものを売ること」「伝えること」について、
それぞれの考えを語り合います。

自分の売りになることは何か? 

アイデアを出すにはどうすればいいのか?

失敗を乗り越えるには?

決して「うまいことを言わない」、
ベーシックでぶれないヒントに満ちた全10回です。

※この記事は日経MJ2017年8月7日号のために
収録された対談を、ほぼ日が編集し、掲載するものです。

髙田
今日はお招きいただき、ありがとうございます。
糸井
こちらこそ、ありがとうございます。

うちの会社には、
髙田さんにお世話になった者がいるんですよ。
髙田
樋口くんですよね。

さきほど2~3年ぶりに会いました。

彼女、3倍ぐらいの笑顔になってましたよ。
一同
(笑)
髙田
思わず「なんで?」って言いました。

いや別に、昔が暗かったわけじゃないんですけど‥‥。
糸井
いつもだいたいあんな顔してますよ(笑)。

ジャパネットたかた」から「ほぼ日」に転職した経理の樋口。

髙田
いいことです。

会社を辞めて、
次のステップで活躍してもらってるのは、
いちばんうれしいことです。

ほんとにまじめで‥‥。
糸井
いい子ですよ。
髙田
はい。これが落ち込んでたりしたら、がっかりします。

ぼくの会社にいたときは、あんないい顔、見なかった。

ほんとに、よく採用していただいてね‥‥。
糸井
髙田社長を尊敬してる、と
樋口はいつも明言してます。
髙田
そうなんですか。
糸井
そう聞いていたので、
よけいにお会いしたいなぁと思っていたんです。

今日はよろしくお願いします。
髙田
よろしくお願いします。

同じ団塊の世代、1948年生まれですよね。

ぼくは11月3日生まれで、誕生日も近いようで。
糸井
じゃあ、1週間ちがうだけですね。

髙田さんはジャパネットをお譲りになって、
いまはどのような肩書きになってらっしゃるんですか?
髙田
ジャパネットたかたを辞めたのは2年半前で、
いまは約4名の小さな
A and Live」という会社をやっています。
糸井
A and Live。
髙田
私の「Akira」のAを取って、
娘がつけてくれた社名です。

「明はまだ生きてるよ」っていう。
一同
(笑)

髙田
いやいやそれは冗談で、
ぼくがそう勝手に解釈してるだけのことです。

ほんとうは「いきいきした世の中を」というイメージで
名づけたそうです。
糸井
それから最近、
V・ファーレン長崎の社長にも就任されたんですね。
髙田
そうです、J2のサッカーのV・ファーレンです。
糸井
ジャパネットを退かれてからも
いろんなことをなさってるんですね。

ぼくら、髙田さんの、
ものを売ってるお姿しか見てない。
髙田
いやぁ、そうですよね。
──
おふたり、初対面ですが、
第一印象はどうですか?
糸井
「あ、テレビ出てた人だ」って。

髙田
声の高いイメージかな。
一同
(笑)
糸井
樋口がとにかく「すごくいい人です」と言うんで、
そのイメージです。

辞めた社員にあんなふうに言わせるのは
どういうことなんだろう?

それだけでもう、
すばらしい人なんだろうと思っていました。
髙田
そうですか。

よかった、優しくしてて(笑)。

いや、ぼくはけっこう厳しかったですよ。

そもそもあんまり人をほめないし。
──
髙田さん、糸井さん、おふたりとも、
売る達人、伝える達人だと思うのですが。
糸井
うーん‥‥じつは、
ぼくはあんまり、
伝える力でものを売っているわけじゃないです。
髙田
そうですね、
本質的にはやっぱり「何を売るか」の問題ですね。
売ればなんでも売れる、というわけじゃなくて、
売れる商品じゃなければ売れないんですよ。

その商品が持つコンセプトが
いちばんだと思います。
私も、糸井さんの会社のことを
あんまり存じ上げてなくて申し訳ないのですが──

この対談を前に、私はほぼ日手帳
ネットで拝見しました。

この手帳がなぜ、こんなに、人気なのか?

カバーも含めるとけっこういいお値段がするんです。

それでも読んでいくと、私が見たページには
その手帳の持つ意義が、じゅうぶん表されていました。

結局、そこなんだろうなと思います。

ぼくはこれまでいろんな商品を販売してきましたが、
自分がいいと思わなければ売れないです。
糸井
うん、ぼくもそのとおりだと思います。

髙田
正直申し上げて、
いいと思わないものを売れと言われたら、無理です。
糸井
そこもまったく共通です。

いまの時代、プレゼンテーションで
ものが売れるんじゃないかと思う人が
多いかもしれませんが、そうではありません。

ぼくらはなんだか、
口のうまい人だと思われている気がするんです。
髙田
ええ、そうですね。
糸井
ぼくはコピーライターだったから、
「言葉の魔術師」なんていって
昔はおだてられました。

でもほんとうは、コピーライター時代も、
話術で売っていたのではなく、
「まず、これは自分がいいと思った」と
いうところがはじまりでした。

自分は売り手じゃなく、
あくまで買い手なんですよ。
髙田
そうですね。

買い手がどう感じるか、です。

だから私もね──私は、テレビでは、
声が少し高かったみたいですけど。
一同
(笑)
糸井
みたいですよ(笑)。
髙田
私がテレビでものを売っていたとき、
人からよく「衝動買いをした」と
言われることがありまして。

(明日につづきます)

2017-08-17-THU